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    『つよきす』対談 第5回 霧夜エリカ&佐藤良美 裏ルート編

    • 2018.03.10 Saturday
    • 21:54

     

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    注意!)
    当記事は、きゃんでぃそふと「つよきす」対談の内、第3回「霧夜エリカ」編、及び第4回「佐藤良美」編を経ての、対談記事第5回目です。
    ルートの分岐は上記の表をご覧になって頂きたいのですが、当記事が取り扱うのは、『聖域の崩壊』(友情崩壊エンド)および、『エリー失恋エンド』です。

     

     しかし当記事の最大の問題点は、その分岐がどうこう、ではありません。
    エリーバッドエンド「聖域の崩壊」ルートの、feeさんと残響のお互いの「シナリオ・プロット」解釈や「感想における言葉遣い」の定義の、「ズレ」。これが、対談進行で、お互いの意見のやりとり、がズレにズレまくっていった。
    対談の話題が迷走し、混乱し、枝葉末節の追求でグダり、時に話題の決着を諦め……しかしその混乱性ゆえに、この対談記事第5回は、楽しんで読む人を相当に選ぶ文章かもしれませんが、逆にある種の「読み物としての味、面白み」があると、feeさんも残響も思っています。

     盛大にグダりつつも、何かを求めて足掻くように、「裏ルート」についての対話を重ねていくのですが……当記事では、実際の対談の「ライヴ感」を残す文章です。よって、かなり論旨が読み取りにくい記事かと思いますが、歴戦の強者読み手たる読者の皆様には、feeさん・残響の「注」を適時ご参照頂きながら、「エロゲ対談のライヴ感」をご賞味頂きたいと思います。例えるなら、ディープな音楽ファンが、スタジオ録音盤と、ライヴ盤との違いを味わい分けるように……。(文・残響
     

     

    ☆1

     

    fee「エリー&よっぴーのサブルートに話を進めたいんですが……エリーのサブルートが『聖域の崩壊』だっけ?」

     

    残響「そうですそうです」

     

    fee「僕がレオ君の立場なら、多分よっぴーの告白にOKしていると思います」

     

    残響「ふむふむ」

     

    fee「『聖域の崩壊』ルートも僕は好きです。エリー&よっぴー関連のルートの中で『エリー失恋エンド』が一番好きですね。よっぴー本編ルートよりも好きです」

     

    残響「ほほう、なるほど」

     

    fee「このルートではよっぴーはそこまで黒くないですし、エンディングはよっぴー正規ルートと同じで北欧に行くところに繋がっていますし。よっぴー正規ルートに比べて、よっぴーの黒さが描かれていないだけですけど、こちらの方が安心感があります」

     

    残響「安心感、ね。うん、普通にラブコメ話という感じがします」

     

    fee「しかも、エリーと付き合った後によっぴーとも付き合って、両方と美味しいことをして。最高だな!」

     

    残響「ははははw」

     

    fee「さらに言うと、エリーがこれで失恋するのもいいですね。だってエリーの行動はおかしいじゃないですか。自分から振って、友達を炊きつけた上で、やっぱり私がレオはもらうわ!みたいな。ふざけた事を言っているじゃないですか」

     

    残響「出た、馬鹿野郎こと、ふざけた女w」

     

    fee「当然、よっぴーは激怒でしょ? エリーにキレるシーンも、よくぞ言ってくれた、と思いました。どうですか?」

     


    ☆2

    残響「正直に言って、【ピンと来なかった】ですね *1」

     


    *1……以降、ここから、この【ピンとこない】という言葉を巡って、feeさんと残響が盛大にすれ違っていきます。残響はここで、「不感症」的意味合いで使っていました。プロットの意味合いは分かるけど、残響感性に全然、面白いくらいに【響かない】っていう意味合い。その【響かなさ】が逆に残響は自分自身で不思議で、その不感症を自分自身で追求していたフシがあります。残響はそのように、基本的に「自分の感性や思考がわからない」→「ちょっと考察してみよう。自分自身のことなんだけど」ということをよくやります。ていうか残響の文章やツイートは、ほとんどがコレです。

     

    *1……これはどちらが悪いというわけではなく、まず最初に『残響さんの発言を僕が誤読した』。

    更に、『その事に、お互いが気づかず進んだ』ため、こういう展開になりました。

    そのせいで、議論があまり噛み合っておりません。

    明快な議論を求める方は、飛ばし読みで結構です。

    敢えて残したのは、ライブ感を大事にするというか、一周回って面白いんじゃないかと思ったからです。

     

    残響さんは『これの何が楽しいのかがわからない』と言っているのに、僕は『どういう話なのかわからない』と受け取ってしまって、ずーーっとこの物語の解説をしているというw

    文字にして振り返って見れば、何回か『誤読:誤解に気づく』チャンスはあったんだなぁと思いました。

     

     

     

    fee「どこに?」

     

    残響「よっぴーとのルートで、全体的に」

     

    fee「よっぴーとくっつくルートの話?」

     

    残響「なんかピンと来なかった。何も感じなかった」

     

    fee「……そう言われてもなぁ」

     

    残響「それで終わっちゃあいけないんで、アレですけど。なんて言ったらいいのかな……」

     

    fee「いやいや、面白いとかつまらないというのはあると思うんですけど。ピンと来ないというのは、単純に面白いとかつまらないじゃなくて、どこかが解らないってことじゃないですか。それなら解らないところを言ってもらわないと」

     

    残響「よくわからないというか、なんだろう……?」

     

    fee「『理解できるけどつまらない話』と、『理解不能でつまらない話』があるじゃないですか。で、理解不能だったんでしょ? ならどこが理解不能だった?って聞いているんですけど」

     

    残響「*2 なんだろ……」

     

    fee「まず、エリーがレオを振りますよね」

     

    残響「振りますね」

     

    fee「その後、エリーがなぜか『よっぴーが幸せになれば嬉しい』と言って、よっぴーを炊きつけますよね。ここまでは大丈夫ですか?」

     

    残響「はい(理解)」

     

    fee「で、よっぴーはエリーのアシストを受けて告白に行きますよね。で、ここでOKするか、OKしないかですよね」

     

    残響「はい(理解)」

     

    fee「主人公はエリーに捨てられたばかり。捨てられたばかりで、すぐ新しい恋人に向かう元気が残っているかどうかはさておき、レオ君はエリーに捨てられているので、よっぴーと付き合うに当たっては何の支障もないですよね?」

     

    残響「はい(理解)」

     

    fee「で、よっぴーはぶっちゃけかわいくないですか?」

     

    残響「かわいいですよ(わりと即答)」

     

    fee「だとしたら、付き合ってもおかしくはないんじゃないですか?」

     

    残響「はぁぁ、なるほど。そうか。そういう過程が思い浮かばないというか、ピンと来ない。今でも理屈はわかったんですけど、それでもピンと来ない」

     

    fee「『なんでエリーがよっぴーのアシストをしてんだよ、バカか』ってところはあるんですけど。つまり、*3エリーの行動は不可解なんですよ」

     

    残響「ふむふむ」

     

    fee「でもよっぴーの行動は不可解ではないし、レオの行動もまぁ、わかる」

     

    残響「*4 プロットと、心情の理屈はわかる。でも、なんかピンと来ない。【だからどうしたの】って感じがするんですよね」

     

    fee「どういうことww」

     

    残響「わからない、ほんとに。なんでこのルートがピンとこないんだろう」

     

    fee「なんでですかね?」

     

    残響「楽しみ方がイマイチわからない」

     

    fee「いやいや、楽しみ方よりも理屈を考えましょうよ。楽しみ方なんてのは理屈じゃないんだから、考えてわかるものじゃないですよ」

     

    残響「理屈はわかるんですけど、無感覚になっているところがある」

     

    fee「それは別にいいんですけど。肌に合う・合わないシナリオというのはありますからね。僕が感じたこのシナリオの面白いところは、まず第一に『調子に乗ってたエリーが、ここで初めて、レオに対して本気になる』」

     

    残響「ふむふむ」

     

    fee「つまり、エリーが余裕やプライドをかなぐり捨てて、レオを奪いに来るんですよ。今までのエリーは余裕があったんです。レオがエリーにガンガンアタックしていて」

     

    残響「なるほど」

     

    fee「ところが、レオとよっぴーが付き合って、それで初めて『あれ、すぐには取り返せなくなった?』と気づいたんですね。最初はすぐに取り返すつもりもなかったから、『いいよいいよ』ってよっぴーにあげちゃったんだけど、よくよく考えたらレオが惜しくなったんですよ。それは大丈夫ですか?」

     

    残響「うん、物語の味わい方がだんだんわかってきました」

     

    fee「焦ってるんだけど、エリーは他人を舐めているのでレオに復縁の申し出をするんです。そこでエリーの申し出を受けるか、エリーを振るかでエンディングがまた変わります。で、エリーを振るエンディング(エリー失恋エンド=レオとよっぴーがくっつくエンド)に関しては、よっぴーの正規ルートよりも面白かったと、僕は思っています」

     

    残響「なるほど」

     

    fee「憧れのエリーと付き合ったうえで、クラス委員のよっぴーとも付き合う羨ましさもあるし。それにエリーがちゃんと成長しているのは、このルートだけなんですよ。エリーが失恋を覚えたというのはすごく大事な事で」

     

    残響「『この想いすら、バネにしてのし上がってやる……!』、っていう感覚ですね」

     

     

    fee「そうそう。エリーの正規ルートでは、『やっぱりレオ君は大事だったのね』とは思っていても、そこまでの傷は負っていませんからね」

     

    残響「なるほど。わかりました」

     

    fee「単純に、こういうストーリーが好みじゃないと言われてしまえばおしまいなんですけど……」

     

    残響「好みじゃないというのもあります。ただ、それ以上に自分の感受性の問題だと思うんですけど、エリーに関しては『エリーはこういう人間だ』という思い込みが凄く強いんですね *5」

    fee「それはよくないんじゃない?」

     

    残響「そう、それはよくないけど。ここで描かれているエリーの感情って本当なのかな? って。泣いてたり、よっぴーを炊きつけていたりというのも、一過性のもので、本当のものじゃないんじゃないかなって」

     

    fee「一過性のもの?」

     

    残響「ある種の気まぐれみたいな」

     

    fee「その可能性はゼロではないですけど」

     

    残響「そういうふうに受け取っちゃったんですね」

     

    fee「んー。すっごくくだらないお説教をすると、こういうふうに『エリカ像を勝手に決めつけられるのが嫌いだ』って、エリカ自身がレオに怒ってたじゃないですか *6」

     

    残響「まぁそうなんですけどね」

     

    fee「僕の考えるエリカ像では、エリカは『ガキ・バカ・見栄っ張り・調子に乗ってる』

     

    残響「はい(聞きモード)」

     

    fee「そのエリカ像で考えれば、エリカの一連の行動は不思議ではない。で、その行動をとった結果、よっぴーが怒ったのを見てエリカがビックリする。自分の行動がどれだけよっぴーを怒らせたのか、エリカは自分自身でわかっていない。そしてよっぴーに恨まれたりとか、レオに告白を断られたりして初めて、現実を知る駒だと思っていた他人にも感情があって、全てが自分の想い通りになるわけではないのだと。このルートを僕が評価している理由は、エリーが一番成長したルートだからです」

     

    残響「なるほど」

     

    fee「エリーの正規ルートだと、トントン拍子でうまくいって、夜景を見ながら『これからものし上がってやるわ』みたいな。多分頭は中二病のままで、他人を舐めたままだと思います

     

     

    *2 ここで『いや、違います。理解できるけど、つまらない話だったんです』って言ってほしかったw そうすれば『理解不能でつまらない話だったんだ』という僕の誤解は解けたのに……。

     

    *2 「つまらない」という言葉について。
    エロゲだけにとどまらず、あらゆる物語表現について、「プロットの意味、登場人物の心理や出来事の流れが把握出来ていて、それで【ピンとこなかった】」場合、その理由は二つにわけられます。以下は当たり前すぎて言うまでもないことですが、
    (1)自分(読者)の感受性アンテナが、その作品と合わなかった
    (2)作品の表現が、単純に下手で、レベルが低かった
    ぼくは、「聖域の崩壊」は、(2)ではない、と始めから思ってはいました。よって、自分が【ピンとこない】理由は(1)なのだな、と。
    ではなぜ(1)=【ピンとこない】現象が起こっているのか。つまり「自分は何故、【聖域の崩壊】に圧倒的なまでの不感症になっているのか」に対する、純粋な個人的興味・探究心があったのです。(その点だけを見れば、「エリー的な」興味・探究心の追求行為、であるとすら言えるのです)

     自分のことなのに、わからない。
    この「自分の不可思議さに対する探求」というのが、30歳を越したあたりからの、残響のひとつのライフワークのようなものになっています。例えば、自分はなんで、よっぴー的神経症になってしまったのか、その萌芽はどこだったのか、とか。それは過去の何かを「断罪」するためではありません。純粋な興味。ある程度歳を重ねて、自分の生傷を含めた「自分自身」を客観視出来るようになったからという……。
    よって、今回も「自分の不可思議さに対する探求」の一環でありました。だから「このルートにおける、この不感症はなんだ?」の延々探求を始めてしまったのです。feeさんを巻き込んで……(ごめんなさい)。

     

     

    *3 エリー正規ルートの対談で、エリーの人物像を残響さんが掴みきれていない感じがあったのも、誤解の伏線だったと思います。

    まだ残響さんはエリーの事が掴みきれていないんだな、よし、説明しないと!的な……

     

    *3 エリーの人物像に対しては、残響はどこかで「こいつのことを完全に分解・批評したくない」的なブレーキをかけていたみたいです。改めて振り返ってみると。なんでだろうか……実はこれは、後日UPする『つよきす3学期』エリールートでの対談記事で完全にカット&オミットした箇所なんですが、「エリー的存在、人物像」なるものが、残響の……愛憎半ばする「リアル残響父親」と、非常に似通っていると、対談を通して気づきまして……。オーイここでおれの人生におけるトップクラスの不可思議がつまびらかになって、いろんなことがボロボロと理解出来てきたのかヨーッ! 嗚呼、対談って楽しいなぁコンチクショウッ!w
     

     

    *4この辺りで、僕も自分の勘違いに気づくべきだったなと、後から振り返れば思います。『理屈は解る』と残響さんは仰っているのに、それをスルーしてひたすら『理屈』を説明しようとしている私……。


    *5……ひとつの推察として、「これは裏ルートであり、正規ルートではないから、低くみてOKだ」理屈が自分の中で成立していたか? という、ノベルゲーマーとして最低最悪の可能性。……いや、やはり、それはないです。「これは別の物語だ」として、きちんと読んでいました。ぼくだって、一応ノベルゲーやって10年以上は経ってるので、「複数エンディングの楽しみ方」っていうのは了解していますよ。その上で、なぜか、この「聖域の崩壊」という物語に、異常なまでに不感症なのが、自分でも不思議でやまないのです。

     

    *5 まぁ「低くみてOK」なエンディングもありますけどね……。潰されたエンド、とか。そういうのを全部読みこむ必要はないとは思います。ただ、『聖域の崩壊』エンドは、一応ちゃんと【語るに値する】シナリオだと思いました。

     

    *6 僕自身はここまでは思っていませんが、よく似たシチュエーションが本編中にあったので、キャプチャを貼ってみました。

     

     


    ☆3


    残響「エリーの場合は作中であまりにも凄く描かれているので、作り物のような感じで見ていたんですね。作中最強キャラみたいな意味でもありますが、夜景を見ながら『これからやってやるぜ!』みたいなのも、作り物めいているというか。リアリティが欠けているキャラだなと感じます」

     

    fee「僕が、リアリティが感じられないのは乙女さんだけどね」

     

    残響「(根本的にそれ言われたらナー、って顔をしている残響) うーん、ですかw ぼくはエリーなんです。実在感がなくて、バーチャルって感じがする」

     

    fee「その辺は相性みたいなものなんですかね」

     

    残響「エリー以外にはあまり感じないんですけど……」

     

    fee「お金持ちっていうポイントを除けば、エリーは単なる、鼻持ちならないガキですよ。まぁ、このゲームは基本的にガキが多いんですけど、高〇生だし、そこはね」

     

    残響「凄い事をしているというか、凄いスペックを持っているキャラというのは、普通は理由付けがあるじゃないですか。過去にこれだけ練習していたとか、英才教育を受けてきたとか。エリーに関しては、鼻持ちならない、才能のあるお金持ちキャラですけど、100メートル走でも1位。マラソンでも1位。エリーだから1位みたいな。ギャグっぽさというか、リアリティのなさを感じちゃって」

     

    fee「そこはもちろん漫画的なネタですね。ただ、そんな事を言いだしたら鉄乙女さんはどうなるんですか。あの超人的な肉体能力はリアリティなさすぎませんか?」

     

    残響「まぁ確かに(それを言われちゃったらなぁ、って顔をしている2nd)」

     

    fee「それにエリカは、陰で努力している描写がとってつけたようにだけど、あるよ」

     

    残響「とってつけたようなね」

     

    fee「それは確かに、漫画的な記号を身にまとってはいますよ。それは館長もそうだし。乙女さんもそうだし。土永さんと喋っている祈先生もそうだし、その辺はみんな超人だから。でも超人だけど恋はするし、恋愛時のエリーの心の揺れ動きは、リアル志向だと思いますけどね」

     

    残響「プロット上ではそう思うんですけど……」

     

    fee「これだけ話してなお、何がそんなに引っかかってるのかイマイチよくわからないんだけど……」

     

    残響「……じゃあこれで切りましょうか…… *7」

     

    fee「これ以上どうしょうもないですからね……。僕は自分が挙げたエリー像を話したわけだし。残響さんがそこに納得するかはともかく、『わからない』だけだとどうしょうもない。*8 僕は理屈として、エリーの行動は理解できますよ。エリーみたいな奴だったら、きっとこういう行動を取るだろうな、っていう行動をエリーはしっかりとっている」

     

    残響「そこらへんはそう思います。キャラとしての枠内で、矛盾はない。これはよっぴーのヤバさが枠内の中で整合性が取れてて、矛盾してない、っていうのと同じで」

     

    fee「となると、疑問点の入る余地はなくないですか? 特に不審な点はないでしょ? そりゃエリーのガキ臭さはおかしいっちゃおかしいけど、まぁ高〇2年生ですから、ガキくさい人間もたまにはいるでしょ」

     

    残響「これはゲーム側の問題よりも、ぼくが勝手に作っちゃったエリー像に、自分自身で勝手に翻弄されてるだけなんでしょうな……」

     

    fee「そういわれてしまうとどうしょうもないけど、テキストを読もうぜっていう。そこはその思い込みを捨てて、テキストをまっさらな気持ちで読んで、あるいはちょっとおこがましいけど僕や他の人の感想を聞いて、残響さんが勘違いしていたエリー像を、残響さんの納得できる形で適宜修正していく以外ないじゃないですか。最初に思い込んだものがすべてみたいな事を言われても。
    残響さんが考えたエリー像、で展開されるストーリーの方が面白いなら、他人が何を言おうがテキストがどう書かれていようが、変える必要はないと思うけど、結局それじゃよくわからないんでしょ?」

     

    残響「理屈はわかるけど、不感症、みたいな……」

     

    *7 ……諦めた。たぶんこれ以上はいろんな意味で発展も、相互理解も難しそうだ、という感じで。しかし、よくこういう風に残響は自分から「諦め」を早々に発する人間であります。これは、まあ……良いのか悪いのか、ケースバイケースな残響の特性ではありますが……しかし、この記事読んでいて、なんとなくこの場合では「悪い特性」のように見えてしまうな……。

     

    *8 理屈は解るけどピンとこない、と言っている相手に対して、理屈を述べ立てる私……振り返ると、色々落ち着いてほしい感じですね(汗)

     


    ☆4


    fee「じゃあ残響さんが考えているエリー像だったらどうするんですか?」

     

    残響「あ、そうか」

     

    fee「残響さんが考えているエリーだったらこう動くはずなのに、実際のエリーは違う動きをしている。なんで?ってところじゃないの?」

     

    残響「*9 ぼくの考えているエリーだったら分岐がないんですよ。よっぴーを最初から振ってるんです」

     

    fee「それはレオがでしょ?」

     

    残響「*10 シナリオの流れとして」

     

    fee「それはレオが振ってるんであって、エリーとは関係なくないですか? んんん?」

     

    残響「ここでこういう物語上の分岐を作っちゃったんだーっていうか」

     

    fee「っていうか、それはレオの行動でしょ? 不可解なのは」

     

    残響「???」

     

    fee「よっぴーがここで告白してくる理由はわかるよね?」

     

    残響「それはわかります」

     

    fee「レオが受ける可能性はあるよ」

     

    残響「ここで受ける可能性はあったんだ、みたいな」

     

    fee「ええ? ありますよ!それは」

     

    残響「*11 ぼくがゲームを作るんだったら、よっぴーの告白を受け入れる選択肢は絶対作らない」

     

    fee「ゲーム制作の問題じゃないでしょ。ゲーム制作の話をしてるんじゃないもの。なんでゲーム制作の話をしだしたの?」


    fee「簡単にいうなら、人が失恋した直後っていうのは心が弱ってるから、そこにつけこんでよっぴーのような女が突撃をかけるのはありえますよね。更にそれをエリーが炊きつけているわけだから。
    一般常識として、ここで不可解な点があるとすれば『エリーがバカすぎる』って事なんです。
    けど、エリーは『馬鹿』キャラなので、僕から見ると不可解ではないんです。だってエリーは馬鹿なんだもん。エリーがまともな知性を持っていれば、よっぴーを炊きつけたりしませんよ。でも炊きつけちゃった。エリーは恋のパワー・恐ろしさが解っていないんです。
    だから『とりあえず付き合ってみる』とか『とりあえず別れてみる』とか言っちゃうし、よっぴーがレオの事を好きなことについても最初気づいてないし。あんなにバレバレによっぴーはレオを狙ってるのに、一番近くにいるエリカは8月のガールズトークまで気づいていない。8月のガールズトークで、『私、ちょっと恋の事がわかってきたみたい』とか言ってるけど、まだ分かってない。で、本当に恋の事がわかるのは、何も考えずにレオを振った後です。あ、『恋っていうのはインスタントにくっついたり別れたりできるもんじゃないんだ』とようやく気付くんです。他人の気持ちというのは、そんなに簡単に踏みにじって良いものじゃないんだということが。もっと言っちゃえば、他人には気持ちというものがあるんだ、ということを初めてエリーが気づくのが、よっぴーの告白をレオが受けた後なんですよ」

     

    *9……主語というか、日本語がおかしい。この場合は「ぼくの考えているレオ」であるはずなのです。普通に混乱してきて、日本語が上手く扱えなくなっている。あるいは、「エリールートにおけるレオだったら」を短縮して「エリー」と言ってるフシがある。どちらにせよざんきょうはあたまがよわい。

     

    *10……同上。残響さんってどちらかというと頭よさげというかインテリっぽいアカウントって設定だったような気がする風味なんですけど、どう見てもこの記事では多くの場面であたまがよわい。

     

    *11……実は後で、feeさんはこの残響発言のタイミングでイラっときておられたご様子。意味のわからん飛躍というか、話題のはぐらかしをするな!みたいな。
    一方残響は、はぐらかしてるわけではなく、むしろ本気で話題の本丸に入ろうとしていた。「プロット分岐を、ゲーム制作というメタ視点仮説で分解分析してみることによって、いろいろなモノに迫りたかった」のです。ただ、冷静に考えてみると、これは悪手に近かったかな、と。大いに脱線の予感がしますし……。

     

    *11……はぐらかしというか、「話題をこれ以上拡散してどーすんだよ」的な……。「エリーの性格」と「レオがよっぴーを選ぶ心情的理由」、既に2つも疑問点があって、1個ずつ潰していこうとしている時に、更に疑問点を増やされてもという。


     

     

    ☆5

     

    fee「異論がなければ、最後の選択肢はまとめちゃっていいかな? 『エリカ失恋エンド』と『友情崩壊エンド』。この2つは、本質的には同じだと思っています。要はエリーが現実を知るエンディングです。『エリカ失恋エンド』なら、レオ君とよっぴーは幸せになるし、エリーは失恋。『友情崩壊エンド』ではエリカはレオとくっつくけど、よっぴーは失う。こういう形でレオとエリカがくっついて、キラキラした恋愛をやり直せるかというと、僕は結構キツイと思います。傷跡が深すぎる。

    だからここではどちらに転んでも、エリーから見れば大事なものを失ったエンディングであり、失うことによって逆に大人になったというか、ようやくまともになったルートだと思うんです。エリカ正規ルートではエリカの成長が描かれていないという点も含めて、このまとめに異存はないですか?」

     

    残響「大丈夫です」

     

    fee「残響さんが混乱しているのは、よっぴーの告白部分だけなので、よっぴーの告白に的を絞りますね。これは単純に、先に一人のキャラを好きになって、別れたばっかりなのにもう付き合うんか?という、残響さんの潔癖症的な部分に引っかかっただけの話ではないんですか?」

     

    残響「……だとは思うんですよ。大筋それです」

     

    fee「全然アリでしょ、だってもう別れてるんだし、と僕は思います。それに、それなら『解らない』事も何もないでしょう」

     

    残響「そっか」

     

    fee「別れていなくて二股をかけていたとしても、そういうのも創作ではアリだと思うんですけどね。まして、ここではちゃんと別れているし。しかもエリーの方から振っているし。レオ君は後ろ指さされることなくよっぴーと付き合って良いと思うんですが……」

     

    残響「ぼくも、レオ君は悪い事は何もしていないと思うんですよ。その通りですわ。そのあと話が進んでいっているのに、興味が持てないのは自分の潔癖症からきているんだと思うんですよ。ただ、ここまで興味を持てず、『そうですか』としか言えないルートも珍しくて。そう言われても困りますよね」

     

    fee「困るというか……単純に『オレはこのルートは嫌いだな。そんなにわちゃわちゃ恋人を変える男なんてオレは嫌いだよ』と言いたいだけなら、『そっかー』で終わりで良かったと思うんですけど。それなら、ゲーム制作の話は関係ないし、そもそもエリーの話でもないですし。解らないと仰るから色々説明したのであって、嫌い、なら無理に改宗を迫る気はないですよw
    まぁ、人間、好き嫌いはあるから良いとは思うけど、ちょっと許容範囲が狭くないですか?とは思いますが」

     

    残響「許容範囲が狭いなら……このルートに対して怒ったならまだよかったんですよ。何も感じなかったんですよ。だからどうしていいのか全然わからない」

     

    fee「僕もどうしていいのかわからない。単につまらなかった、萎えた、じゃアカンの?」

     

    残響「話の流れも、行動も、心情も、全部わかるんですけどね。ただ、冷めたのは事実ですね」

     

    fee「こういう事ですか?『アクション映画で車がデッドヒートを繰り広げていて。大画面でド迫力でなんかガッチャンガッチャンドンパチやってて、人が死んだりして盛り上がってるんだけど、それの何が面白いのかわからねーんだけど?』みたいな」


    残響「あ、それと同じですね」

     

    fee「だとするならそれは単に残響さんのアンテナが合わなかっただけでは?」

     

    残響「そうなんですよ」

     

    fee「とするなら、それは解る・解らないじゃなくて、合う・合わない、面白い・つまらないじゃないの?

     

    残響「ですかね。これがつまらないということなんでしょうかね *12

     

    fee「分からないじゃなくて、つまらないって言ってくれればこんなに粘らなかったのに……基本的に三角関係は全滅?」

     

    残響「そういうわけでもないんですけど。ここまでやっておいて、ここから三角関係?っていうのはちょっと」

     

    fee「でも別にエリカが凄く好きってわけでもないんでしょ? エリーがものすごく好きで、心を捧げてプレイしていたのに、途中から変な奴が出てきて三角関係になったなら萎えるのもわかるけど」

     

    残響「そこまでエリーが好きなわけではないです」

     

    fee「僕だって、『なんか凄い事をやってるようだけど、何が楽しいんだかわからん』みたいな事はありますよ。ミステリの密室トリックとかは結構そういうのがあります……」

     

    残響「ぼくも探偵が謎解きをしていても、『そうですか?』としか思えないし」

     

    fee「その謎が、目に見えている最初の世界よりもずっと複雑で魅力的だったら、僕はワクワクします。探偵が最後に謎解きをするというのは、世界の再構成になりますから。
    犯人や、犯人の気持ちを知ることによって、初読時に見えていた世界と違う世界が開ける、そういう物語は好きです。
    ただ、予想もできない方法で部屋を脱出したように思えたけど、実際には怪我をした人が自分で内側から鍵をかけた、とか聞かされてもどうでもいいです(某有名海外作品です!)。
    それは僕が、密室トリックの楽しみ方を解っていないというか、単純に向いてないんです。興味関心がそこにない。そんな人に、この密室トリックの凄さを説いても仕方ないです。
    僕はNBA(バスケ)が好きなので、楽しんでみていますけど、『球を輪っかに入れて何が楽しいの?』と聞かれたら、どう説明していいのかわからない。
    今回に関して言えば、僕が粘りすぎた気もしますけど、最初から『つまんなかったです。合いませんでした』って言ってくれれば良かったのに、とも思いました」

     

    残響「ぼくも引っ張りすぎましたね *13」

     

    *12……(悟り)

     自分(てめえ)でこう言っといて何ですが、あたまがよわいのか、物凄い自然児(天然)なのか、何かを悟ってるのか、よくわからないけど、味わいだけはある発言だなぁと我ながら思いました。

     

    *13……(注*2 に引き続いて)

     結局、自分が「ピンとこない」と言い続けたのは、その言葉の意味合いが「つまんない」ということだったのに気づかなかったという大いなる勘違いだったというオチ。「何故自分はこのルートをつまらなく思うのか?」に変な興味を抱き、延々自己言及・自己疑問を重ねていってた。単純に「つまらんものはつまらん」で終わる話でありました。それに延々引きずり回され、付き合わされたfeeさんもたまったもんじゃないですよね。本当にこれはすいませんでした。


    ☆6 エリカ3Pルート

     

    fee「よっぴーのサブルート(エリカ3Pルート)の話もしましょう。よっぴーを叱るとよっぴー正規エンドで、エリカを罠にかけるとエリカ3Pルートですけど。どうでした?」

     

    残響「『聖域の崩壊』ルートとは別の意味でどうでもいいですね」

     

    fee「そうっすか」

     

    残響「これは明確にどうでもいいと言えます」

     

    fee「わかりました。僕は、よっぴー正規ルートより好きです」

     

    残響「ほほう」

     

    fee「『聖域の崩壊』(エリー失恋エンド)>エリー正規ルート>>エリー3Pルート>『聖域の崩壊』(友情崩壊エンド)>よっぴー正規ルートかな。
    つまり、エリーもよっぴーも、サブ扱いされているルートの方が、正規ルートよりも評価が高いわけです」

     

    残響「なるほど」

     

    fee「『エリー3Pルート』を僕が評価する理由は割と単純で、よっぴーを救うのはエリーが適任だと思いました。レオよりも頼りになります。レオはまともなので、よっぴーと一緒に悩んじゃうと思います。それよりも、ぶっとんだエリーが『なぁに、そんなの考えすぎよ』とよっぴーの悩みを笑い飛ばしていた方が、よっぴーもだんだん治っていくと思いました」

     

    残響「多分、よっぴーとレオが一緒だったら、よっぴーは自分の内面ばかり見てしまうと思うんですよね」

     

    fee「よっぴーを受け止める役をやるには、レオはちょっと真面目すぎますね。僕はよっぴー正規ルートを読んでも、あの後よっぴーの病気が治って幸せになるという想像は、ちょっとできないんですよ。まぁ、レオが3年、5年、10年のスパンで一緒にいるなら、治るかもしれませんが。
    一方で、エリーの3Pルートは、半年か1年、3Pでエロエロしていれば、いつの間にかよっぴーは治っている気がしましたw」

     

    残響「エリーにうまく肩透かしされた感じはありますね。それはそれで全然いいと思います。というかそれが一番いいんです。真正面からシリアスに病理に向き合いまくるのが、いつでも良いとは思わない。まあぶっちゃけた話、自分が病みに病んでたころは、【シリアスに病理に向き合いまくらなきゃ嘘だッ!】って思い込んでたんですが、それが大いなる間違いだったと後年気づいたの巻。今仰った『半年か1年、3Pでエロエロしていれば、いつの間にかよっぴーは治っている』っていうのは、冗談抜きに大正解ですよ。このルートを【どうでもいい】とは言いましたが、実際的な対処法としてはド正解です」

     

    fee「後ね、エリーが格好いいですね。エリールートのエリーよりも格好いいと思いました。

    *14僕は『エリーが一番成長したルート』は『聖域の崩壊』ルートだし、『よっぴーの病気が治るルート』は『エリー3Pルート』じゃないかなって思いました」

     

     

    *14 僕は物語の評価ポイントとして、『状態の変化』に重きを置くところがあります。

    たとえば『不幸』だった主人公が、『幸福』になる物語。『幸福』だった主人公が、『不幸』になる物語。

    もちろんもっとトリッキーに、『不幸』だった主人公が束の間『幸福』になり、また『不幸』になってもいいですし、

    不幸や幸福じゃなくても全然構いません。

    とにかく、何かしらの状態変化がある方が好ましい、と思っている節はあります。

     

    よっぴールートは、よっぴーの状態が『病気』からスタートするので、やはり『完治』で終わってほしいというのが

    僕の希望です。それに近いのは、よっぴー正規ルートよりも3Pルートだと思いました。

    エリールートのエリーは『高慢ちきなガキ、バカ』(失礼!)なので、一連の物語を通して『成長した』状態で終わってほしい。

    正規ルートよりも、『聖域の崩壊』ルートの方がそれが描けていると思うので、こちらをより評価しました。
     

    第6回(近衛素奈緒 編)に続く……

    『つよきす』対談 第4回 佐藤良美編

    • 2018.03.07 Wednesday
    • 19:28

     

    (各キャラ点数一覧はこちらのページを参照ください)

     

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    fee「よっぴーはルートが2つあるんですよね。レオ君が雨の中でよっぴーと抱き合って終わるやつと、エリ−3Pルート。とりあえず、よっぴーと抱き合って終わるやつを『正規ルート』と呼称しまして、先に語る事にしますか」

     

    残響「そうしましょう」

     

    fee「(残響さんのシナリオ点数を見る)たっけぇぇぇぇぇ!!!! どうなってんだよ!! 僕なんてシナリオ3.5点だよ3.5点!! 残響さん7.5っすか! ここまでの『つよきす』対談で最大の衝撃ですよ!」

     

    残響「はっはっは。このシナリオは面白かったですよ」

     

    fee「どうぞ、語ってください!」

     

    残響「やりたいことというか、描きたいことというか、それが明確で。ところどころツッコミどころはあるんですが、テーマをストレートに描いてくれたのが良かったなと。よっぴー(という人間存在)を肯定するか否定するか……は、難しい話なんですが」

     

    fee「うん」

     

    残響「あまり重い話はしたくないんですが、よっぴーは『汚い』という言葉に過剰反応しますよね。そこからエロに繋がるところも含めて、残響の過去の実体験から、割と理解できるんです。潔癖症(強迫神経症)というのは人生を破壊するほどの病気なのですが、なぜこれが生まれるかというと、やはり家庭内での教育……規範意識、に原因があります。汚いものからエロへというのも、流れ的にも、不思議でもなんでもなく、なるほどな、と。ライターのタカヒロさんは、その辺りをよく理解して描いているなと思いました。アカデミックな病理学というよりは、【こういう病理の意識の流れがある】ときっちり認識して。そういう意味でもシナリオの評価は高いです。
     はっきり言えばよっぴーは頭がおかしい人ですが、その【おかしさの枠内】では全然矛盾していません。ローカルルールそのものはおかしいけど、ルール自体からは全然逸脱していない。もちろん言うまでもなく、【ローカルルールを守らなきゃいけない意識というそのものがヤバい】んですが、そこすら描いている。……そういう意味でもタカヒロさんは巧いです」

     

    fee「なるほどなぁ」

     

    残響「よっぴーには、レオ君がいて良かったなぁと本当に思いました」

     

    fee「えっとですね。僕の意見を言いますけど……残響さんの方がこの手のテーマについては詳しそうだからなぁ……専門家の人が7.5つけてるのに、素人の僕が3.5をつけるのもどうなのかなってのもあるし……」

     

    残響「まぁそういわずにお願いしますw」

     

    fee「敢えて言いますけど、僕はタカヒロさんがこのテーマを描くにあたって、【真面目な姿勢】で取り組んでいるのか? というところが引っかかっていて」

     

    残響「真面目とは?」

     

    fee「ちょっと横道にそれますけど、『つよきす』のキャラクターって家庭環境が軒並み悪いんですよ。スバルなんかは解りやすいんですが、カニとかフカヒレとか……」

     

    残響「カニはわかります。フカヒレもですか」

     

    fee「フカヒレもです。スバルみたいに、あるいはなごみみたいに真っ向からそういうテーマを描いてくれれば、『真面目だな』って思うんですよ。エリーも家庭環境悪いですよね。レオ君だって、両親が勝手にどっかに行っちゃってますし。なごみのママは例外ですが、パパはいないし。『つよきす』のキャラクターは、家庭から愛情を受けているキャラが、ほぼいない」

     

    残響「そうですね」

     

    fee「よっぴーのトラウマネタ的なものも他のキャラで反復されています。たとえばレオが子供のとき乙女さんにしごかれていて、恐怖のあまり乙女さんを忘れていたというネタがあるんです」

     

    残響「はははwww しどい」

     

    fee「フカヒレ君も、何かというと姉に脅えるトラウマシーンがあります。あれもよっぴーと同じ症状だと思うんですよ。なのにフカヒレはネタキャラだから『面白いでしょ?』みたいな。トラウマという本来茶化してはいけないはずの問題をネタにして、笑いを取りに行っているように見えます。
    そういう態度のライターが、よっぴーのところだけ急に真面目にやっても『ん?』って感じがするんです」

     

    残響「あーー、なるほどね……」

     

    fee「というのが一つ。後はエンタメだからいいんですけど、よっぴーは病気が軽すぎでしょ」

     

    残響「ほうほう」

     

    fee「2週間で治るわけないです。あれを治すのは年単位ですよ。付き合って2週間で完治するわけないじゃないですか。あのあと絶対ぶり返しますよ」

     

    残響「まぁねぇ。このあたくしムッシュ残響さんが病気をある程度【抜けた】のだって、何年かかったんだっつう話」

     

    fee「大体、病気を抜きにしたって、付き合って最初の1カ月なんて相手の事をまだよくわかっていないでしょ。馴染んできて、『ずっと一緒にいるのかもな』って感覚が出てくるのなんて、3か月とか半年ぐらい経ってからじゃないですか? 本当の意味で『愛している』かどうかが解るのなんて何か月か経ってからですよ。よっぴーは結果を早く求めすぎ」

     

    残響「ふふふw もっとも、【結果を早く求める】というのがこの手の人間ではあります。弁護するわけじゃないですが」

     

    fee「この時点でレオ君がよっぴーを支えてあげられたとしても、何か月か後にレオ君がよっぴーを支えてあげられている保証は全くないし、雨の中抱き合ったシーンでよっぴーの病気が治ったわけでは全くない

     

    残響「そうですね……(納得している)」

     

    fee「治っているならいいんですよ。でも治っていないなら何の解決にもなっていなくて、翌日になったらまたよっぴーはおかしくなってると思います

     

    残響「そこまで言いますかw」

     

    fee「うん。だと思うよ。とすると、シナリオとしては何がしたいんだか全くわからない。読んでいて楽しい話でもないし。ということで3.5点という事になりました。シナリオ評価、全くわかれましたね」

     

    残響「わかれましたね」

     

    fee「乙女さんでも分かれましたし、今回は割とバトル漫談してますねw」

     

    残響「はははw」

     

    fee「ヒロイン評価の点数は凄く迷いました。これは、よっぴー正規ルートの点数ということで3点にしました。が、他ルートなどで、たまに黒さを出す優等生よっぴーは、実はかなり好きなんですよ」

     

    残響「なるほど」

     

    fee「なものですから、この点数はあくまでもよっぴー正規ルートのよっぴーということで、よろしくお願いします」

     

    残響「ぼくは、キャラ本体の点数というよりは、よっぴーを嫌いだと言ってしまったら、(これまでの)自分っていう人間を否定することになるなぁっていう……」

     

    fee「自己嫌悪みたいな?」

     

    残響「自己嫌悪というか、よっぴー的なところが自分にはかなりあるなぁと」

     

    fee「そこは他人ということでw」

     

    残響「まぁ、他人という事なら、ね……w ガチによっぴー的なるものを、すべて自分に引き受ける必要もないんですが」

     

    fee「僕だってよっぴー的なところはありますよ。よっぴー的なところはあるけど、よっぴーがやっているのは愚の愚策だと思うので、よっぽど追いつめられて〇☆▽〇☆にならない限りは、よっぴー的な行動はしないと思うし、相手がよっぴー的な行動をしたら、僕は逃げます。メカニズムはわかるし、気持ちも一部わかるところはある」

     

    残響「でもやっちゃったらダメですね」

     

    fee「ダメですね。ダメというか、相手が許してくれればいいとは思いますけど、たいていは自分にとってあまり良い結果にはならないと思います。おかしくなっている時は、そんな事を考える余裕もないでしょうけど」

     

    残響「しかしどーしよーもないことを言うんですが、ダメな事ばかり言っているよっぴーだからこそ、インモラルなエロさというか。ダメさとエロさが交じり合って何とも言えない味を出しているところはあります(屑)」

     

    fee「よっぴーのCGを見ていましたが、結構好きなCGが多いな。これ、ベスト2を挙げるのは大変だぞ?」

     

    残響「えっ、そうですか?」

     

    fee「じゃあ、いっせーので発表しますか」

     

     

    feeセレクション(1)

        ↓

     

    feeセレクション(2)

        ↓

     


    残響セレクション(1)

        ↓

     

     

    残響セレクション(2)

        ↓

     

     

    fee「(添い寝を見ながら)あーーーーーわかるなぁ、僕、これも選びたかったなぁ」

     

    残響「feeさんはロッカーを選びましたかw」

     

    fee「よっぴーのエロはここに凝縮されていると思いますね」

     

    残響「凝縮っすか」

     

    fee「だからこそ、ここのシーンがあまり抜けるテキストになっていないのがガッカリでねぇ」

     

    残響「エロがシナリオに組み込まれていて、エロに意義があるのはいいですよね」

     

    fee「最初のロッカーが良かったのに。なんでよっぴーん家でしけこんでるんだよ! 学校でこういうことをやれよ! もっともっと行こうぜ!」

     

    残響「ヒューッw シーン・フェティシズムといえば、逆にぼくは、しみったれた家でしけこんでダラダラダラダラ堕ちてってるようなエロが良いので」

     

    fee「ははははww あなた、前もそんな事言ってましたねw」

     

    残響「言ってましたっけw *1」


    fee「家が汚い方がいいとか言ってなかったっけw」

     

    残響「そうそう。しみったれた貧乏くさい四畳半で、性交ですえた空気を換気もしないで、若さに任せて肉欲をむさぼる的な。アイテムでコンドームとか使ってても味わいが深いし、逆に怠惰な中出しGOGO!も味がある。美味しい一級品のコロッケは、ソースをかけても美味しいし、かけないでも美味しい、みたいなもんです。とにかく、とにかくも! このしみったれたシチュは好きですねぇ!! *2」

     

    fee「なんでだよwww」

     

    残響「自分でもよくわからないけどww 他のひとにも、『アナタの性癖は、潔癖症がわかりやすく裏返って、汚濁やしみったれに興奮してるだけじゃないか!』って言われました *3」

     

    fee「外見だけで言うなら、よっぴーはつよきすヒロインでトップクラスに好きなんですけど」

     

    残響「なるほど。薄幸そうな、正統派美少女」

     

    fee「僕、大人しそうで優しそうな娘が好きですからね。とりあえず正規ルートはこんなところかな」

     

     

    *1……言ってた。2017年8月30日の残響のツイートより。

     

     

     

    *2、3……上記ツイートとの比較で判明されるように、凄く一貫している残響の性癖である。そしておわかりだろうか、本記事の冒頭のよっぴー=「汚いものからエロへ」話に、話題が完全に一巡していることを……。(無意識展開)

     

     

    第5回(エリー&よっぴー 裏ルート)に続く……

    『つよきす』対談 第3回 霧夜エリカ編

    • 2018.03.04 Sunday
    • 19:36

     

     

    (各キャラ点数一覧はこちらのページを参照ください)

     

     

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    ☆1

     

    fee「エリーのルートは分岐があるわけですが、まず正規ルートの話からしますか。正規ルートというのは……」

     

    残響「摩天楼で、レオと夜景を眺めているエンディングですかね?」

     

    fee「放送室で全校告白するやつ?」

     

    残響「そうそう、ナイト君、ナイト君」

     

    fee「(点数を見て)これまた大きく分かれたなぁ。シナリオとキャラの点数はほとんど変わらないのに、羨ましさとHが大きく分かれているのが面白いですね。エロくなかったですか?」

     

    残響「ピンと来なかったというのと、手コキから始まるじゃないですか」

     

    fee「手コキから始まりますね」

     

    残響「(2005年当時の学園ラブコメにしては)実験的というかなんというか、『えぇ〜〜〜……(困惑)』的な感じではありました」

     

    fee「マジっすか。僕なんか、憧れのクラスメイトからいきなり手コキされたら、感謝感激〜みたいな……」

     

    残響「あそこでどんどんテンション下がったんですけど

     

    fee「あそこでテンションがどんどん上がったんだけど!? え、これから竜宮に行ったら毎日姫の玩具にされちゃうの!? ときたら、これはもう毎日股間をおっ立てて学校に通うようになりません?」

     

    残響「はっはははw いきなりこういうふうにHシーンが始まるの? エリーという破天荒なキャラを考えればわからなくもないけど、でもなぁ……っていう」

     

    fee「女性のいじめっ子が、ひ弱な男の子をいじめる的な、漫画とかにもありそうなシチュエーションじゃないですか」

     

    残響「はぁはぁ、あぁ、なるほどね。そういう読み方もあるのか」

     

    fee「そこは付き合ってる/付き合ってない、愛がある/愛がない、で引っかかってるの?」

     

    残響「恐らくそこなんでしょうね。付き合っているかどうかというのは大事かなと。ケースバイケースだと思うんですけどね」

     

    fee「僕はむしろ、付き合ってないのにHをしたら、これはエロいな!って思っちゃうんだけど」

     

    残響「ぼくはそれをやられると、張り詰めていたものが萎えていくような感じがあります」

     

    fee「付き合っている女の子とHしても、それは合法の事で、背徳感がないんですよ。大前提として、レオ君がエリーに憧れているっていうのがあるんですけど。憧れの女子の玩具になっちゃうっていうのは、『いいのかな?いいのかな?』と思いながら快感に逆らえない感じでエロいと思うんですけどね。ただ、残念ながら僕の性癖はSなので。Mじゃないので。Mのエロゲーマーだったら大喜びのところなんですが。僕はむしろエリーの立場になって、おどおどしている女子を陵辱したい! 付き合うとかはこの際どうでもいいんですよ!」

     

    残響「ぼくは骨の髄まで【観測】志向みたいで。『つよきす』においても、ぼくは登場人物の誰かに憑依して○○したい、というのは、やっぱりなかった。そしてこのシーン、第三者としてその場を目撃して、『えー、こいつらそんな事始めるの?』みたいな、テンションの下がりがありました」

     

    fee「エリーもレオも誰とも付き合ってないんだから、自由にエロい事しても何の問題もないじゃん

     

    残響「わりと平行線すね」

     

    fee「まぁいいや。僕の羨ましさ6点というのは、そこですね。ただ、このシナリオなんですけど、前半のエリーがウザい。エリーは途中からかわいくなるんだけど、途中までは厳しいです。僕がレオだったら、途中で別れちゃうと思います。だからそういう意味では羨ましくないんですけど、後半は羨ましいという事で点をつけました」

     

    残響「どんなにエリーが好きな人でも、本編通して、どこかで一回は『この野郎』と感じると思うんですけども」

     

    fee「まぁ、そうでしょうね」

     

    残響「もちろん『この野郎』とプレイヤーが感じるのも含めて、エリーの魅力だとは思うんですけど、*1 ちょっと度が過ぎるシーンもありませんでした?」

     

    fee「というか、残響さんのエリーの評価はもっと低いと予想してました」

     

    残響「ムカつくシーンもたくさんあったんですけど、ここまで突き抜けられちゃうと一周回って、カリスマ性に見えてくるというか。恋愛対象の魅力というより、そこにいるだけで面白い女……というのと、カリスマ性と」

     

    fee「シナリオについても話しますか。まず最初に、レオがエリーに告白をして、とりあえずのOKをもらいますよね。気まぐれみたいなやつ。その後の校内バトルロワイアル銃撃戦が意外と楽しかったです」

     

    残響「はははw」

     

    fee「高見広春『バトルロワイアル』のパロディではありますが、よっぴーの活躍とかもあって面白かったんですよ」

     

    残響「タカヒロさんって、もっと露骨なパロをする印象を持ってたんですが、そうでもないんだなと思いました。いわゆるパロネタに次ぐパロネタというか、下品なB級ギャグで畳みかけてくるような人……なのかな、と。事前でのふわっとした予測では、そう思ったんですけど……そうでもなかった」

     

    fee「僕が『つよきす』で一番笑ったシーンは、カニが乙女先輩の名前を間違って呼ぶところ。『なんだと、この、くろまめおかめ!』ってw くろまめおかめじゃねーだろwwwって言う。パロディネタに頼らなくても面白いと思います」

     

     

    *1 聞かれているのに答えてないことに気づいたのでw

      そうですね、レオを校門で待たせて時間潰しをしていたシーンは「氏ね」と思いましたね。

      後はまぁ、別ルートでなごみをいじめるところとか。

      西崎さん関連でもなんかあったような……書けば書くほど人格破綻者やな(呆)

     

     

     

    ☆2

     

    fee「で、姫が手コキするシーンなんですが、レオが姫の事を割と理解しているんですよね」

     

     

    残響「ふんふん」

     

    fee「姫は独裁者ではなくて、独裁者に憧れているだけ、というのはまさにその通りなんですよ。彼女は、自己顕示欲と承認欲求の塊みたいな人。あの振る舞いは、承認欲求なんです」

     

    残響「なるほど」

     

    fee「『冷酷で、他人を手駒扱いしたり切り捨てたりできる、頭の切れる私』みたいな見栄を張ってる。本当にそういう人は、そういうのは態度に出さないで、表では優しい顔をしていていきなりパッと切るのに、エリーはいちいち言いたくなっちゃうんです」

     

    残響「ほほう」

     

    fee「で、『凄いでしょ、私!』ってやってしまう」

     

    残響「ふむーん……それでようやくわかりました。feeさんの仰ってくれたことで、ようやくわかった。自分は【承認欲求】という方向性では考えてなく、こいつの根幹の人間性の言語化がうまく出来てなかった」

     

    fee「エリーは『悪ぶっている』の」

     

    残響「オレ様キャラなんですね」

     

    fee「オレ様キャラというか、『オレ様キャラは格好いい』と思っている節があります。『対馬君ごとき』とか言う必要はないのに、『自分は凄いんだぞ!』と見せたいばっかりに、そういう反感を買うようなことを言ってしまう。レオがそのことを6月26日に手コキされる直前でエリーに指摘する。それで、エリーがカッチーンときて、ブチ切れての手コキという流れです。
    エリーは多分、痛いところを突かれたというのと同時に、『こいつ、侮れないな!』と思ったはずなんですよ。『こいつ、意外と頭いいじゃん!』って。だからこの後、レオ君をかわいがり始めるんです」

     

    残響「なるほど」

     

    fee「レオは、なぜかこの時だけ鋭いんですねw で、7月の中旬くらいに姫とHして、本格的に姫がかわいくなってくる。8月の、よっぴーとのガールズトークでは、レオを好きになりつつあることを自覚しだしたと口にしています。好きになっちゃったからこそ、別れようとするんですけど」

     

     

    残響「理屈はわかるんですけど、このくだり、なんか作為的に感じちゃったんですよね。自分の感情がわからなくなってしまって、それで混乱して、別れるというのはわかるんですけども。決断が良すぎるというか」

     

    fee「んーーー。まず、『別れを決めた時点』でのエリーは、恋愛の凄さというものをわかりつつはあるけど、まだよくわかっていないんですよ」

     

    残響「そうですね」

     

    fee「姫は、なんかよくわからない野望みたいなものがありまして。その野望についてもっときちんと書けよ!というのが、このシナリオのマイナスポイントなのですが」

     

    残響「マイナスですか」

     

    fee「マイナスです。姫は、レオと野望とを天秤にかけているのに、野望の具体例が全然出てこない」

     

    残響「はいはいはいはい。それはわかります。シナリオと、人間性の描写と言う点で、それは非常によろしくない」

     

    fee「キリヤカンパニーを継ぐ、とか言ってるけど、それについてエリーは自分の頭で考えてるの?っていう。キリヤカンパニーを継いで、継いだ後は何をしたいの? どうしたらキリヤカンパニーを継ぐための野望に近づけるの? とかそういう事が一切ないんで」

     

    残響「まだ、世界征服とか言っている方がわかりやすいというか」

     

    fee「世界征服と同じレベルで、物語的に詰められてないんですよ。タカヒロが考えてない。タカヒロのせいじゃなくて、エリー自身が考えてないのかもしれない」

     

    残響「ははははw」

     

    fee「そういうところでシナリオの格好がつかないというところはあるんですけども。ただ、中学生とか高校生とかではあると思いますよ。たとえば『受験生で、第一志望の東大合格に向かって、頑張って勉強してたけど、彼氏ができてから成績が落ちた。彼氏の事ばかり考えちゃって、デートしまくっちゃって、もう勉強ができない。だから彼氏と別れる。私は東大に行って、憧れの職業に就くんだ』。これはありうると思います。それが一つ」

     

    残響「はい」

     

    fee「もう一つは、どこまで本気でエリーがレオと別れる気だったのかが読めないんですよ。エリーはガキなので、別れた後に『やっぱりもう一度付き合ってあげてもいいわよ!』と言えば、レオが戻ってくると考えている節がある。いつでも取り戻せるものをいったん捨てただけなんですよ。だからレオはものすごく落ち込んでいますが、エリカ視点で言うなら『今はちょっとやめとこー』みたいな感じで、そんな大した決断ではなかったかもしれません」

     

    残響「エリーのことを一般人のレベルで考えていたのかもしれません。よくあるテンプレというか、ラブコメにおいてオレ様キャラがよくしがちな【自分のことがよくわからない、恋する乙女】なテンプレ行動。その範疇内で、エリーが行動してた、っていう思い込み。でも、その範疇(レベル)には、もともとエリーはいなかった、という」

     

    fee「エリーは、『私が望めばレオは戻ってくるに決まってる』ので、安心しきっているんです。もちろん、このまま永遠に別れるつもりで切り出したんでしょうけど、いざ欲しくなったらまた取り戻せばいいや、というのはあります。それなりには悩んでいると思いますが、そういう舐めた部分が見える」

     

    残響「そうですね」

     

    fee「で、この後落ち込んでるレオ君によっぴーが近づいてきます。というかよっぴーを炊きつけたのは、このバカ者(エリー)なんですが。ここでよっぴーの告白を断ると本編ルートですね。で、えーとどうなるんだっけ?」

     

    残響「ナイト君ですね。放送室の告白が筒抜けになっちゃって」

     

    fee「そうそうそうでした。あれはなかなか良かったですね」

     

    残響「良かったですね。ナイト(姫と騎士の主従関係、的ニュアンス)っていう言葉も良かったです」

     

    fee「まぁ、あれだけ竜宮でHしてるんだから、Hの声も全校放送してほしかったな」

     

    残響「はははははははww そういえば、小ネタなんですけど、あのあと、全校生徒が【レオはすげーぜ!】みたいな事を言うじゃないですか。それが小気味よかったです」

     

    fee「全校生徒の前で告白をしちゃって、エリーにOK出させたらそりゃ【英雄】でしょ。あの声を聞けばエリーも本気でレオが好きだってことがわかるでしょうし。だから読後感は良いと思いました」

     

    残響「ですね」

     

    fee「キャラ5.5というのは一緒だけど」

     

    残響「こいつ、良くも悪くもこういう奴だからなあ、という。悪感情は全然ないんですけど」

     

    fee「乙女さんもエリーも、リアルにいたら僕、嫌ってると思うな」

     

    残響「嫌いな奴ばっかりじゃないですかw

     

    fee「そうだよ、嫌いな奴ばっかりだよこのゲームw エリーには近づかないと思う。この学校にはエリーのアンチがいましたよね。僕、エリーのアンチをやってると思いますw

     

    残響「ははははw」

     

    fee「学校のじゃなくて、家でするHシーンのエリーはかわいかったです」

     

    残響「あぁ、あれは良かった。本当に」

     

    fee「あそこ辺りからエリーはかわいくなるんです」

     

    残響「特に良かったCGが……」

     

    fee「じゃあ好きなCGベスト2のコーナー(?)をやりますか」

     

     

    残響セレクション(1)

    feeセレクション(1)

       ↓

    (お互いのセレクション(1)は同じ画像が被った)

     

    残響セレクション(2)

         ↓

     

    feeセレクション(2)

        ↓

     

     

    fee「あ、被った(セレクション(1))w この添い寝CGの良さも解ります。妙に母性愛を発揮してるやつ」

     

    残響「そうそうそうそう。なんというか【強者が抱く慈愛】みたいなところもありますけど」

     

    fee「エリー意外と(萌え的な意味で)やるやんけと思いました」

     

     

    第4回(佐藤良美(よっぴー)正規ルート)に続く……

    『つよきす』対談 第2回 大江山祈編

    • 2018.03.01 Thursday
    • 22:29

     

    大江山 祈(つよきす-FulllEdition- HP)キャラ紹介

     

    (各キャラ点数一覧はこちらのページを参照ください)

     

    ☆1

     

    fee「じゃあまず点数から行きましょう……おっ、高い! 羨ましさとエロが高い!」

     

    残響「はいw」

     

    fee「羨ましさの点数に関する言い訳なんですけど、率直に言って、祈先生のルートは羨ましいです。だからもっと点数を上げても良かったんですよ」

     

    残響「はははw」

     

    fee「ただ、そこで他ヒロインとの比較が働いちゃいまして。祈先生ルートも確かに羨ましいけど、他のルートでこれよりも羨ましいルートが幾つかあるよなぁと思って、5.5と抑え気味の点数にしました。しかし、羨ましいのは間違いないです」

     

    残響「多分、羨ましいというのは同じポイントだと思うんですよ」

     

    fee「祈先生のシナリオはとりわけ短いので、内容について話す事ってあまりないんですけど……」

     

    残響「この話はシナリオ構造として、【長くできない】んですよ。祈先生の妹の死を解明するとか、そういう方向性なら長くできるでしょうけど」

     

    fee「それじゃ違う話になっちゃいますね」

     

    残響「面白さのポイントはそこじゃないですからね。祈ルートは、言葉の通り虚無っぽいルートというか、【柳のように受け流す】ような味わいがします。風が通り過ぎる、みたいな感触」

     

    fee「虚無的と言えば虚無的だけど、僕はよっぴーの方に、より虚無を感じました」

     

    残響「なるほどね。あちらは人間存在の本質が虚無の暗黒に近づいてるから(意味不明)」

     

    fee「祈先生とレオの関係はアリだと思う」

     

    残響「ぼくもありだと思います」

     

    fee「祈先生って、結構レオに救われているんですよ。エンディングで、睡眠薬を飲まなくなったという描写もあって。ただSEXをして、ストレス発散するようなセックスフレンドではなく、ちゃんと癒されているんです」

     

    残響「セックスフレンド的な話でありながら、妙に情緒的だったりしますよね。ちょっと純文学っぽいところもあります」

     

    fee「特にエンディングがそうですね」

     

    残響「このルートで印象に残ったCGは月夜で踊るCGと、エンディングの膝枕ですね」

     

     

    残響セレクション(1)

    feeセレクション(1)

       ↓

     

    残響セレクション(2)

        ↓ 

     

    feeセレクション(2)

       ↓

     

    fee「僕もその辺りだなぁ。月夜で踊るCGが1位。2位は……2回目のHシーンの、バックで祈先生を突いてるやつを選びました。祈先生、最初は童貞が食べたいとか、意味がわからない事を言ってきて〜」

     

    残響「あれは意味がわかりませんよね」

     

    fee「そうなんですけど、2回目のHシーンでは、童貞じゃないレオ君とも楽しんでいるようで、その後も続けているようで良かったと思いました」

     

    残響「はい」

     

    fee「一つ聞きたいのは、このルートの祈先生って、他ルートの祈先生とは全くキャラが違うんですが、本物はどっちなの?」

     

    残響「ふふふw これねぇw」

     

    fee「人格が違いすぎると思うんですよ。二面性、というにも違いすぎると思う」

     

    残響「ガードが完璧、という事なのかもしれませんが」

     

    fee「よっぴーはまだ、他のルートでもところどころで黒さを発散しているので、よっぴールートのダークよっぴーを見ても【同一人物だな】ってわかるんですけど」

     

    残響「確かに」

     

    fee「祈先生はそうじゃない。普段はボケボケの女教師なのに、ルートに入った途端にミステリアス教師になってるし」

     

    残響「ボケの一つもなくなっちゃうという」

     

    fee「どうしちゃったの?と。そういえば、祈先生は【館長が童貞】だって暴露してたけど」

     

    残響「だははwww あれねw」

     

    fee「館長の童貞は奪いにいかないんですか?」

     

    残響「あのネタは破壊力がありすぎましたねw」

     

    fee「祈先生、フカヒレ君なんかどうですか? 美味しい童貞ですよ?」

     

    残響「ですよと言われても、コメディリリーフはちょっと」

     

    fee「んじゃあイガグリ君はどうですか?」

     

    残響「コメディリリーフ第二号もちょっと……」

     

    fee「僕、フカヒレ君は結構まともだと思っているんですけどもw」

     

    残響「スバルが、夜のバイトをしているって話がありますよね。祈先生みたいな人を相手にしているんでしょうか」

     

    fee「でしょうね……祈先生も顧客の一人ですか?」

     

    残響「いやいやw」

     

    fee「祈先生を挟んでスバルと穴兄弟になって、カニを挟んでスバルと兄弟になって……スバルとはいろんな女性を共有する付き合いになりそうだ……」

     

    残響「そんな話じゃないでしょwww」

     

     

    ☆2

     

    残響「ところで、祈先生ルートの話は好きか嫌いかで言えばどっちですか?」

     

    fee「嫌いじゃないですよ」

     

    残響「嫌いじゃない、ですか」

     

    fee「好きか嫌いの二択で迫られたら困りますよw だって、そんなに感動するような話でもないし、特に出来が良い話だとも思いませんが。嫌悪感はないし、好きか嫌いかを無理に選ぶなら、【ほんのりと好き】です。こういうシナリオはありだと思います。ただ、こういうシナリオだけで6ルート出されたらクソゲーだと思います」

     

    残響「あー、【こういうシナリオOnly】はちょっとキツいですね。ちょっとじゃないな、かなりきついな」

     

    fee「添え物としてはいいんじゃないですか? これは褒めてはいるんですが、メインヒロインと同列の評価はしづらいです」

     

    残響「メインではテーマを直球でズドーンとやっていますけど、こちらではそのテーマをはぐらかすような事をしていますからね」

     

    fee「んん?(わかってない)」

     

    残響「テーマというか、関係というか、お互いの存在をはぐらかすみたいな」

     

    fee「え? 1対1の恋人関係云々って話?」

     

    残響「祈先生的な生き方にレオ君が憧れていて。でもそういう生き方はあまりいいもんじゃないよ、という」

     

    fee「レオは祈先生的な生き方には憧れていないと思うぞ」

     

    残響「そこのところは詳しく追っていくと、結局【憧れている】って安易に口にした事自体が、祈先生からしたら、表面的なもの……しか見えていないんじゃないの?っていうところであります。……とは言うものの、でも表面的でもなんだかんだで祈先生は、【テンションに流されない】を出来ているんだから、レオからしたらリスペクトできるんじゃないかという話でもあります。嘘とか見せ掛けだけであっても、それをずーっと貫き通している人は、いずれ本物になるー、みたいな禅宗めいた話」

     

    fee「レオ君は単に、本気を出した結果バカにされたりとか、素奈緒の時みたいな二次被害が出るのが怖いからニヒルぶっているだけで、別に【柳のように受け流す人生】に憧れているわけじゃないのでは?」

     

    残響「自分にはできないことをやっているというのは、それだけでリスペクトできると思うんですよ」

     

    fee「僕は、レオが祈に憧れているというよりは、自分が失敗した時はこういう末路になるんじゃないか?みたいに思っているんじゃないかと……。だから、上に見て尊敬するというよりも、守ってあげたい対象として見ている気がします。現にレオは祈先生の事を守ってあげてるよね」

     

    残響「守ってあげてますね」

     

    fee「こういうシナリオもあってもいいよなぁとは思いました」
     

     

    第3回(霧夜エリカ 正規ルート編)に続く……

    『つよきす』対談 第1回 鉄乙女編

    • 2018.02.26 Monday
    • 20:15

     

    (各キャラ点数一覧はこちらのページを参照ください)

     

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    ☆1

     

    fee「残響氏の熱い要望があり、トップバッターは乙女さんになりました」

     

    残響「はいww *1」

     

    *1……本対談をお読みになられれば即座にお分かりになることと存じますが、残響は基本的に「姉属性」で、この「つよきす」シリーズを通して、鉄乙女さんという「お姉ちゃん」を贔屓しております。そして、このゲームを語るにあたって、残響は何の迷いもなく「乙女さん最初でお願いします」とfeeさんに依頼しました。期せずして、feeさんの側も乙女さんを最初の方にしたい、との旨。ただし、その理由は残響とは真逆で……

     

     

    fee「さて、じゃあまず点数から……うーん。意外にシナリオが低いですね。もうちょっと残響さんは褒めそうな気がしてた……」

     

    残響「乙女さんのシナリオは、【嫌い】と【大嫌い】の間ぐらいですね。特に後半に行くにしたがって。ぶっちゃけて言うと、いわゆる【鬱シナリオ】と言われているよっぴーのシナリオよりも嫌いですからね」

     

    fee「僕の4点は、【出来が悪い】【どうでもいい】といったもので、【嫌い】という感情ではないですね。箸にも棒にもかからないというか、無関心というか……嫌いではないですw」

     

    残響「なるほど」

     

    fee「シナリオの話をします。乙女ルートに限らず、個別ルートは大体、【体育武道祭】、【夏休み】、【夏休み明け】とに分かれています。大まかに言えば体育武道祭あたりからカップルになって、夏休み明けでシナリオが終わる感じかな」

     

    残響「シナリオによって、どこの部分を重点的に描くかは異なりますけどね」

     

    fee「乙女ルートで一番面白かったのは、体育武道祭でした」

     

    残響「ふむふむ」

     

    fee「村田とのボクシング勝負は結構面白かったです。でも逆に言うと、一番の盛り上がりが最初に来ちゃっているというか。例外はいくらでもあるにせよ、物語の一番最後に山場を持ってくる方が、基本的にはいいと思うんですよ。このシナリオは山場が後半になくて、物語として不格好なんです。体育武道祭クラスの山場が後半にあれば、もっと評価したかもしれません。ひとまずはこんなところかな?」

     

    残響「イベント的盛り上がりが体育武道祭だというのは同感です。で、その後は乙女さんと恋人になりますね。仮にイチャラブエロパートと呼びますが」

     

    fee「はい」

     

    残響「そのパートが、ぼくが乙女さんのイチャラブに求めていたものとは全然違ったんですね」

     

    fee「うん」

     

    残響「エロの関係性なんですが。レオ君ががっつくじゃないですか。乙女さんが、まぁそれを受け入れてあげようか、みたいな」

     

    fee「うーん……*2 半分くらい同意」

     

    残響「ぼくはそう見たんですけど、ぼくからしたら『馬鹿野郎!』としか言いようがないんですよ」

     

    fee「レオにですか?」

     

    残響「レオもそうですけど、乙女さんに対しても」

     

    fee「乙女さんに対しても『馬鹿野郎!』なの?」

     

    残響「更に言うなら、ライターのタカヒロさんに対しても『馬鹿野郎!』みたいなところがあります。これが鉄乙女さんなのかよ!みたいな。あるいはレオはこんな猿だったのかよ!みたいな」

     

    fee「まぁ、レオ=猿説は否定も擁護もしませんが……」

     

    残響「『おれの考えるつよきす』を押し付けるわけじゃないですけど、ぼくとしてはNot For Meだと」

     

    fee「僕は……レオの猿展開は、【あり】か【なし】かと聞かれたら微妙なラインだけど……まぁ【なし】ではないかなぁ」

     

    残響「なるほど。ぼくは【なし】だったんですね」

     

    fee「これは、レオに対する嫌悪だけではないんですよね?」

     

    残響「だけじゃないです。乙女さんに対する嫌悪でもあります」

     

    fee「乙女さんも?」

     

    残響「こういう形でレオをかわいがるんじゃないだろ!的な」

     


    ☆2

     

    fee「乙女シナリオは、シナリオ全体を通して、レオと乙女さんがひたすら*3 パワーゲームをしてるんです。乙女さんは、【レオの上に立つこと】、年上ぶることに執心していると言っていい。レオは、基本的には乙女さんを立ててあげてるんだけど、たまにイラっとしたり、たまに暴走する。で、エロ関係ではその暴走が出てるんです。だからこれは、乙女シナリオ後半だけの問題ではないですね」

     

    残響「はいはいはいはい」

     

    fee「で、一見するとレオが乙女さんを強姦しまくってるようにしか見えないんだけど……」

     

    残響「ですよねぇ」

     

    fee「でも乙女さんは、Hをしている事自体が嫌なんじゃなくて、される側が嫌なんです。簡単に言えば、『レオがSで乙女さんがM役になるエロプレイが嫌だ』みたいな。もっと乱暴に言っちゃうと、乙女さんは騎乗位がしたいだけなんだよね」

     

    残響「wwwはい」

     

    fee「で、レオは他のヒロインでもそうなんですけど、無性にお尻マニアだから」

     

    残響「ふふふふふww」

     

    fee「レオは後ろから乙女さんのお尻をいじりたい」

     

    残響「うーんw(困惑)」

     

    fee「で、『乙女さーん!』って襲い掛かるんだけど、乙女さんは『犬みたいなポーズは嫌』なんですよ。『私が上で、お前が下。お姉ちゃんに全部任せておけ。私が気持ちよくしてやるぞ』という、そういうプレイがお好きなんですね。結局どっちがエゴを貫き通すかっていう、レオと乙女さんのワガママ対決みたいになっているんです。
    で、僕から言わせてもらうと、これは本当にどっちもどっちで。どっちもどっちというか、エロに関してはどちらかと言うと乙女さんの肩を持ちますけど、普段の事に関しては僕の心情は完全にレオ寄りです。
    『いい加減に、年上ぶるのをやめたら?』と僕は乙女さんに言いたいです」

     

    残響「乙女さん全否定ダー」

     

    fee「ただ、年上ぶって騎乗位大好きというのは、乙女さんのエロの型でもあって。エロゲ的にキャラは立っているとは思います」

     

    残響「はいはいはいはい」

     

    fee「だって、騎乗位大好きなエロゲーマーは、乙女さんに群がるわけでしょ?」

     

    残響「wwww」


    fee「乙女さんと言えばやっぱり騎乗位だよね!っていう。乙女さんがレオの上に乗りたがるのは、子供の頃からの性(さが)ですからねぇ」

     

    残響「子供の頃のあのCGねぇw」

     

     

    fee「子供の頃から、レオの上に乗るのが大好きな乙女さんだから。だから自分が乗られるのは屈辱なんですよ。それこそ、レオ=馬みたいなもんですね。自分が犬(後背位)にはなりたくないんです。……という、くっだらない話だと僕は思いました。どうでしょう」

     

    残響「ざっくりパワーゲームとしますが。乙女さんが年上ぶりたい。レオはたまに反感を抱き、たまに歓び、たまに暴走する。この関係性は、ぼくは大好きなんですね。『姉弟だなぁ』という感じで、ぼくから見るとほほえましい。乙女さんが乙女さんであるというだけで、素晴らしい。いいものだ、と思えるんです。
    ただ、恋人になってから、乙女さんは色々と受け入れる立場になるんですね。元々受け入れる人ではあるんですけれども。ポジションとして受け側というか。ちょっとそれをやりすぎなんじゃないかと」

     

    fee「ほぉ……」

     

    残響「乙女さんの根底に、レオを受け入れる包容力の高さがあるんですけど、恋人になってからはレオが求めるものに対して、何でも受け入れちゃうというか。レオに調教されていくというか」

     

    fee「調教されていきますね」

     

    残響「それが非常に歯がゆいというか、嫌だったというか。ここまで乙女さんを乙女さんとして描いてきたのだから、キャラ描写の落差として、ここから調教の方向に行くのもわかるんですけども。でも、やだなという気持ちがぼくは凄くしました。乙女さんというキャラは好きだけど、乙女さんが受けキャラとして描かれたのが凄く嫌だったんです」

     

    fee「乙女さんは完全に調教されてはないよ?」

     

    残響「乙女さんが受け入れている、それだけで嫌でした」

     

    fee「受け入れてるのかな……? ちょっと受け入れる努力はしたけど……この件については僕は少し言いたくて」

     

    残響「はい(聞きモード)」

     

    fee「6月の頭の方で、乙女さんがレオをしごき始めて、レオが家出するイベントがありましたよね。後半の展開はあれと対になってるんですよ。ミラーです。【乙女さんが我を出しすぎて、レオが嫌になって逃げだしたけど、戻ってきて仲直り】した6月のイベントと、【今度はレオががっつきすぎて、乙女さんが嫌になって帰ろうとしたけど、仲直り】というのがセットになっている。乙女さんルートが最初から最後までパワーゲームを書いている、と言ったのはそういう事です」

     

    残響「はい」

     

    fee「で、僕としてはレオの方にふがいなさを感じます。こういう事を言うと怒られそうだけど……猿すぎるのは論外としても。恋人になったら、たまには騎乗位以外の体位でエロしたくなるし、毎日のようにHしたくなる気持ちもわかるんですよ。だから、レオの気持ちは一応はわかる。でも、乙女さんがレオを鍛えたがる気持ちは理解できません」

     

    残響「はぁ」

     

    fee「僕はあの、乙女さんの押しつけがましさっていうの、ほんっとうに嫌いで。あの喧嘩の後、レオは反省して、乙女さんを立てて騎乗位してるんですよ。でも、6月のあの一件の後も乙女さんがレオをしごくのは全然やめてないんですよね。
    乙女さんっていうのは、全然自分を変えられない人だと思ってます。自分を変えられないし、変える気もあまりない。僕から見たら、レオの方が偉いですよ。レオは順応してますからね。調教というなら、乙女さんにレオが調教されている事こそ、僕は歯がゆい」

     

    残響「はぁぁ」

     

    fee「レオはずっと、乙女さんに調教されてるんですよ。エロという意味ではなくて、精神的にね。僕は読んでいて相当苛々しました。
    で、恋人になるとレオが急に乙女さんを調教しだす。交互に調教する調教姉弟。だから……なんというか、どっちもどっち? 僕から見たら、もうちょっとお互い譲れねーのかなって思うし、この場合、より譲るべき部分が大きいのは乙女さん」

     

    残響「ふむ」

     

    fee「たとえば毎日おにぎりを食わせるとか。ないよ。ハッキリ、ない」

     

    残響「はははw ないすか。ぼくからしたら、アレはひとつの不器用・堅物系の【様式美】なんですが」

     

    fee「勉強やってるか? っていうチェックぐらいはいいとしても、鍛錬に連れて行くとか、ありえないよ。カニとフカヒレが上に遊びに来てるのに、監視に来るのも、ありえない。どれだけ息苦しいんすか。自分がレオの立場だったら発狂しますよ。
    乙女さんファンに怒られちゃいそうですが、僕から見ると『勘弁してほしいな』って人ですね。
    なぜキャラクターが4.5点なのかというと、僕の好き嫌いだけでつけるなら3点です。でも『つよきす』という作品において乙女さんというキャラクターは必要不可欠だし、キャラとしてちゃんと立っているので、大負けに負けて4.5点をつけましたけど。ヒロインとして、とか、恋人にしたい度でいうなら2点ですね。だから羨ましい度が2点なんです」

     

    残響「これ以上続けると、乙女さんアンチVS乙女さん信者の激突になっちゃいそうで……。まぁとにかく、feeさんが乙女さんを嫌がる理由は解りますw 
    かなりしょうがない平行線なんですよね。だって、【
    乙女さんが乙女さんである限り大好きだ】というぼくの領域には、feeさんは来られないわけじゃないですか

     

    fee「だって、乙女さんが乙女さんである限り嫌いですからね……

     

    残響「ですよね。そこで決定的な溝がw」

     

    fee「緊急時には頼りになりそうだけど。乙女さんは邪悪な人じゃないんだけど、ある意味邪悪な人よりも性質が悪いっていうか……。正しさを背景に相手を縛る感じがどうも……」

     

    残響「【正義すぎる】ところはあるんですよね」

     

    fee「しかもマウント取ってくるし……」

     

    残響「乙女さんは融通の利かない堅物ですけど、弟にだけは目をかける。弟にだけは甘いというか。そこが良いと思うんです」

     

    fee「そういえば、エロの点数が高いですね」

     

    残響「乙女さんが調教されているのは嫌いだったんですけど、乙女さんが流されて、少しずつ乙女さんの自我が溶けていくところは、エロいと思ってしまいました(どうしようもない手のひら返し)」

     

    fee「要は、乙女さんが悪堕ちしちゃったって話でしょ? 悪堕ちする前に逃げちゃったけど」

     

    残響「いやまぁ、完堕ちされてしまっても困るんですけどw」


     

    ☆3

     


    fee「ここまでの流れでうまく触れられなかったんですけど、物語の中盤にも少し触れていいですか?」

     

    残響「はい」

     

    fee「西崎さんとの三角関係

     

    残響「これなぁ……」

     

    fee「西崎さんというキャラは、乙女さんルートでも三角関係の片割れを務めますし、他のルートでも頑張るんですよ」

     

    残響「そうですね」

     

    fee「頑張るのに、なぜか最初からレオの眼中にない」

     

    残響「報われませんよねぇ」

     

    fee「報われないし、立ち位置的にもよくわからない。『2学期』や『3学期』になると、レオとの絡みはほぼなくなって、A組で楽しくやってます。そっちの方が自然だったというか……タカヒロは西崎さんに何をさせたかったんでしょう?」

     

    残響「当て馬的な……」

     

    fee「そう、当て馬的な。率直に申しまして、僕は乙女さんよりも西崎さんの方が女の子として好みなんですが……選択肢を作らないのなら、三角関係なんて書くなよと思ってしまいます……」

     

    残響「当て馬として、ライターに『使われた』って感じですよね」

     

    fee「しかも、レオは迷ってもいないんですよ。三角関係の面白さというのは、魅力的な異性2人に挟まれて、心が揺れる、そこがいいと思うんです。しかしこのルートでは、プレイヤーの僕は西崎さんを選びたいのに、レオは勝手に乙女さんを選びに行っちゃう。プレイヤーである僕の気持ちと、レオ君の気持ちが完全にズレているんですね。
    西崎さんルートを1ヒロイン分ちゃんと作る必要はありませんが、エロシーンを1つくらい入れて、30分くらいのボリュームで、ミニシナリオを作ってくれてもいいのにと思いました。これじゃ乙女さんが、レオへの気持ちに気づくキッカケとして、いいように使われただけじゃないですか」

     

    残響「ですね。……乙女さんとレオが、恋人になる道筋というのが作りにくいのは事実だと思うんですよ。レオが西崎さんを好きにならない理由について、仮説をちょっと話しますけど」

     

    fee「どうぞ」

     

    残響「レオが誰かを好きになるメカニズムというのは、レオがいかに相手をリスペクトできるかにあると思うんです。相手を尊敬できて初めて恋をすると言いますか。エリーや祈先生が特にそうですが、これはなごみやカニ相手にしたって同じです。そう考えると、西崎さんにはそういったリスペクトすべき部分が見えない……少なくともレオからは見えない。だから、レオは西崎さんを恋愛対象として見ないのは当然かなと思ったんです」

     

    fee「よっぴーにリスペクトできる部分なんてあるの?」

     

    残響「それは言葉にするのが非常に難しいんですけど、よっぴーにもあります *4

     

    fee「あるのか。そっか。僕、よっぴーには見つからなかったんですよね。確かに残響さんの言いたい事は解ります。まぁそういう意味でも『つよきす』というか、レオは【強い女の子が好き】なんですね。乙女さんは強さの塊だし。西崎さんはカメラキチガイだし、良いところはあると思うんだけどなぁ」

     

    残響「尊敬というより、愛でる対象になっちゃってるんだと思います」

     

    fee「なるほどなぁ……後、雷が怖かったっていうイベントは、なんだったんですか?」

     

    残響「唐突でしたね」

     

    fee「何か物語的に役に立ったの?」

     

    残響「ある種のテンプレというか」

     

    fee「割とくだらなかったと思っちゃうんですよ

     

    残響「……やりたい事はわかるんですけど」

     

    fee「僕はやりたい事もよくわからないっす」

     

    残響「ある種の様式美的な……」

     

    fee「というのは?」

     

    残響「堅物強キャラの意外な弱点を再発見」

     

    fee「乙女さんは元々弱点がありすぎると思うけど……」

     

    残響「ははは」

     

    fee「料理できないし、電化製品使えないし、自分を曲げないし、適応能力もないし、弱点だらけですよ。今更弱点再発見とか言われても……」

     

    残響「腕っぷし1本でやっていく、みたいな」

     

    fee「そう、腕っぷし1本でやってるんですよ。まぁ腕っぷしがドラゴンボールみたいな人だからしょうがないけど。じゃあ最後に、好きなCGの話でもしますか」

     

    残響セレクション

        ↓

     


    feeセレクション

       ↓

     

    fee「これかぁ、渋いところが来たなあ」

     

    残響「ぼくもfeeさんが選んだのが2位ですわ。そしてこの釣りシーンを1位に持ってきたのは、この姉弟の【日常】の象徴なんですね。この姉弟は、男女の関係(=性愛・官能的な関係性)として考えるとしっくりこなくて。幼いころの姉弟関係をそのままやってるように思えるんです。もちろん昔みたいにいつもレオの背に馬乗りしているわけではないにしてもw
    この二人が、今よりも少し大人になったら性愛・官能性よりも、こういう落ち着いた遊び(釣り)なんかして、楽しげにしているんじゃないかなぁと。そこがこの姉弟のすごく好きなところなんです。そういう、どこかほっとする姉弟の日常性を感じるCGだと思いました」

     

    fee「悪いとは全く思わないけど、枯れた感想が来たなぁ……。もっと、乙女さんの裸に興奮しました!とか言いましょうよw というわけでエロシーンからも1枚……と思ったけど、どれもピンと来ない……」

     

    残響「じゃあやめましょうw ピンと来ないものを選んでもしょうがないw」

     

    fee「ですよねー」

     

    残響「feeさんが乙女さんを低評価するのは読めていましたが……乙女さん、【いらない子】じゃありませんよね?」

     

    fee「言うまでもなく、乙女さんあっての『つよきす』ですよ。この作品に【いらない子】というのは*5 そもそもいないと思いますが、中でもカニ、スバル、フカヒレ、乙女、エリーの5人は、『つよきす』の中核を支えるキャラクターだと思います。自分が苦手なキャラだというそれだけで、作品にとって不要だなんて僕は言いませんよw」

     

    残響「『つよきす』にとって必要なキャラだと言っていただけて良かったです。そこはわりとほっとしています」

     

     

     

    *2〜3 

    この後で話していますが、僕には乙女さんがレオを受け入れてあげているようには見えません(あるいは、受け入れが足りないように見えています)。

    「パワーゲーム(主導権争い)」が描かれているとここでは話しましたが、僕としては『(譲れない部分はあるにせよ)お互いがお互いに歩み寄る』物語を見たかったというのもあって評価が低いです。

     

    *4……よっぴーの記事にて言及します。お楽しみに。

     

    *5

    まぁイガグリ君はいなくても問題ない気はするけど(別にイガグリ君が嫌いなわけではないよ!)

     

     

    第2回(祈先生編)に続く……

    『つよきす』対談 各キャラ点数表

    • 2018.02.25 Sunday
    • 20:08

     


     

    『つよきす』対談 第1回 鉄乙女編

     

    『つよきす』対談 第2回 大江山祈編

     

    『つよきす』対談 第3回 霧夜エリカ編

     

    『つよきす』対談 第4回 佐藤良美(よっぴー)編

     

    『つよきす』対談 第5回 霧夜エリカ&佐藤良美 裏ルート編

    『聖域の崩壊』……シナリオ fee:6.5 残響:?(点数付け不可。不感症)

    『エリー3Pルート』……シナリオ fee:5

     

    『つよきす』対談 第6回 近衛素奈緒編

     

    『つよきす』対談 第7回 椰子なごみ編

     

    『つよきす』対談 第8回 蟹沢きぬ編

    ブラッドベリ『火星年代記』読書会(6)

    • 2018.01.03 Wednesday
    • 16:54

    ★2057年4月 長の年月 第4探検隊の生き残り、ハザウェイ氏のその後

     

     

    fee「主人公は第四探検隊の生き残りのハザウェイ氏。ハザウェイ氏とワイルダー隊長が登場するので、第四探検隊の最終章みたいな趣きですね。サム・パークヒルは出てこないんですか?」

     

    残響「本人は出て来ませんが、伝聞で出てきます。ホットドッグのスタンドを開いて、一週間もしないうちに地球に帰った、と」

     

    fee「何がしたいんだ?っていうw ハザウェイって、第四探検隊で目立ってたっけ?」

     

    残響「いや、全然目立っていなかったですよ」

     

    fee「目立ってなかったよね。ワイルダー隊長とビグズは目立ってたけど……ハザウェイって何をした人?」

     

    残響「誰かに殴られていませんでした?」

     

    fee「誰かに殴られたんですかwww」

     

    残響「あれれ? 違ったかな。殴られてたか、誰かをなだめてたかどっちかだったような(ぼんやりした記憶)」

     

    fee「誰だよハザウェイ殴ったやつ……ひどいなぁ……とにかく、第四探検隊で影の薄いハザウェイ君が今回の主人公です」

     

    残響「あ、いました。水疱瘡を診断した医者ですね」

     

    fee「あぁ、お医者さんか。最初の方に出てきたんですね。ハザウェイの思想的な背景は書かれてないのかな? 『長の年月』だと、ハザウェイは隊長寄りの人になっていますけど」

     

    残響「元から隊長寄りの人だったとは思うんですけどね」

     

    fee「そうだとは思うんですが、隊長寄りだという描写はなかった気がする」

     

    残響「歯向かってはいないじゃないですか」

     

    fee「そりゃ歯向かってはいないですけど……」

     

    残響「サム・パークヒルとかビグズ派ではなかったという」

     

    fee「あらすじに戻ります。第四探検隊の生き残りのハザウェイさんが、火星で細々と家族と共に生きていました。最初の方の、P357、2行目で
     

    『わたしのしたことを、ゆるしてくれるかね』

    と、ハザウェイは四つの十字架に向かって訊ねた


    『わたしはひどく孤独だったんだ、わかってくれるね』


    というのが伏線ですよね」

     

    残響「そうなんですよ」

     

    fee「この伏線がねぇ。後になって、『そういう意味か!』って。そんなハザウェイの姿を、細君と、二人の娘と一人の息子が眺めていると。良い家庭の光景です」

     

    残響「ただ、ハザウェイはあまり体調が良くなさそうですね」

     

    fee「『苦痛に烈しく悸つ心臓を抱えて』とありますね。で、戦争があってから二十年経っています。ハザウェイも地球に帰りたかったけど、既にみんなが行ってしまった後で、取り残されてしまったと。それが良かったのか、悪かったのかはわかりませんけど……ただ、ハザウェイは火星で暖かい家庭を持って、生きられましたから」

     

    残響「そうですそうです。何であれ、暖かさと共に生きられた」

     

    fee「悪い人生ではなかったかもしれません。家族がいなかったらちょっと寂しかったかもしれませんけど。で、ここにワイルダー隊長が到着します。

    『ワイルダー隊長!』『ハザウェイじゃないか!』『お久しぶりです、隊長!』『嬉しいなぁ』

     

    残響「嬉しいなぁ。こんなに嬉しいことはない」

     

    fee「ワイルダー隊長が出てきたのは読んでる僕も嬉しかったです。二十年間、木星や土星や海王星を回ってきたと」

     

    残響「隊長、結構頑張ってますね」

     

    fee「火星の植民政策に口を出したとかで左遷されたんですけども、宇宙飛行士としては相当なキャリアを積んできました。で、ハザウェイのほかに、ここから一万マイルほど離れたところに、あの出会い系でひどい目に遭った……」

     

    残響「ふふふww」

     

    fee「ウォルター・グリップ君がいたと。それはいいんですけど、ジェヌヴィエーヴがいないんですよ。ジェヌヴィエーヴはとうとう死んだ?」

     

    残響「死ww」

     

    fee「ウォルター・グリップ君、ハザウェイのところに行けば良かったのに」

     

    残響「もう嫌になっちゃったのかな。『ハザウェイもロクでもない人間だったらどうしよう』みたいな。超悲観主義になってもうたウォルター君」

     

    fee「まぁ、ジェヌヴィエーヴほどひどいってことはないと思いますけどねw ウォルター・グリップのところには火星人は来てくれなかったんですかねぇ」

     

    残響「うーん……まあそれも運命ってことで」

     

    fee「やっぱ出会い厨はダメですか。僕はいいと思いますけどねw 出会い厨で、ブスが来たら逃げ出してしまったウォルター・グリップ君……」

     

    残響「あの女、身だしなみも衛生関連もダメ、性格もダメで……」

     

    fee「ジェヌヴィエーヴの話で盛り上がりそうだけど、心を鬼にして『長の年月』に戻ります。ウィリアムソンという副官が、ハザウェイの息子と一緒の学校に通っていたので、年齢がおかしいと言いだすんですよね。ウィリアムソンが探偵ごっこを始めて、ハザウェイの隠された秘密を暴いてしまう」

     

    残響「そうそう、実は……」

     

    fee「「実はハザウェイの優しい家族たちは、ハザウェイの本当の家族ではない、ということで、ちょっとホラーじみた話ではあるんですけど。ここでホラー路線に行くか感動路線に行くかは、作家次第というか、作品次第ですね。この後、ワイルダー隊長は奥さんと話をして、奥さんの正体を知る、と。奥さんたちは火星人なんですが、ずっとハザウェイを支えてきました」

     

    残響「そうなんですよ」

     

    fee「この話は、登場人物のみんなが優しいですね。最後、ハザウェイが死んじゃって、既に亡くなっている奥さんたちのところにハザウェイの遺体を一緒にいれると。
    そして、隊長はそのまま去っていきます。残されたアリス(妻)と、息子と娘。ハザウェイはいなくなったけど、火星人の一家が、今日も幸せな日々を続けるという物語ですね」

     

    残響「そうか、今気づきましたが、考えてみればホラーにも見えるんですね」

     

    fee「設定だけを見ればホラーでも行けると思いますよ。ただ、ホラーとして書いてはいないですよね。ホラーに寄ってるのが『第三探検隊』とか、次に出てくる『優しく雨ぞ降りしきる』とか」

     

    残響「ある意味対照的というか。『長の年月』はホラーの設定で優しさを描いていて、『優しく雨ぞ降りしきる』は優しい牧歌的な世界を描きながら、書かれている内容はホラーという」

     

    fee「そうですね。この『長の年月』は、『火星の人』の変形でもあります。『火星の人』はおじいさんとおばあさんのところに、息子のトムが来てくれる話でした」

     

    残響「姿を変えることができるっていう」

     

    fee「そうそう、相手が望むものに変わる能力を持っているという。『火星の人』も『長の年月』も基本的には同じ話ですよ。僕は『火星の人』も好きだし、『長の年月』も好きです」

     

    残響「いい話ですよ」

     

    fee「こういう話はやっぱり、ブラッドベリは巧いよなぁって思いますね」

     

    残響「下手に小細工せずにね」

     

    fee「こういう優しい話って、ありそうであんまりなくないですか?」

     

    残響「寂しいんだけど、なんだか優しいみたいな」

     

    fee「そうそう。そういう感じの作風で。ブラッドベリはそういうところがいいですね」

     

    残響「これは個人的仮説ですが、ラストの『百万年ピクニック』に至るまで、『火星年代記』全体を通して、最終的に地球人が【火星人】になっていくという、連作としてのゆるやかな一つの線があると思うんです。地球人が火星にやってきた最初の頃……『イラ』とか『第三探検隊』あたりでは全然意思疎通が図れていない。色々な事件・物語を経過して、やっと『長の年月』に至って、地球人が火星的なモノと和解したというか。ハザウェイさんは火星人の妻と息子さんたちと一緒に、優しい生活を営むに至ったという」

     

    fee「そうですね」

     

    残響「だからようやく、地球人は【火星人】になれたのかな、と」

     

    fee「『火星の人』では途中まではうまくいったけど、取り合いになっちゃいましたからね。一番最初に交流があったのが『夜の邂逅』で。『夜の邂逅』あたりからちょっとした交流が始まって、やっと完全に交流できたのが『長の年月』か。あまり考えていませんでしたが、そういう流れはありそうですねぇ。ハザウェイさんは奥さんのところにちゃんとお墓参りに行っていますけど、楽しい人生は送れましたよね」

     

    残響「こういう幸せの形があってもいいと思うんです」

     

    fee「それこそSFだからこそ読める暖かい話ですね」

     

    残響「そうですね。うまく言えませんが、【SFだからこそ】という感じがすごいする」

     

    fee「僕、こういうのが読みたいんですよ。あんまりないんですけどね……」

     

    残響「今のSFだと、もうちょっと科学的な装飾……科学用語とか、先端技術とか、科学設定の論陣とか、辻褄合わせが付け加えられる気がして」

     

    fee「まぁ、それが好きな人はいいかもしれないけど、僕的にはそういうのは要らないんだよね……」

     

    残響「火星という大雑把な舞台があって、ちょっと不思議で優しい話があって。ぼくもそれでいいですね」

     

    fee「まぁここまで牧歌的な話は、現代ではなかなか書きづらくなっているんでしょう。ただ、ガチなSF愛好者はいいとして、『風の谷のナウシカ』とか『ドラえもん』くらいのSF好きには、これぐらいで十分楽しめるというか、これぐらいじゃないとついていくのが大変というか」

     

    残響「確かに、そういう作品は少なくなっているのかもしれませんね。ざっくりとした印象論ですが、それほど的を外した印象でもないはず」

     

    fee「最新のSFをバンバン読んでいるわけじゃないので、見当違いな事を言っているかもしれませんが、最新の話題作だけで言うならこの手のお話は少なくなっていると思います。話題作だけで語るのは良くないと思うんですが、話題作くらいしか読めていないので……。まぁ僕が知らないところに、良い作品がたくさんあるのかもしれません」

     


    ★2057年8月 優しく雨ぞ降りしきる 廃墟となった地球

     

    fee「世界崩壊後の地球を舞台にしたお話です。僕、最初は火星の話かと思って読んでいました。誤読してたというw しかしですね。『トーストを8枚と、目玉焼きを8つと、ベーコンを16枚と、コーヒーを2杯と、冷たいミルクを2杯』って……食べすぎじゃないですか!? デブなんですか?」

     

    残響「アメリカの南部地域っぽいんですよね。聞いた話ですが、南部地域って、割と男の人も女の人もでっぷりとしているというか。食べ物がおいしいというのもありますが、凄い量を食べるんです」

     

    fee「カリフォルニア州が舞台なので、南部と言っていいのかはちょっと微妙なところだけど……」

     

    残響「カリフォルニアかぁ……そうですね、だとしたらどうなんだろう」

     

    fee「ナチス・ドイツの平均的な家族像に、両親と男の子、女の子で4人家族というのがある、と以前仰っていましたね。この作品の一家もそうなんじゃないかっていう。しかし÷4にしても一人でトーストを2枚食べて、目玉焼きを2個で、コーヒーは……あぁ、大人にコーヒー1杯、子供にミルク1杯ですね? このミルクはコーヒーに入れるミルクではないですね?」

     

    残響「はいw」

     

    fee「『学校へ、勤めへ、出かけましょ、走って、走って、8時1分』だから、学校に行く人が1人は、いる。ということですね」

     

    残響「そういえば、ぼくはこれを読んで、手塚治虫の『火の鳥』を連想しました」

     

    fee「すみません、『火の鳥』を読んでいないので何とも言えないんですよね……」

     

    残響「『火の鳥』も年代記なんですが、その中で【未来編】というのがありまして。絶望的な状況だけど、淡々と日常生活が行なわれていくという話があります。ほとんど人が居なくなった世界で、ロボットを中心にして、日常生活が淡々と描かれているという」

     

    fee「ほとんど同じじゃないですか。オマージュだったりするのかな」

     

    残響「それはわかりません」

     

    fee「話を戻します。世界崩壊後のカリフォルニアが舞台の物語なんですが、最終戦争中に水爆が落ちているんですね。P378、8行目。
     

    『その西面は、ただ五か所を残して、あとは一面真っ黒だった。ひとつは、ペンキにくっきりと残された、芝生を刈る男のシルエット。ひとつは、写真で見るような、花を摘もうと身をかがめた女の影。さらに、もっとはなれたところに、あの恐ろしい瞬間に壁板に灼きつけられた三つの影があった。両手を高く空に突き出している小さな男の子。そのもっと上方に、ほう(漢字が出ない)りあげられたボール。男の子と向き合って、永久に落ちてはこないボールを受けとめようと、両手をかかげている女の子』

    あぁ、さっきの4人家族説であってますね」

     

    残響「ですね」

     

    fee「この、壁に影が残る描写は『はだしのゲン』とかでもおなじみの」

     

    残響「そこにいる人が焼きつけられちゃって」

     

    fee「核爆弾こえーー、みたいなエピソードですよね。いい描写だと思います」

     

    残響「ところで、ここ矛盾があるんですよね。何でこんなに平和なんだ?っていう。核爆弾レベルでドンパチやっておきながら、なんでこんなにここは生活レベルが平和なのか?っていう……普通なら段々生活レベルが落ちていくものだと思うんですが……」

     

    fee「多分ですけど、いきなり爆弾が落ちてきてそれで終わりなんじゃないですか? 一瞬で戦争は終わったのでは?」

     

    残響「あ、これはいきなりなんですか?」

     

    fee「だって、そんな核爆弾なんてボンボン撃ち合えないでしょ。いや、国レベル、世界レベルでは撃ち合った可能性はあるんですけど、カリフォルニアという街単体はこれで全滅でしょ。で、ロボットが生活を管理しているので、特に矛盾はないんじゃないですか?」

     

    残響「そっかそっか……なるほど」

     

    fee「この作品では、家がキャラクター性を持っていると言いますか、家が擬人化されていますよね。『家は物音がするたびにおののいた』という描写があったり、火事と戦ったりする描写もありまして。人間はいないのに、雀が……」

     

    残響「そうそうそう。居たりして」

     

    fee「あと、犬も出てくるんですよね?」

     

    残響「ヨロヨロの犬が」

     

    fee「そう、ヨロヨロの犬が。で、ですね。僕たち、ネットで調べました。放射線に晒された生物が、どの程度の期間、生きられるのか。犬はダメでしたよねw」

     

    残響「ダメでしたねw」

     

    fee「哺乳類はダメですね。昆虫は比較的放射線に強くて。ゴキブリはかなり強い、と。あと、甲虫も結構強いと。蠅はあまり強くないけど、人間よりは強いという結論でした。よく調べましたw」

     

    残響「ふふふw 頑張りましたfeeさん*1」

     

    fee「というわけで、この作品にゴキブリが出てきてもいいですが、雀や犬が出てくるのはおかしい。P379、13行目

    『一匹の犬が、ぶるぶる震えながら、哀れななき(漢字が出ない)声をあげた。(略)かつては大きくて肉づきがよかったのに、いまは骨と皮ばかりになり、からだ中焼けただれてしまったその犬は』

    という謎の文章があります」

     

    残響「ああ、はい。ありますね」

     

    fee「ここに矛盾があるんです。核が落ちたのはいつなのかっていう。犬の寿命は13年くらいですよね? この作品の舞台は2057年。ということは、2045年よりも後に核が落ちたんじゃなければおかしいですよね。だって『かつては大きくて肉づきが良かった』んですから。犬が元気だった頃に、核が落ちてきたと。で、核を食らったのに長い間生きていたという」

     

    残響「……そうなりますね」

     

    fee「最終戦争が始まったのって、2036年ですよね。となると、9年間カリフォルニアは無事だったことになります。つまり、カリフォルニアが9年間無事だったか、犬の寿命がおかしいかの二択ですよね」

     

    残響「元からおかしい犬だったのかもしれませんw」

     

    fee「ゾンビ犬みたいなやつですかw 犬もロボットなんじゃないか、という仮説も立てられたんですが……」

     

    残響「ぶくぶく泡を吹いていますからロボットじゃないと」

     

    fee「かわいそうに、死んじゃいましたからね。最終戦争が到来して9年間が過ぎてるのに、『学校へ、勤めへ、さぁさぁ出かけましょ』っていう……ってこれがさっき残響さんが指摘してた矛盾か(今気づいた)」

     

    残響「そうですw」

     

    fee「すみませんでした。まぁ……ミスが気にならないくらい面白ければいいとは思いますが……ちょっとブラッドベリはSFを書くには、ミスが多すぎないですか?」

     

    残響「はははw 2017年の今じゃフルボッコかもしれませんw ただ、ブラッドベリがここで書きたかった事は伝わってきますよね」

     

    fee「伝わりますねww」

     

    残響「伝わるんですけど、このミスはちょっといただけないっていうw 残響は結構こういうのは詰めて考えない大雑把な人間ですが、それでもちょっと【雑だなぁ】というか」

     

    fee「時間設定を少し前倒しするだけで、矛盾は小さくなったんじゃないですか?」

     

    残響「新版で機械的に31年プラスするよりも、こっちの設定を考え直してくれっていうw」

     

    fee「2、3年でいいと思うんですよね。主がいなくなった家で、ロボットがひたすら頑張っている日常が2〜3年あって、ついに犬がやってきて火事になった、みたいな。こうすれば犬が生きていてもギリギリ矛盾はないかもしれないし、人がいなくなった後、ロボットが日常生活を営んでいる怖さも描けるし」

     

    残響「『火星年代記』というタイトルなんですけど、年代記(クロニクル)を書くなら普通、作中世界の年表を作りますよね」

     

    fee「うんうん」

     

    残響「でもブラッドベリは年表を作らずに、何となく火星にまつわる物語をたくさん作っているだけのように思えてきたんですけど」

     

    fee「まぁ、あまり歴史は考えていないですよね。ブラッドベリはガチなSFの人ではないので……」

     

    残響「そうですね……しかし一般的にはブラッドベリは【ちゃんとしたSF作家】という認識だと思うんですけど……竹本泉じゃないんだから……」

     

    fee「サブタイトルにもなった『優しく雨ぞ降りしきる』というのは、昔の詩人、サラ・ティーズデイルさんの作品から取られているんですけども……。Wikipediaによればですね、サラさんは恋人を捨てて、金目当てに違う男と結婚したんでしたっけ?」

     

    残響「ですね(Wikipediaを見ながら)」

     

    fee「もうねぇ、サラねぇ。二人の崇拝者から求婚される……この崇拝者っていうのもいいですけどね。詩人のヴェーチェルとサラは毎日長い恋文を送りあって、ヴェーチェルが意を決して求婚したのに、サラは裕福なフィルシンガーと結婚しちゃってねぇ……」

     

    残響「ワーオ」

     

    fee「求婚して振られちゃった貧乏詩人のヴェーチェルとサラは、終生愛情あるプラトニックな友人だった、と。一方で『詩に表現した情熱を人生で経験することは決してできず、その結婚は幸福ではなく……』

     

    残響「離婚して、自殺してしまった(Wikipediaを見ながら)」

     

    fee「しかもヴェーチェルの方も、サラの自殺の2年前に自殺している。サラが、金目当ての結婚なんてしないで、貧乏詩人のヴェーチェルと一緒になっていれば自殺しないでもすんだかもしれないし、仮に自殺したとしてもですね、少なくとも詩の世界のような恋愛ができたのではないでしょうか。だから、サラのせいだなって」

     

    残響「悪女めw」

     

    fee「詩で表現した世界を人生でも経験すれば良かったのに。サラのせいでヴェーチェルまで自殺しちゃって……いや、サラのせいじゃないかもしれないけど。やっぱり金目当てじゃなくてですねぇ。好きな人がいるんならさぁ……いないなら金目当てでもいいですけど。あんまりカネ、カネ言ってると、一番いいものを失うかもしれない」

     

    残響「詩人なのにねぇ」

     

    fee「そう、詩人でしょ? 現実主義のつまらない事しちゃってねぇ。詩人じゃ儲からないのかもしれないから、パトロンが欲しかったのかもしれませんが……」

     

    残響「ゼニですか」

     

    fee「まぁサラはいいや。ちょっと言い残した事がありまして、貯蔵の話なんですけど。家が火事になった時に、『120個の卵と、6本のトーストと、240枚のベーコン』が火に食われてしまった。15日分、ですか? 僕、こういう描写を見るとすぐ計算したくなっちゃうw」

     

    残響「ぼくは計算は全くできないので……(投げた)」

     

    fee「かくして、平和だった2057年8月4日も終わり、この家は息絶えました。しかし、声は何事もなかったかのように『2057年8月5日でございます』と。8月4日はフェザーストン氏の誕生日で、ティリタの結婚記念日で、保険料と水道、ガス、電気代の支払日だったんですが……何十年同じ事を言い続けるのかな。
    というわけで、核戦争後の荒廃した世界で、機械が平和な日常を装っているのが、シュールで、不気味、かつちょっと悲しい感じの作品です」

     

    残響「……ある意味、美しくもあるけれど」

     

    fee「そうそう。そういう、何かを感じる作品ですよね。この情景を思い浮かべて、特に何も思わないと、ただ家が暴れているだけの話になりますね」

     

    残響「何も思わないっていう人が居たら、それもそれで凄いなw」

     

    fee「この作品が、というよりブラッドベリ全体がそうですけど、詩ですね。感性のアンテナが合えば猛烈にハマるけど、アンテナが合わないと多分良さが解らない作家だと思います……」

     

    残響「この作品は人間の心理描写とかはなく、全部情景描写でやっていますけど……」

     

    fee「そうですね。アクション描写はありますけど」

     

    残響「人間がいないんですよね。人間の不在」

     

    fee「家が擬人化されていて、家が人間というか、主人公というか……」

     

    残響「システムというか……。こういう作品に名前をつけるとすれば『優しく雨ぞ降りしきる』みたいなタイトルになるんでしょうね。上手いわ」

     


    *1……この対談をしていて、feeさんが「核の後でも生きていられる生物とは?」というところが気になられたらしく、対談そっちのけでかなりwebで調べた。(残響)



    ★2057年10月「百万年ピクニック」 新世代の火星人

     

    fee「地球の一家が火星に来ました。ドライブして、住みたい街を物色します。ピクニック気分で無邪気にはしゃぐ子供たちでしたが、住みたい街を決めた後で、パパが真実を話します」

     

    残響「最後、子供たちが『ぼく、とても火星人が見たかったんだ』って言うんですけど、それに対してパパが、水面を指さして『ほら、ここに映っているのが火星人だ』って。元地球人だったけれど、これからは火星に生きる火星人なんだ、というエンドです。上手い!流石や」

     

    fee「子供は3人で、ティモシーとマイケルとロバート。年長のティモシーだけは、もう地球に帰る事はないと解っていて、演技しています。マイケルとロバートは解っていない。ティモシーが実に巧く、弟2人の面倒を見ているんですよね。かなり健気で頑張っているなあと思いました」

     

    残響「うんうん」

     

    fee「火星にはもう一家族、女の子ばかりの一家が火星にやってくるんですよね? これはもうハッピーエンドですね、エロゲ的にはね」

     

    残響「だははははww そこでそう言いますか、あんさん!」

     

    fee「だって、この一家と娘さんたちしかいなかったら、そりゃブサでもダメ主人公でも子供できるでしょ? 楽しい感じですよ」

     

    残響「ジェヌヴィエーヴはもういないけど……」

     

    fee「ウォルター・グリップ君はどっかにいるかもしれませんが。ウォルターはレイプ魔みたいな感じですか? ウォルターを追い払え!みたいな」

     

    残響「なんだか凄い話になってきたなww ダイジョブかおい……」

     

    fee「ウォルターも仲良くしましょう。ウォルターもこちらに来ますよ。とにかく、この二家族が最後の地球人なんです。で、先ほど残響さんが仰ったラスト。

     

    『ぼく、とても火星人が見たかったんだ』と、マイケルが言った。『どこにいるの、パパ? 見せてくれるって約束したじゃないか』。
    『そうら、そこにいるよ』パパは、マイケルを肩の上に移して、真下の水面を指さした。
    火星人がそこにいた。ティモシーは震えはじめた。
    火星人はそこに――運河の中に――水面に映っていた。ティモシーと、マイケルと、ロバートと、ママと、パパと。火星人たちは、ひたひたと漣波の立つ水のおもてから、いつまでもいつまでも、黙ったまま、じっとみんなを見上げていた』

     

    と、こうなるわけですね」

     

    残響「そう……ここでティモシーは震えてますよ」

     

    fee「やっぱり最後の7、8行は素晴らしいですね」

     

    残響「凄いですね。さすがです。『火星年代記、ここから始まる−−』みたいな」

     

    fee「火星の旧勢力とは共存していけますかね」

     

    残響「もうこうなったら行くしかないんですよね」

     

    fee「ハザウェイと旧勢力は仲良くできましたが」

     

    残響「ティモシーは大丈夫そうですけど、マイケルとロバートのどちらかがサム・パークヒルみたいになっちゃう可能性はあります」

     

    fee「……パパとママがうまくやっていくしかないですね。教育をきちっとやりましょう」

     

    残響「教育大事」

     

    fee「グランドエンドで良かったなぁ、と思うんですけど、この作品単体での感想は特にないんですがw」

     

    残響「それにしてもタイトルが凄く良いと思いませんか? 百万年ピクニックって」

     

    fee「いいですよねぇ。これから百万年、ピクニックするんですよね?」

     

    残響「そういう意味ですよね。未来に向かっての百万年ピクニックですか。希望に満ち溢れてはいないけど、茫漠とした感じがしますね」

     

    fee「ピクニックに来たっていう」

     

    残響「この軽い感じがね」

     

    fee「まぁ、軽い気持ちにならざるを得ないよね……」

     

    残響「そうですねぇ……【ならざるを得ない】っていうのは言いえて妙です」

     

    fee「子供たちは本当に軽い気持ちで来てるしね」

     

    残響「パパとママはすこぶる重い気持ちで来ていますけど」

     

    fee「そりゃそうですよ。そうなんですけど、ティモシーもまた両親の気持ちを解っちゃっているのが、かわいそうというか。ティモシーって何歳なんだろ。小学校高学年くらいに思えるけど」

     

    残響「パパがティモシーを肩に乗せるシーンがありますよ。中学生よりは下でしょうね」

     

    fee「じゃあやっぱり、小学生……だとするとティモシー健気ですね。高校生ぐらいなら……いや、高校生でも辛いは辛いですが。一人で泣いているシーンもありますし、パパとママの前でも演技をしてるんでしょ? 無邪気な子供の振りをして……実にティモシーが健気ですよ」

     

    残響「ぼくはこの話、パパが、自分の代で全部【地球的なるもの】を葬り去ろうとしている。ティモシーたちにはまっさらな形で生きてほしい……と、そう読んだんです。でも、ティモシーは今までの地球的なものを背負っているから、引き裂かれているというか。上手く言えませんが、これでいいのか?的なぼんやりとした悩みから抜け出せないといいますか」

     

    fee「うん」

     

    残響「でもこれでやっていくしかないんだよな、みたいな」

     

    fee「パパは

    『たとえ、戦争がなかったとしても、わたしたちは、わたしたちの新らしい生き方の基準を作って生きるために、火星にやって来ただろう。火星がいずれは、地球の文明に『汚される』にしても、それまでまだ百年はかかっただろうからね。もちろん、いまは――』

    汚されるって言っていますね。地球的なものではなく、新しい生き方の基準で生きて行こう、というのがパパの思想です。その象徴がロケットの破壊かなと」

     

    残響「そうですね。ただ、パパはそう思っているけど、ティモシーはやっぱり【地球的なるもの】への愛着があって、そう簡単に割り切れないと言いますか。パパの理想を子供に解れ、って言っても難しいでしょうね」

     

    fee「ティモシーは、地球を探しているシーンがありますけど……ティモシーはそんなに地球に愛着があるんですか?」

     

    残響「うーん、どう言えばいいのかなぁ……うまく言えないんですけど……」

     

    fee「あぁ、でも地球の地図をパパが焼こうとしている時に、ティモシーは視線を逸らしたりしていますね。そうかぁ……言われて気づいたけど、残響さんの仰るとおりですね」

     

    残響「地球の具体的なアレコレに対する愛着、というよりは、もっとぼんやりとした火星に対する不安感……パパに対して論陣を張って、『違うんだ!』みたいな事は言いませんが、これでいいのかな?というか」

     

    fee「『ティモシーは、パパが火に投げ込んだ最後の一つを、眺めた。それは、地球世界の地図だった(略)。ティモシーは視線をそらした』」

     

    残響「ティモシー自身には、〇〇をしたい、という意思が今はないんですよね。考えているのは、これからどうしたらいいんだ?という。不安に脅えているようなシーンばかりで、これからどうしたい、というものが見えてこない」

     

    fee「ピクニックに来たばかりですからね。そんな適応能力はなかなかないと思います」

     

    残響「まぁ確かに……」

     

    fee「パパは、『女の人には気をつけろ』とか、わけのわからない事を言っていますけどね」

     

    残響「ははははw」

     

    fee「もうそんな時代じゃないのに、そんな事を言われても……」

     

    残響「全然地球的な考え方を捨てられてないですね、パパw」

     

    fee「10歳と8歳の弟たち、って文章があるので、ティモシーは11歳以上ではあるんですね」

     

    残響「そっかそっか。そうですね。さて、ティモシー少年がこれから【火星人】として、この火星で生きていくのですが、その先にあるのは果たして栄光か滅亡か。安らぎか絶望か。この茫漠とした火星の大地は、今日も静かに在る……、みたいな余韻を個人的には感じています。【登場人物個人の意志】というよりは、【火星の意志】というか、ね」

     

     

    次回へ続く……(『火星年代記』読書会 総まとめ&お疲れ様会)

    ブラッドベリ『火星年代記』読書会(5)

    • 2018.01.03 Wednesday
    • 16:53

    ★2036年9月「火星の人」 火星人の悲劇

     

    fee「僕、この話は結構好きなんですが」

     

    残響「ぼくも好きですね。最後はドタバタになりますが、中盤までのブラッドベリの描く優しい世界観は好きです。こういうのを描かせるとほんとに巧いですよね。少し『第三探検隊』にも似ているような」

     

    fee「ですねぇ。あらすじを言いますと、老夫婦のもとに亡くなったはずの子ども、トムが訪ねてきます。来てくれて嬉しいはずなのに、疑ってしまうラ・ファージュさんの気持ちが悲しい……」

     

    残響「常識で考えればあり得ないですからね。幸せな夢というか……。ただ、最初は疑っていたラ・ファージュ夫妻ですが、後半になると火星人だろうがなんだろうが関係ない。これは私の子だ!と言うシーンがあります。

     

    ラ・ファージュ夫人は、トムをうしろにかばった。『これは、わたしの息子です。あなたがたは、この子にどんな罪をきせる権利もありません。わたしたちは、いま家へ帰るところなんです!』

     


    fee「幸せな夢を疑って、わざわざ覚める方向に行かなくてもいいのにと思っちゃいますが……そんなものなのかなぁ。アンナのこの啖呵は格好いいですよね。話を戻しますが、トムの正体は火星人ですが、『第三探検隊』の時と違って悪意はないんですね」
     

    残響「あ、そうだ。『歓迎と別離』にも似ているんだ」


    fee「おぉ、そうですよ! 押しつけられた役割を演じながら生きていくあの少年に、確かに似ている」
     

    残響「それもそうですが、あの時*1イノセンスというものについてお話しましたよね。この作品からも、そのイノセンスを感じるわけです


    fee「なるほど。しかし、ラストの悲劇を生んだのは、ラ・ファージュ夫人の責任ですな。『ぼく、町が怖いんだ。ひとびとが。行きたくないよ』ってトムが言っているのに。これは当たり前ですよね。ラ・ファージュ家以外の人に出会ったら、また違う姿に変身してしまうかもしれません。ラ・ファージュ一家もトムも、このままの生活を望んでいるわけだから……」
     

    残響「でも遅かれ早かれ無理だったんじゃありませんか? やっぱり町に行かないわけにもいかないし。トムと一緒にどこにも行けない、というのはやはり寂しいし……」


    fee「心情的にはわかりますけど、そこを我慢して、トムは家から出ちゃいけないんですよ。DVDを借りて来て家で一緒に見る、家でいろんなお喋りをする、そういった楽しみ方で我慢しなきゃいけなかったんです。トムと一緒にいたいなら。危機意識が足りませんよ」


    残響「案の定、トムはいなくなって、ラヴィニアという少女に変身してしまいます」
     

    fee「便宜上トムと呼びますが……かなり抵抗した後、またトムに戻りますよね。この力関係というか、変身のメカニズムはどうなってるんでしたっけ?」


    残響「

     

    『この家で、思ってらっしゃるのが、とてもとても強いのです。まるで牢屋に捕らえられているみたい。わたし、もとの身体には帰れませんわ』

     

    とありますね。人々の想いの強度で姿が変わるのかな」


    fee「この後、トムはたくさんの人々に追いかけまわされ、その都度姿が変わっていきますが……。
    皆が、亡くした家族や恋人を思い浮かべる中で、巡査がふるっていますね。『ちょっと待て』と、巡査が叫んだ。『これはわたしの犯人だ。名前をデクスターといって、殺人容疑で手配中なんだ』」


    残響「犯人逮捕に執念を燃やしていたんですねw どんな相手よりも、犯人に会いたいw」


    fee「寂しい人なんですよw この後も『かれは市長であり、ジュディスという少女であり、夫のウィリアムであり、妻のクラリッスであった』とありますけど、誰ですか! 市長に会いたがってたのは!」


    残響「なぜ市長www」


    fee「そのうち、トムのキャパシティが限界にきて……」


    残響「

     

    かれは石の上に横たわっていた。(略)その顔は、あらゆる顔、片目は青く、片目は金色、髪の毛は、茶色で、赤で、黄で、黒で、片ほうの瞼は厚く、片ほうは薄い、片手は大きく、片手は小さい。

     

    なんかもう、無茶苦茶になって、ついに死んでしまいます」


    fee「『アンナは、なにもいわずに、泣きだした。『さ、家へ帰ろう、アンナ。しょうがないじゃないか』と、老人はいった』。悲しいですなぁ……でもアンナが街に連れて行ったりしたから……」


    残響「悲しい話なんですよ。アンナだって、ただトムと一緒に街を歩きたかっただけなんです……」


    fee「そうですねぇ……。ラヴィニア(トム)が、(ラヴィニアの)父親にふるえる声で『ロッホローモンド』を歌っていたり、詩情に溢れた良い作品ですね」


    残響「『第二のアッシャー邸』も『火星の人』も、最後はドタバタ展開ですけど、だいぶ読み口は違いますね」


    fee「『火星の人』は物悲しく感じます」

     

    *1 イノセンス……『無垢なるもの。子供が大人に成長するにつれ、失われていくもの。近代以降の欧州の物語類型(「小説=ノベル」)では、それをポジティブに成長物語(いわゆるビルディングス・ロマン)とする例が多いように思うんですが、アメリカ文学ではむしろ成長と引き換えに失われていくもの、見失ってしまうもの。そちらに目を向けるケースが多くて。

    (中略)

    イノセンスの喪失だと、たとえば『ピーター・パン』とか『ハックルベリー・フィン』とか。あるいは『ライ麦畑でつかまえて』とか(ブラッドベリ『太陽と黄金の林檎』読書会(7)「歓迎と別離」より)(残響)


     

    ★2036年11月「鞄店」 核戦争突入直前の地球


    fee「ついに地球が核戦争に突入するということで、火星の植民者たちが地球に急ぎ帰還する、というお話です。でもこのお話、変じゃありませんか?」


    残響「変、とは?」


    fee「残響さんが植民者だったら、核戦争前夜の地球に帰りたいと思います? 僕なら帰らないですけど」
     

    残響「あぁ……そういう事か……。絶望の地に帰りゆくのか……」


    fee「なんでわざわざ死ぬために帰るんですか? いや、帰る人はいるとは思いますよ。でも……ネタバレになってしまいますが、ほとんど全員が地球に帰っていますよね?」


    残響「P304、4行目

     

    『まだ火星にきて長い年月が経ったわけじゃなし。せいぜい二年ってとこでしょ。四十年もこの火星に住んでるんなら、話は別です。だが、みんな地球にゃ親類がいるし、生まれ故郷の町もあるんですからね』

     

    とは言っていますが……」


    fee「説得力ないなぁと思います。そりゃ、独身老人とかは帰るかもしれません。でもたとえば『音楽家たち』にしろ『火星の人』にしろ、家族総出で火星に来ている人たちは沢山いますよね。その人たちが、わざわざこぞって地球に帰るんですか? 死ぬために? それはないわぁって思います」

     

    残響「なるほど……。自分だったらどうする、というふうに考えて作品を読んでいなかったので、『そんなもんかなぁ』と思って読んじゃいましたが、言われてみるとおかしいですね」


    fee「ほぼ全員が地球に帰る事にしないと『火星年代記』という作品は成り立たないですし、『火星年代記』という作品自体はとても面白い作品だと思います。しかし……物語としてはプロット段階で破綻していますよね。もし僕が作家で、このプロットに気づいたら、お蔵入りになっちゃいます。でもお蔵入りにせずに書かなきゃ、名作は生まれないという事でもあるんですけど……」


    残響「あんなに褒めてたのに破綻作品扱いに(苦笑)」


    fee「ブラッドベリ先生は、精密なプロットを構築して物語を作る人じゃないですからね……。いいんですよ、これはこれで……。でもこの展開はなぁ……。もしみんなが一斉に帰るとするなら、火星の地で新たな伝染病が発生したとかね。あるいは、同調圧力とか……もう少し何か理由をつけるかな」


    残響「なるほどなぁ……ブラッドベリ自体は帰る人なんでしょうね。なんだかそんな気がする。自分が帰る人だから、あまり疑問に思わなかったのかもしれません」


    fee「あぁ〜、わかる気がします」

     


    ★2036年11月「オフ・シーズン」 ついに地球が核戦争に突入


    fee「ついに地球が核戦争に突入した『オフ・シーズン』。主人公は我らがナイスガイ、サム・パークヒルです!」


    残響「いよっ! 待ってました!(ドラムロ―ル音)」


    fee「火星にホットドッグ屋を構えたパークヒル君の元に、火星人が警告にやってきます。地球が核戦争の危機だ、と。しかしパークヒル君は、火星人はみんな敵だと思ってるから、打ち殺して逃げちゃう。そうしたら火星人が追いかけてきて、激しいデッドヒートの末、ついに捕まってしまいます。火星人は土地の権利書をパークヒル君にくれまして、大地主、サム・パークヒル君が爆誕するわけですね。その夜、地球は火の海に……」


    残響「大出世を遂げたパークヒル君が、柄にもなくポエムを詠むシーンが最高ですね。『懐かしき地球よ』と、サムは愛しげにささやいた。『懐かしき、素晴らしき地球よ。汝がひもじく飢えたる者を、我に送れ。何ものか、何ものか……あの詩はどう言ったっけ?』ってのがパークヒル君っぽいですが」


    fee「火星人は地球の危機を教えに来たはずなのに、結局は言わずに去っちゃっていますよね」


    残響「あまりにもパークヒル君がバカだから、伝える気もなくしちゃったんでしょうね……愚かだし、臆病だし……」


    fee「まぁなぁ……この手のタイプの人は、エネルギーはあるんですけどね。差別主義者で、知性が足りなくて、行動的で、でも気前が良くて仲間には親切だったり……」


    残響「悪人ではないけどDQNみたいな……」


    fee「まぁw なんだろ、でもこの手の人には好かれてしまえば結構優しくしてくれるので、たまに顔を合わせる分には嫌いじゃないですよ。いつもだと疲れちゃうけど」


    残響「サムにはホットドッグが合っている気がしますね。こういう人が作ったホットドッグって、なんだか妙においしそうで」
     

    fee「いいなぁ。サムのホットドッグ食べたい!」


    残響「サムの奥さんのエルマはしっかりしていますよね。火星人相手にもサムほど動じていないし、地球が燃え尽きるのを見てガックリ来るサムを励ましていますし」


    fee「励まして……はいないんじゃないでしょうか?」


    残響「てきぱきと濡れタオルを腕にかけて、『もっと明かりをつけて、音楽をかけて、ドアを開きましょう』とサムの尻を叩いて活気づけていませんか?」


    fee「いやいやいや、これはエルマの皮肉ですよ」


    残響「あー、そう読みますか……いやでも確かに皮肉だと言われればそうも……」


    fee「まず、『ここ何日かのあいだで初めて、エルマの眼は輝いていた』んです。サムがホットドッグ屋を開業するという、この輝かしい準備期間に、エルマの眼は輝いていなかった。つまりホットドッグ屋を作るのには反対だったんですね。『(十万人の飢えたお客様が来るのは)原子戦争が起こらなかったらよ。原子爆弾は信用できないわ』と言っています。核戦争を予感しているわけです。でも、バカなパークヒルに言っても聞きっこないので黙っている」


    残響「はい」


    fee「で、最後になって急に活き活きしだすんですよw 『あと百万年もしたら、またお客がどっと来るわ。準備しとかなくちゃね』『ホットドッグ・スタンドに、なんて打ってつけの場所だこと』、この2つの台詞は完全にエルマの煽りですよ」


    残響「準備しとかなくちゃね(プークスクス)w って感じでエルマは草を生やしてるのかww」


    fee「そうですよ。今まで散々サム・パークヒルに我慢してきたのか、鬱憤晴らしで煽りまくり、草生やしまくりですよ。もし失意のパークヒルを元気づけたかったら、『地球に皆が帰ってしまう前に、最後にお客さんが来るかもしれないわ。たった1日かもしれないけど、精一杯営業しましょうよ!』とか、そんな感じになると思うんです」


    残響「なるほどなぁ、草を生やしまくるヒロインとはw」


    fee「今まで散々パークヒル君のわがままに振り回されてきたんでしょうし、仕方ないですね……」

     


    ★2036年11月「地球を見守る人たち」 植民者たちが一斉に地球へ帰還する


    fee「ついに核戦争が勃発し、皆が地球に帰り始めます」


    残響「はい」


    fee「……何か話すことはありますか? なんかこの辺りの話、全部『鞄店』で話しちゃったからなぁ……」


    残響「そうですねぇ。それにしても鞄店はボロ儲けでしたね!」


    fee「サム・パークヒルのホットドッグを食べてから地球に帰る人はいないのかな……」


    残響「w 意外と美味しかったりして」


    fee「『貯蔵原爆ノ不時ノ爆発ニヨリ濠大陸ハ粉砕サレリ。ロサンゼルス、ロンドンハ爆撃ヲ受ク。戦争勃発ス』

     

    とありますけど、オーストラリアって原爆持ってませんよね?」


    残響「……ですね。まぁきっとこの世界では持っていたんでしょうw」


    fee「せっかく31年追加したって、このありさまじゃなぁ……ロンドンとロサンゼルスが爆撃されたみたいですが、相手は誰なのかしら」


    残響「第三次世界大戦じゃー……っていっても、描写がないのでござった……」


    fee「この辺はなんかセカイ系っぽいですよね。どことどこが戦争してるんだかわからないけど、とりあえず戦争してる。さて、次行きますか」

     


    ★2036年12月『沈黙の町』 人のいなくなった火星。取り残された地球人は……


    fee「主人公はウォルターさん。山奥に住んでいた情報弱者のウォルターさんは、みんなが地球に帰っちゃったのに気づかずに、取り残されてしまったんですね。寂しくて色々と電話をかけたりしていると、なんとジェヌヴィエーヴという女性に繋がります。期待に胸を膨らませて会いに行くと、これがとんでもない女で、逃げてしまい……『そして、長い年月をおいて、ごくときたま、電話が鳴るが、ウォルターは、けっして返事に出たことがない』


    残響「人のいない火星の描写が実に良いですね。ぼく、こういうの好きなんですよ。人がいない街。世界崩壊後みたいな、ディストピアみたいな」


    fee「僕もそういうのは好きですね。しかもウォルターさんはジェヌヴィエーヴに会いに行くために何百キロも車を飛ばしていますし。無人の道路を突っ走る、ロードムービー的な……」


    残響「最高ですね! 2017年秋から始まるアニメで『少女終末旅行』という作品があるんですが」


    fee「どれどれ。(ストーリーを見る)あー、『ほのぼのと生き抜く』のか。あまりほのぼのしない方が好みです」


    残響「もっとガチというか緊張感のあるやつですか?」


    fee「僕のお薦めは、ロジャー・ゼラズニイの『地獄のハイウェイ』ですね。ゼラズニイ作品は苦手なんですが、この作品だけは好きなんです」


    残響「ふむふむ(ストーリーを見る)。あ、こういうの結構好きそう。Amazonの欲しいものリストに入れとこ」


    fee「ありがとうございます。250ページぐらいなので読みやすいと思います。後はそうですね、『キノの旅』とか」


    残響「あぁ、なるほど」


    fee「もう少し疾走感があるとロードムービーっぽくなるんですが……。あと、『Planetarian』とか」


    残響「ありましたねぇ」


    fee「僕たちRPGも好きですからね。FF6の世界崩壊後とか、ワクワクするでしょ?」


    残響「この対談はなぜかFFの話が多いw」


    fee「ちょっと脱線が過ぎましたね。えと、なんだっけ。そうだ、残響さんがディストピア描写が良いと言っていたところでした」
     

    残響「ですです。それと同時に、人がいなくなって、『火星年代記』という物語自体も終焉に向かっていくという、そういった寂しさも感じました」


    fee「なるほど……。確かにこの後は、ワイワイとたくさん人が出てくる話はありませんしねぇ。で、僕の感想なんですが……」


    残響「はい、お願いします」


    fee「これ、出会い系小説だなーって」


    残響「出会い系ですかww」


    fee「メル友とか文通でもいいですよ。相手の顔が見えない状態でメッセージを送り合って、それでいざ会おう、となった時の話です。男性は……女性もそうだと思うんですけど、相手に対してやっぱり『期待』しちゃうと思うんですよ。『美人』だったらいいな、みたいな。同時に『生理的に無理』なレベルの人が来たらどうしよう、という脅えもあると思いますが」


    残響「生理的に無理って……w」


    fee「一緒にいる時間をできるだけ減らしたい!レベルに嫌な人、ってことです。……僕だってこんな辛辣な事言いたくないですよ! でもジェヌヴィエーヴの話をこれからするんだから、しょうがないでしょ!」


    残響「まぁまぁww わかってますから大丈夫です」


    fee「こほん。とにかく、『期待』と『不安』入り混じる中、まぁたいていは超絶かわいいわけじゃないものの、『うん、まぁ割とかわいい』とか、『うーん、タイプじゃないな』と思いつつも、全力ダッシュで逃げたくなるほどの人にはなかなか会わないと思うんですよね」


    残響「そういうものですか」


    fee「いや、僕だってそんなに経験ないけどww で、ウォルター君は純朴だったのか、『期待』ばかり膨れ上がっちゃったんですな。火星で、ひょっとすると生き残りは自分とジェヌヴィエーヴしかいないかもしれない。となれば、高確率で一緒に住んだりとか、近くに住んだりする可能性もありますよね。やっぱり一人ぼっちは寂しいし」


    残響「ふむふむ」


    fee「もしジェヌヴィエーヴが美人だったら、ウォルター君に春がやってきたかもしれませんよ。『終末の世界をいちゃいちゃと生き抜くいちゃらぶディストピアが今、幕を開ける』かも」


    残響「なにそれ、最高じゃないですか!(早口)」


    fee「ウォルター君の描写はあまりないけど、恋人はいないですよね? そんなにモテモテでもないでしょう。そんなウォルター君が美女と結ばれるチャンスだったのに……何百キロも車を飛ばして会ってみたら……」


    残響「夢も希望もないww」


    fee「控えめに言っても最悪ですよね。ブスなだけじゃなくて……」


    残響「なんか汚いですよね」


    fee「チョコレートでべたべたの手で握手しようとしてきますし。食べるなとは言わないけど、手ぐらい拭いてほしいw」


    残響「性格だって……」


    fee「ジェヌヴィエーヴは空気が読めない。相手がドン引きしているのに婚礼衣装を持ってきたり」


    残響「ヤバいですよ。狙われてる感じがw」


    fee「人の名前をいっつも間違えるし、延々同じ映画見たりするしw

     

     『みんなが、あたいをいじめるからさ。だから、あたいは、いちんち中、香水をからだにふりかけても、なん万杯ビールを飲んでもかまわない、『おや、それはカロリーがありすぎますよ!』なんて言われないで、お菓子をどっさり食べられるところに、残ったのよ!』
     

    これもねぇ。ちょっとぶっちゃけすぎですよねw」


    残響「香水はさすがに勘弁してほしいなぁw」


    fee「欲張りすぎなんですよ。もしこれをやりたいなら、当然ウォルターの事も諦めなきゃいけない。ウォルターを手に入れたいなら、香水とビールとお菓子はほどほどに、ですよ」


    残響「でもジェヌヴィエーヴはきっと、『このままの自分を愛して』なんでしょうね」


    fee「少なくともこの時はそうですね。『きみはいくつだい?』に対する『あててごらんよ』のところも最高。『三十だな』と、ウォルターが言った。『あら、あたい、まだ二十七よ、失礼しちゃうわ!』ジェヌヴィエーヴは憤然と言った」。
    たいてい、外見年齢ってちょっと下めに言いません? 30に見えたら、『27歳ぐらいに見えますね!』みたいな。でも、下めに言っても30だとしたら、一体ウォルターにはジェヌヴィエーヴが何歳に見えたのかw」


    残響「ウォルターはもうこの時点で嫌気がさしていて、適当に本当の事を言ったのかもしれませんよ? こいつにお世辞言ってもしょうがないなと思って、『30に見えるな』って」


    fee「あー……そうかも。確かにそうかもしれないですね。となると、ジェヌヴィエーヴが27歳なのに35くらいに見えたという老け顔説は一蹴されちゃいますね」


    残響「まぁ一応3つ上には見えているわけですが」


    fee「3つ上ぐらいなら誤差範囲でしょw ちなみにウォルターはクラーク・ゲーブルに似てる、のかな? ほんとに?って感じもしますが」


    残響「クラーク・ゲーブル?」


    fee「昔の俳優さんですね。これです


    残響「おぉ、なるほど……」


    fee「ちょっと渋すぎる気もしますがw」


    残響「それで思ったんですけど、ブラッドベリはあまり人物の外見描写を書かないんですよね。でも、ジェヌヴィエーヴの描写はえらく気合が入っていて、10行も書いています。
     

    『女は、ふたの開いたクリーム・チョコレートの箱をかかえこんでいた。箱を抱いているその手は、ぶよぶよ肥って、色艶が悪かった。陽の光の中へ出てきたその顔は、まんまるく肥えていて、眼は、真っ白なパン粉を捏ねた中に突っこまれた、二個の大きな卵のようだった。脚は、樹の幹のように太くて、それを不格好に引きずって歩いていた。髪の毛は、判然としない茶褐色で、鳥の巣の御用を、何度もつとめさせられていたように見えた。唇らしいものが全然なく、その埋め合わせに、大きな、真っ赤に脂ぎった口が描かれていて、いま、その口が、うれしさにぱくりと開いたと思ったら、急に驚いたように、また閉じてしまった。眉毛は、余分な毛が抜かれて、細い、アンテナ線みたいな形にされていた』


    fee「もうね、何もかも酷いね……そんなジェヌヴィエーヴに言い寄られたら……」


    残響「そりゃ逃げますよw」


    fee「逃げるシーンも面白いですね。

     

    『ウォルター・グリッフ、もどってきてよお!』ジェヌヴィエーヴは、両腕をふりあげて、泣き声をあげた。『グリップだよ』と、ウォルターは訂正した。『グリップったら!』ジェヌヴィエーヴが叫んだ。
     

    ウォルターが名前を訂正させているのも面白いし、ジェヌヴィエーヴがようやくウォルターの言葉をちゃんと聞いて訂正しているのも面白いw」


    残響「この後、ジェヌヴィエーヴからの電話にウォルターが出る事はないんですね……」


    fee「ひょっとしたら、ジェヌヴィエーヴは改心して、すごい綺麗になって電話してきてるかもしれませんよ? でも電話に出なきゃそれもわからない……」


    残響「まぁ、ないと思いますよw」


    fee「電話に出ちゃうと、場所が分かっちゃいますからね。場所が分かったら、絶対会いにくるでしょ。それが怖いから出られないんですよ。もしこれが携帯電話なら出てちょっと話をするくらいしてあげても……と思うんですが。ジェヌヴィエーヴはきっと電話帳を何周も何周も、片っ端に上から下まで電話してるんでしょうね。健気だなあ」


    残響「うーん……」


    fee「ちなみにもし残響さんがウォルターの立場だったら、どうします? 電話して会いに行きますか?」


    残響「暇だったらいく感じですかね。ぼくなら、ジェヌヴィエーヴみたいに一人で好き放題やって楽しく暮らすかな……」


    fee「僕だったら……多分、寂しくて自殺しちゃうな……」


    残響「そこはぼくたちは全然違いますね。どちらが良いという話ではないけれど」


    fee「そうですね。だから、まぁジェヌヴィエーヴはヤバいと思いますが、僕はジェヌヴィエーヴに対して多少同情的なんですよ」
     

    残響「逆にぼくがジェヌヴィエーヴだったら、ウォルターのためにお菓子やビールを我慢したりはしませんね」


    fee「僕ならするなぁw いや、もちろんお菓子やビールが全部ダメ!とかだと嫌かもしれないけど、ほどほどにね。1日1回のお菓子、1日1〜2杯のビールを許してくれるならいいと思うんだけどなぁ。ところで、この後のネタバレになりますが、火星にはハザウェイさんもいたはずですよね。電話に出なかったのかな?」


    残響「そういえばそうですねw」


    fee「ハザウェイさんのように、ジェヌヴィエーヴにも火星人が来てくれれば良かったのになぁと思いました」

     

     

    第6回に続く……

    ブラッドベリ『火星年代記』読書会(4)

    • 2018.01.03 Wednesday
    • 12:28

    ★2034年 5月「荒野」 火星に行った男を追って、女もまた旅立つ

     

    fee「あらすじから行きます。主人公はジャニスとレオノーラという二人の女の子です。ジャニスには火星に行っているウィルという婚約者がいます。そのウィルが、ジャニスと一緒に住んでいた地球の家を、火星でそのまま再現しまして、その写真をジャニスに送ってきたんですね。で、それを受け取ったジャニスが、ホームシックと戦いながらも、『火星へ行くぞ!』という、出発前夜を描いたお話です」

     

    残響「出発前夜なんですよね。実際にはまだ行っていない」

     

    fee「地球にある家を、そのまま火星で再現して写真を送ってくるという発想が、ブラッドベリらしいなぁって」

     

    残響「あぁ、わかります」

     

    fee「こういうの好きですよね、ブラッドベリって。『第三探検隊』でもあったし、『第二のアッシャー邸』でもあったし、『太陽の黄金の林檎』にも『草地』がありましたし……」

     

    残響「めちゃくちゃ使いまくってますね、この【再現】系の設定w」

     

    fee「昔のものを残したい人なんですよ、ブラッドベリってw」

     

    残響「あぁ、なるほど」

     

    fee「多分、母校が統廃合とかになると悲しんじゃうタイプですよ。自分がいた部活が潰れちゃうと悲しいし、OBとしていつまでも後輩の顔を見に来るタイプかなと」

     

    残響「『次、行こ、次!』 ってタイプではないですよね」

     

    fee「そうですね、『次、行こ、次!』が読みたかったらハインラインを読みましょう。地球がダメになったから違う星に行くぞ! 違う星もダメになっても、まだ宇宙には無限の星々があるんだ! 完 みたいな」

     

    残響「またハインラインがやり玉にあげられてるw」

     

    fee「いやいやww 読んだ時に驚いただけですw そんなストーリーでいいんか!?っていうね。でも、そんなストーリーでいいんか!?って思っちゃうのが僕の立ち位置とか、ブラッドベリの感覚で、そうだー未知の世界が待ってるぞ!って胸をワクワクさせるのがハインライン的な感じではないでしょうか。冒険漫画的な」

     

    残響「なるほど」

     

    fee「『荒野』に話を戻します。出発前夜なんですが……レオノーラっていうのは何者なんですかね?」

     

    残響「ほんと、なんなんだろ。ジャニスの親友なんでしょうけど、よくわからないんですよね。……そこで出てきた仮説が」

     

    fee「3Pカップルなんじゃないかっていう。3Pカップルっていうか……シェアですよ。やっぱりいい男性は貴重だから、みんなでシェアしないとねって話で」

     

    残響「シェアですか」

     

    fee「シェアですけど、正室はジャニスです」

     

    残響「レオノーラは愛人というか、【サブポジションで満足している】女性なのかなって思ったんですよね」

     

    fee「サム・パークヒルを独占するよりもウィルを二人で分け合った方が、絶対お得ですしね」

     

    残響「まぁね……(沈黙の納得)」

     

    fee「ジャニスが相手ならいいんじゃないですか。友だちであるジャニスと二人で分け合って、二人で絞りつくせばですね、ウィルは他のところに浮気に行く元気もなくなってしまって、これでもうめでたしめでたしですね」

     

    残響「純愛系の路線なんだけど、ハーレムものというか萌えエロものというか……」

     

    fee「この話、純愛系なんですか? うーん……というか、レオノーラが3Pカップルなんていうのは僕らが勝手に言っている仮説ですしね。実際、レオノーラとジャニスが一緒に火星に行く理由が解らないので、作られた仮説にすぎません」

     

    残響「なんでジャニスと一緒に行くのか。【私も一緒に行くわ】という流れがどうもよくわかりません」

     

    fee「そう。レオノーラが火星に何をしに行くのかがわからない。レオノーラにも既に男がいて、その男から同じタイミングで手紙が来た〜みたいな設定があれば、僕だって3Pカップルなんてふざけた事を言わずに済むんですけど……」

     

    残響「エロゲの話になっちゃいますけど、従者系のヒロインならわかるんですけどね。ジャニスが主人で、レオノーラが従者的な……。ちょっと話は変わりますけど、『荒野』に出てくる男性原理、女性原理みたいなものが、ぼくはかなり苦手でした」

     

    fee「『私たちは女なんだから、女は後からついていくのよ!』みたいな台詞がありましたね」

     

    残響「そうそうそれそれ」

     

    fee「男女観が合わないんですね。まぁ古くさい昭和な考え方ではありますね」

     

    残響「私たちは子供を産む機械なのよ、までは行かないけど……あんまり好きな考え方じゃないです」

     

    fee「わかりますよ。わかりますけど……『荒野』はそこまでキツくないんじゃない?」

     

    残響「まあそこは、ぼくが過敏反応しているだけであって。仰る通り、フラットに見ればそんなにキツくないです」

     

    fee「実際のところ、開拓者なので。男が先に行って、ある程度環境を整えて女性を後から迎え入れる。以前も言いましたけど、この『火星年代記』自体が、コルテスのアステカ征服をモチーフにしていると思っています。そう考えると、ある程度しょうがないんじゃないかなと。僕もあまり、男が〜女が〜という考え方は好きではないですけどね」

     

    残響「なるほど。『わたしたちの子供は、アメリカ人でも、地球人でもないのね。わたしたちは、これからあと死ぬまで火星人になるのね』という台詞も、なんかぼくからしたら、陵辱系エロゲの『嫌ッ! 嫌ぁっ!! あなたの子供なんて産みたくないぃぃぃ!』みたいな……」

     

    fee「いやいやいやww代々続いている肉屋に嫁ぐので、『私に子供ができたら、子供も肉屋になるのかしら』くらいの発想でしょ。あるいは、残響さんに彼女がいるとしてですね。彼女がアメリカで働いていて、『残響さんもこっちに来て暮らしましょうよ』的なですね。で、残響さんがアメリカに行って子供ができたら、子供もアメリカ人になるでしょ?」

     

    残響「あーなるほどなるほど。そういうふうに考えるのが普通か……どうも蟲に陵辱されるヒロイン(嫌ぁっ! 蟲の卵なんて、子供なんてぇっ!)みたいなものを連想してしまって……」

     

    fee「ウィルは一体何者なんですかww そんなに嫌なら行かなきゃいいんですw」

     

    残響「作品全体を通して、浮ついた女の子っぽさと、ドロッとした女性観みたいなものが矛盾なく共存しているような。悪い意味でキャーキャー言ってるのがジャニスで、飄々としているのがレオノーラで」

     

    fee「P234、2行目 ジャニス『わたし、このままではオールドミスになってしまう』 レオノーラ『それがいやなら、予定通り行動することね』」

     

    残響「ジャニスがあぁでもないこうでもないって騒いでいるのを見て、ひそかに楽しんでいるレオノーラという百合妄想……」

     

    fee「まぁとにかく、レオノーラの方が落ち着いている、と。人称の問題ですが、心理描写があるのはジャニスだけなんですよ。レオノーラが何を考えているかは、よくわからない」

     

    残響「そうなんですよね」

     

    fee「そういうこともあって、レオノーラがクール系に見える、と。クールな姉さんで、愛人でもOKと。レオノーラの方が、ジャニスよりも色々と計算高そうな感じはありますね。
    P230、14行目『ウィルって』と、レオノーラはうなずきながら言った。『しっかりした人ね』。
    この台詞を見ると、3Pとか愛人っていうほど、ウィルとレオノーラの関係は近くない気がしました。……3P恋人説は無理があるか……」

     

    残響「もう一つ説があるとすれば、ジャニスとレオノーラは娼婦なんじゃないかっていう……」

     

    fee「ん? レオノーラは娼婦かもしれないが……」

     

    残響「ジャニスもです」

     

    fee「ジャニスも??」

     

    残響「ジャニスとウィルが割といい仲になっちゃって、レオノーラもついでだからついていくみたいな」

     

    fee「仮に娼婦だったとしても、ジャニスはウィルと結婚して娼婦引退でしょ? 娼婦……娼婦にもいろんなタイプがいるけど……娼婦でこんなに無邪気なのかなぁ、ジャニスちゃん……」

     

    残響「だからこそ無邪気だという説……の可能性もあるんですよ、個人的には」

     

    fee「……うーん。……レオノーラは本当に謎ですよね。結局レオノーラの謎は解けないですね」

     

    残響「解けませんね……こんなに謎な人物だとは思わなかった」

     

    fee「家の写真が届いているけど、レオノーラが一緒に住むって話は特にないみたいだし、レオノーラは火星に行った後どうするのかな。火星にわざわざ行って、ホームレスになるのか?っていう。ジャニスの家は新婚でしょ? 新婚の家にお邪魔するのもちょっと気が引けますしねぇ」

     

    残響「そういえば、ジャニスとレオノーラって距離が近すぎるんですよね」

     

    fee「近いよねぇ」

     

    残響「ラストシーンで、同じ部屋でベッドに寝て、寝るまでずっと、これからの不安の事を語ってるんです。友人というには近すぎて、ほとんど姉妹的な」

     

    fee「ちなみにこれ、別々のベッドに入ってるんですよね? 一応P237 9行目『ジャニスはベッドのなかに一人横たわっていた』とあるし。まぁ同じベッドに入っているけど、一人で横たわっている気分になる事もありますけども」

     

    残響「あっそうか。まぁそこは読み方次第ですけど……」

     

    fee「喋っていても、レオノーラの謎は解けそうにない……次に行きますか」

     

     

    ★2035―2036年 名前をつける  地球風の地名がつけられる

     

    残響「短い話ですけど結構面白いですね。地名の設定集みたいな、こういう感じはいい。スペンダー丘がありますよ!」

     

    fee「ヒンクストン・クリーク、ラスティグ・コーナー、ブラック河……亡くなった人ばっかりだな……。あれ、でもドリスコルの森がありますよ? ドリスコルは死んだんですか?」

     

    残響「2032年『緑の丘』で植林してた人ですよね? え、死んだの? 潰えたの?」

     

    fee「生きながら伝説になったのかもしれませんね……」

     

    残響「おっ、格好良い……イカす……お前が、お前こそがドリスコル!」

     

    fee「サム・パークヒルやビグズの名前がついていないんですが……」

     

    残響「彼らは英雄ですからもっと大事なところにつけられたんですよ。ビグズ市とか、サム・パークヒル州とか……。ラストは『第二のアッシャー邸』に続くような感じで終わっていますね」

     

    fee「自治厨みたいな人が来ちゃったんですな……」

     

    残響「自治厨って単語を久々に聞きましたw なつかしい……。今も使われるんだろうか」

     

     

    ★2036年4月「第二のアッシャー邸」 火星にも禁書取締官が到来

     

    fee「エドガー・アラン・ポーの『アッシャー邸の崩壊のオマージュだと思うんですが……」(青空文庫に本文があります)

     

    残響「残念ながら読んでないです。そのせいか、よくわからなかったんですよね。何が書いてあるのか」

     

    fee「スタンダールさんという資産家が、自治厨を虐殺する話ですよね。この世界では2006年に焚書が行なわれたらしく、ほとんどのフィクションが消え去ってしまったようです。ラヴクラフトもホーソーンもアンブローズ・ビアースも。アリスもジャックと豆の木も眠れる美女も。で、ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』ばかり作ってるw」

     

    残響「『美しい文学上の嘘』や、空想の飛躍がある作品は全部焼かれたみたいですね」

     

    fee「田山花袋の『蒲団』なら焼かれずに済みそうw 太宰治の『人間失格』とか、日本の純文学は結構生き残れるのでは?」

     

    残響「『蒲団』ww 太宰は【美しい文学上の嘘】があるからダメかもですねw」

     

    fee「『火星年代記』と『華氏451度』って、ひょっとして同じ世界なのかな……」

     

    残響「どうなんでしょう。でも、『火星年代記』自体がいろんな短編の寄せ集め感があるから……*1」

     

    fee「それもそうですねw で、ですね。スタンダールさんは、お化け屋敷みたいな家を火星に建てたんです。すると、それを取り締まるギャレットさんがやってくる。ギャレットさんを『アッシャー邸の崩壊』になぞらえて殺し、そのまま『アッシャー邸の崩壊』どおりに家を崩していくわけですね。僕も『アッシャー邸の崩壊』は読んでいないのでよくわかりませんが……」

     

    残響「焚書に対する抗議とか、そういう感じなんでしょうか?」

     

    fee「そういう側面はもちろんあるでしょうね。まぁ、作品どおりの家を作って、【道徳風潮調査官】を殺して、作品どおりに家を壊すって、ものすごい道楽だなぁとは思いますがw」

     

    残響「あぁ〜、これってスタンダールさんが大暴れするお話、というふうに読んだ方がいいのかな?」

     

    fee「そういう側面ももちろんありますよ。『太陽と黄金の林檎』読書会で話した『人殺し』みたいな。スタンダールさんは中二病患者ですから。『さあ、言うんですよ。言いなさい、神の御名にかけてモントレソー』」

     

    残響「www」

     

    fee「ロボットが本物と入れ替わる、という発想は、『刺青の男』という短編集にも出てきます。ところで、ギャレットさん以外にもたくさんの人が殺されていますが、これは……あぁ、空想防止協会の会員、ハロウィンとガイ・フォークス追放の張本人たち……か」

     

    残響「ですね」

     

    fee「ギブス嬢、ポープ嬢、チャーチル嬢……嬢ですか? 焚書が行なわれたのって30年前でしょ? 一体この人たちは何歳なんですか?」

     

    残響「その辺は訳のテクニカルな問題なのかなぁ」

     

    fee「嬢っていうから、てっきり20代くらいなのかと思いましたけど、20代だと焚書の時に生まれてもいないですよ。30年前に焚書側のメンバーだったとするなら、50代とか60代でもおかしくないような?

     

    『こわいわ!』ポープ嬢は啜り泣いた

     

    ……うーん、やっぱり若い子の描写にしか思えないけど……」

     

    残響「あまり考えてもしょうがないようなw キャラ立ちしてるわけでもないですし」

     

    fee「夫人とか書いてあればまだ納得できたんですが……。焚書の発端についても触れておきます。

     

    『かれらは、まず、漫画の本の統制から始めた。それから探偵小説の統制、もちろん映画におよんだ』 

     

    一度何かを規制し始めると、際限がなくなる。そういう恐れは確かにありますね」

     

    残響「エロゲを規制したがる人たちがいますが、現代日本もエロゲの規制を発端として大規模な焚書に」

     

    fee「そういう流れになる可能性はあるでしょうね。明確な線引きがなく、ただ単純に嫌悪感から規制をしたいだけだったりすると、そうなりかねません。ホラー小説が大好きだったスタンダールさんは、ホラー小説を規制した反対派を、元作品に見立てて殺していくわけですが……」

     

    残響「凄い人数を殺してますよね。暴れすぎですよ。戦国スタンダールさん大暴れ」

     

    fee「エロゲーマーの場合は、『エロゲを規制するザマス!』みたいな教育ママを、最終痴漢電車に乗せて痴漢するって話になるんですかね」

     

    残響「アッシャー邸にも大ザルが出てきますし、獣姦いけますよ!」

     

    fee「やられたの誰だっけ……」

     

    残響「ギャレット氏」

     

    fee「男かよ! 獣×男はちょっと……」

     

    *1 ジャンル論的な小話。この場合、スターシステムというよりは、シェアードワールドの可能性もあるかも。ブラッドベリ=ラヴクラフト御大の孫弟子、な系譜……といったら言い過ぎですが。

    (1)スターシステム……ある作者が作ったキャラを、設定や役柄を変えて他の作品でも使いまわすこと。藤子不二雄作品における「ラーメン大好き小池さん」みたいなキャラ。

    (2)シェアードワールド……ある作者が作った設定・舞台を、他の作品で舞台背景・裏設定的に使うこと。ひいては、オリジナルの作家の枠を超えて、様々な作家が己の作品の舞台・設定として使う(シェア)ことにより、「〇〇文化圏」みたいな作品群を形成する。例:ラヴクラフトの「クトゥルー神話体系」。(残響)

     


    ★2036年8月「年老いた人たち」  老人も到着

     

    fee「ついにご老人も到着。『乾し杏みたいな人たち、ミイラみたいな人たちが、とうとう火星へやってきたのである……』」

     

    残響「ひどいww  ブラッドベリは老人の事が嫌いなんだろうか……いや、ある意味好きだからこういう書き方をしているのかも……」

     

    fee「それぐらいしか語る事はないですねw」

     

     

    第5回に続く……

    ブラッドベリ『火星年代記』読書会(3)

    • 2017.09.30 Saturday
    • 22:31

    ★2033年8月『夜の邂逅』 地球人と火星人の時空を超えた邂逅

     

    fee「ある夜、主人公のトマスは火星人と出会います。そこで、まぁちょっとした話をして、お互い帰っていく。と、ストーリーとしてはこんな感じ、でいいのかな?」

     

    残響「そうですね。本当にそんな感じ。特に何が起こるわけでもない話。まさに【邂逅】。地味な作品ではありますが、二人とも評価が高いんですよね」

     

    fee「いいですよね、この作品。まず残響さんの感想からお願いしようかな?」

     

    残響「はい。まず、やっと【対話】が成立したな……って」

     

    fee「対話?」

     

    残響「ええ……今まで、地球人と火星人って全然話が通じていなかったじゃないですか。純然たるディスコミュニケーション。最たるものは、第二探検隊は狂ってる、っていうんで精神病院ですし……」

     

    fee「確かに……最後の火星人たるスペンダーも、サム・パークヒルと対話できませんでしたし……」

     

    残響「そんなわけで、『やっと、か』、と。この作品の二人はお互いがお互いの事を尊重していますよね。話がかみ合わなくても相手を否定しない。『意見一致しないという点で意見一致しましょう』というセリフもとても良いです」

     

    fee「対談企画をやりたいなと思った時に、その『意見一致しないという点で、意見一致できる』というのはとても大切だなと思っていました。もちろんお互いが意見を主張して、間違っていると思えば変えるというのは大事ですが、片方が自説を強硬に主張して、押し流す形で議論を誘導するのは避けたいなぁと。それでいて、何でも相手に合わせちゃうようじゃ、読み物として面白くないですし……と、横道にそれました。地球人と火星人がきちんとコミュニケーションを取れた、という話でしたね」

     

    残響「ネタバレになっちゃいますが、この後の『オフ・シーズン』のサム・パークヒル、伝説のスーパーナイスガイ(白目)なんてひっどいですからねぇ」

     

    fee「サムだからね。しょうがないね」

     

    残響「コップを差し出しても、相手に触れない、そういったシーンがありますよね。時空間が歪んでいるのかな。不思議なお話でした。feeさんの方はいかがですか?」

     

    fee「この作品を読みながら、ずっと『FF10』の事を考えていたんですよね。『FF10』はご存知ですか?」

     

    残響「未プレイです。ただ、*1 『ザナルカンドにて』という曲は聞いたことがありまして。作曲者の植松信夫が好きで、彼のアルバムや、他の人の同人アレンジCDとかで聞いてました。こういう物悲しい曲がテーマソングになるような作品なのかな、とは思いましたが」

     

     

     

     

     

    fee「短編ごとにイメージソングを当てはめて『火星年代記』を読んでいたんですが、まさに、この『夜の邂逅』のマイ・イメージソングは『ザナルカンドにて』でした。『FF10』についてざっと話しちゃいますが、ティーダという青年とユウナという少女のド直球の恋愛物語です。系統としては『タイタニック』とか『いま、会いにゆきます』とか、あの辺りの雰囲気ですね。ユウナという、真面目で大変な義務を負っている幸薄そうな少女を、側で見守り、支える青年ティーダの物語。……『FF10』について喋っても大丈夫です?」

     

    残響「全然大丈夫です。ネタバレを恐ろしいまでに気にしない人間なので」

     

    fee「『FF10』は、前の世代が果たせなかった事を受け継いでいくという意味で、完成度の高い王道ファンタジーにもなっているわけですが、そこは『夜の邂逅』と関係ないのでおくとして。
    ティーダという人間には実体がないんです。千年前に滅びたザナルカンドという街に暮らした、人々の想念。天才スポーツ選手で、イケメンで、ちょっとチャラく見えるけど根は真面目でいい奴。ザナルカンドに住んでいた人々が、ある種の理想とした青年なんです。
    実体を失ったティーダとユウナが、*2 お互いに触れられず、すり抜けてしまうシーンもありますし、何より既に滅びた街の住人との出会い、交流という点で『FF10』っぽい物語だなあ、と」

     

    残響「なるほどなぁ……」

     

    fee「ギャルゲやエロゲでもこういう心が洗われるような純愛モノがやりたいなぁ……って今は『FF10』の話をする場ではないんだった! 『夜の邂逅』に戻りましょう。
    ところで、一応確認しますけど、このストーリーは【四千年前に滅びた、過去の火星人】と、【現在、西暦2033年の主人公】が出会ったお話、という認識でいいんでしょうか?」

     

    残響「時空がねじれている感じですけど、そんな感じじゃないですか?」

     

    fee「ねじれている、というのがちょっとよくわからないですが……えーと、僕が言いたかったのはですね、この火星人は本当に【過去の存在】 なのか?という事です。この『火星年代記』の最終章である、『百万年ピクニック』の後。数千年後の火星人である可能性はないのか?というのを話してみたいなと」

     

    残響「未来……ですか? それは考えなかったなぁ……」

     

    fee「西暦2033年に【廃墟】があるのに、火星人はその廃墟からやって来た。逆に言うと、物的証拠はそれだけですよね?」

     

    残響「そうだと思います」

     

    fee「だとすると……廃墟は復興させれば良いわけじゃないですか。この後の未来で、再建されたのかもしれないですよね?」

     

    残響「あぁ……なるほど……」

     

    fee「ということを考えました。ちょっとこじつけかもしれませんが、未来から来た可能性もある、と考えると夢が広がるなぁと。

    後はそうですね。ひょっとして残響さんが仰った時空がねじれているというのは、あれですか? 【共通の場】がないというか、そういう事かしら? つまり、【2033年のトマスの世界】に、過去や未来から火星人がやってきたわけではない。同様に、【火星人の世界】に、トマスがタイムスリップしたわけでもない。お互いがお互いの時代に留まったまま、ただ相手と交信ができている。まるで時空間に一瞬、小さな穴が開いたみたいに」


    残響「そうです。【共通の場】。これは、物理的なフィールドを共有していない、という意味で、パラレル。思念(テレパシー)の交信は出来ているけども、お互いの物理世界が干渉しあっていない。直結してなく、パラレルになっている。物理的相互不干渉。空間位相がねじれてる。

    それともう一つ言いたいのが、この作品はトマスと火星人、2人だけだから成立するんですよね。どちらかが2人連れだったりするとダメで」

     

    fee「確かにそうですね。1対1だからこそ、の話ですよね」

     

    残響「P179、17行目

     

    『あなたのお祭りに行ってみたいな』
    『わたしも、あなたの新らしい町へ行って、そのロケットとやらを見たり、いろんな人からいろんな話を聞きたいですよ』
    『さようなら』と、トマスが言った。『おやすみなさい』

     

    この最後のやりとりも実に爽やかで、ハートウォーミングというかいい話だなぁと」

     

    fee「ロマンがありますよね。時空を超えて、全く違う時代の人と暖かな交流ができる。清涼剤のような、素敵なお話でしたね」

     

     

    *1 一番上が原曲です。オリジナルです! 真ん中のが残響さんが見つけてきたオーケストラバージョンです!(これに関しては、僕が貼ったんじゃないよ!)
    3番目のは、僕が結構気に入っているヴァイオニリスト石川さんの演奏です。というわけで3つも貼っちゃっていいんかな? まぁ「ザナルカンドにて」が名曲なのが悪いな!(意味不明;fee)

     

     

    *2 問題のシーンね! あ、ここから先はずっと名シーンだから、興味のある人はそのまま見てね!(FF10信者並感;fee)

     

     

     

    ★2033年10月「岸」  一般市民も火星へ

     

    fee「さて、いろんな人たちがやってきたという話ですが……この作品について語る事ってありますか?」

     

    残響「やってきたのはまーたアメリカ人なんですね」

     

    fee「そうですね。ただ今回は、P181、12行目『ヨーロッパや、アジアや、南アメリカや、オーストラリアや、島の人々たちは、ローマ花火の打ち上げをただ見守っていた』とあります。前回は、アメリカの事しか書かれてなかったけど、今回は他の国にも言及されていますよ」

     

    残響「日本はないんだw」

     

    fee「まぁ、アジアがあるからいいじゃないですかw ……アフリカがないぞ??」

     

    残響「……んんっ?」

     

    fee「中米もない……」

     

    残響「島の人々扱い(オセアニアとか、インドネシアとかそのあたりの住人)なんですかねぇ……」

     

    fee「いや、待って。P182、1行目『ほかの世界は、戦争や、戦争準備に忙しかった』って文章がありますよ。ネタバレになりますが、このあと核で地球が滅亡するんです。……アフリカと中米で起こった戦争で地球が崩壊したんですかね?」

     

    残響「ヨーロッパとかアメリカじゃないんだw あとロシアとかでも。なんか大きな戦争と言えば大体ここらへんだと思うのにw」

     

    fee「あと中国とねw アフリカ……アフリカねぇ。核なんて持ってるのかな。割と原始的な武器を使っていそうなイメージなんだけど……」

     

    残響「死の商人(武器商人)が近代兵器を横流ししているので、そんなこともないと思いますよ」

     

    fee「核も横流しされたんだな、きっと……今話題の北の国が横流ししたとか……?」

     

    残響「1ページの作品なのに、なんだか随分語りましたねw」



    ★2033年11月「火の玉」  火星に宣教師が到着 第二の火星人(火の玉)との遭遇

     

    fee「さて、『火の玉』です。これは旧版の『火星年代記』には入っていなかった作品なんですが、リメイクにあたって加えられましたけど……」

     

    残響「けど?」

     

    fee「僕、このタイプの作品は基本的に嫌いなんだよなぁ……正直に言ってつまらなかったです。この手の、説教くさいキリスト教的作品、海外の作品を読んでいると結構出くわすんですけど、全然興味が持てません……こないだ読んでた『ロストシンボル』もラスト50ページまでは面白かったのに、最後突然こちらの方向になってあくびが出ましたし、『アルプスの少女ハイジ』の小説版も……(以下2分ほど喋り続ける)」

     

    残響「『説教臭いキリスト教作品』……そんなに嫌いなのかww フルボッコですなぁ……」

     

    fee「あらすじを言いますね。ペレグリン神父たち3人が、火星に宣教をしに行くお話です。そこで、蒼い火の玉みたいな火星人に出会うんですね。神父はその火の玉に宣教しようとするんですが、火の玉は『私たちの事は気にせずに〜』と言っていなくなってしまいます。ストーン神父はその火の玉こそが、神であると悟る……そんなお話……ですよね?」

     

    残響「ですね。火星の世界には火星の世界なりの、新しい罪がある、と意気込んでますが……」

     

    fee「率直に言って、どうだってええやん、という感想しか湧いてきませんでした。なんでよそものが乗り込んできて、自分の道徳観を他人に押し付けようとするんだろ。やだやだ……」

     

    残響「……ところで、ナイーブな質問になるかもしれませんが、feeさんはキリスト教自体が嫌いなんですか?」

     

    fee「それはないです。ただ、宗教にあまり縁がない人間なもので(神社で神頼みしたり、おみくじひいたり、お地蔵さんに手を合わせたりするけど、宗教には入っていないフツーの日本人です)。このペレグリン神父のような狂信的な宣教者は気持ち悪いなと思いますが……」

     

    残響「まぁ宣教師なんてこんなもんですよ。割と一般的な宣教師像じゃないでしょうか」

     

    fee「イスラム過激派だって受け付けないし、特にキリスト教を嫌っているわけではないです。ただ、中世ヨーロッパの宣教師って、侵略とセットじゃないですか。十字軍もしかりですが、それこそコルテスとか……」

     

    残響「『宣教』と『侵略』の歴史を考えると、フロンティア精神溢れる人なんてこんなもんじゃないでしょうか。嫌いですが。自分、【宗教の布教】ってのが大嫌い」

     

    fee「アステカの人はアステカの人で、火星人は火星人でキリスト教なんて知らなくても楽しくやっていたわけだし……。地球からの入植者に対して、地球人向けの教会を作るというのはわかりますが……」

     

    残響「元々はそのために来たんですよね。ペレグリン神父の好奇心というか、お節介心というか……*1アニミズム的な考えを持った人だったんでしょうなぁ」

     

    fee「ところで、この作品に出てくる火星人は、今まで出てきた火星人とは雰囲気が違いますよね。火星人は2種族いたんでしょうか? それとも、今までにも登場していた火星人が、悟りを開いて解脱か何かをすると、*2青い火の玉になるんでしょうか?」

     

    残響「ちょっとその辺はよくわからないですねぇ。まぁ、ぼくも無宗教的なところはかなりありますが、feeさんよりはこのお話を楽しめたかと。神学論争的なものに興味がないわけではないので……それが良いのか悪いのかはわかりませんが。ただ、神学論争と信仰心っていうのもまた別かと思います」

     

    fee「『火星年代記』の収録作品の中では一番つまんなかったです」

     

    残響「そんなにかーいw」

     

    *1 アニミズム……この世にあるいろんなモノに神が宿っている、という原始的宗教性。信仰心。(残響)


    *2 青い火の玉、と言われて僕が思い浮かべたのは、ドラゴンクエストシリーズでおなじみの「さまようたましい」だった。残響さんが挙げた「ウィルオーウィスプ」の方が多分、作中イメージにはより近いはず(fee)

     


    ★2034年2月「とかくするうちに」 火星にアメリカ風の町が出現

     

    残響「すげえどうでもいいことを言えば、この作品世界、2034年なのに小説家がタイプライターを使ってる……」

     

    fee「リメイクした時にどうして直さなかったんや……ところで、アイオワ州の町、という表現が出てきますが、アイオワ州というのはアメリカのどこにでもありそうな町のイメージなんでしょうか?」

     

    残響「結構田舎だと思います。ニューヨーク……アメリカ北部の都市圏ではない、アメリカの田舎町のイメージでいいんじゃないでしょうか」

     

     

    ★2034年9月「音楽家たち」 火星人の痕跡を焼却

     

    残響「火星人の骨とか死体で遊んでた無邪気(?)な子供が、折檻されるお話ですね。子供だから仕方ないとは思いますが、こういう作品を読むと、やっぱり地球は侵略側なんだなぁと。サム・パークヒルも似たような事をしていましたけど……」

     

    fee「サム・パークヒルは少年の心を忘れないナイスガイですからね」

     

    残響「ナイスガイではないでしょw」

     

    fee「哀れ子供は母親からも父親からも虐待されて……」

     

    残響「母親がやってるのは恐ろしく熱いお湯に少年たちを入れているだけじゃないですか?」

     

    fee「それって虐待みたいなものでしょ?」

     

    残響「そうだけど、ひょっとすると熱湯殺菌かもしれませんよ? ちょっと荒っぽいですけど。なんかそのあたり、昔の開拓時代を描いてる小説世界のような荒っぽさ。それをブラッドベリのノスタルジー作風といってもいいのかもだけど」

     

    fee「あー、死体を触った後だし、そうかもですね」

     

     

     

    第4回に続く……
     

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