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    千夜一夜エロゲ対談 第一夜

    • 2016.06.18 Saturday
    • 21:44

    第一記事目ではこんな内容を喋りました

     

    ・ 本文に入る前に

    ・ジャンルの定義について

    ・『こみっくパーティー』はシナリオゲー!?

    ・こんなにも違う『さくらむすび』の捉え方


    注意:本記事には本文中に『さくらむすび』のネタバレがあります。

     

    残響が話した部分、書いた部分は青色で、
    feeが話した部分、書いた部分は赤色になっております。


    対談者紹介

    fee書評・サッカー評・エロゲレビューブログ「止まり木に羽根を休めて」管理人。エロゲー批評空間でも、同名でレビューを投稿している。Twitterアカウントは@fee1109
    日々、海外小説(最近は古典ミステリが主)や、海外サッカーの精緻な読み解きを行いながら、シリアスでストーリー性・ドラマ性の豊かなエロゲを好んでプレイする「シナリオゲーマー」である。この三本の矢がどう結びついているか……とくにエロゲレビューにどう結びついているか、ということの分析は、簡単に出来るものではないです。無理に結びつけようとしてもねぇ。人間ってそんな簡単なもんじゃないし。
    ただひとつ仮説を述べるとしたら、feeさんのシナリオゲーレビューにおいて、「錯綜するプロットであったとしても、その根幹の魅力をレビューでひとつの筋に沿ってわかりやすく表す」ことの上手さは、海外小説読み、サッカー観戦で培われたものなのかな、という仮説。
    それだけに、読み応えのあるシナリオゲーに対しては、feeさんの読解力が十分に活かされるのだけど、ひょっとしたら「プロットの錯綜も読解もなにもネエよ」という生粋のイチャラブゲーに対しては、feeさんの読解力は機能不全を起こすのではないか、という、これも仮説。しかし、最近、SMEE「ラブラブル」をプレイされているから、のっけからイチャラブゲーをヘイトする立場ではない。
    もっとも嫌うものは「安易な決め付け」。
    お互い、twitterではフォローしあう関係。残響のほうは、ブログで「エロゲーマー諸子百家」なる企画をしたときに、16番目にfeeさんを取り上げさせていただいた。また、feeさんのほうも、「止まり木に羽根を休めて」で、残響に言及していただいたこともある
    シナリオゲーマーとしての、イチャラブゲーマーに対する率直な疑問、からこの対談ははじまるのであった……(残響)
     

    残響百合熱弁でお馴染みのエロゲーマーであり、イチャラブゲー愛好者。twitterアカウントは@modernclothes24 ブログ「残響の足りない部屋」管理人。音楽や模型、創作など幅広く活動なさっている。イチャラブの人、と書いたが、氏のプレイ履歴を見るに「鬼哭街」や「信天翁航海録」(feeは未プレイですが)などに高得点をつけているように、決してシナリオゲーの素養のない方ではない。
    氏のブログ記事「諸子百家」に代表されるように、様々に癖のあるエロゲレビュアー多数と仲良く付き合える適応力、懐の深さを、器の小さな僕は常々尊敬している。
    本対談も、ナチュラルにイチャラブゲーを批判したりしているfeeの行儀の悪さを、嫌な顔せず受け止める残響さんの包容力に助けられた部分が大きい。
    (fee)

     

    本文に入る前に

    2016年3月某日、シナリオゲーを主に好むfeeとイチャラブゲーを主に好む残響が、エロゲ(ノベルゲー)対談を決行しました。本ブログ・本記事は対談の模様を録音し、なんと4時間20分にも及ぶテープ起こしを元に書かれたものです。
    時に意見を異にしながらも、和やかに推移したこの対談をお読みの方に、両者の熱が、その場に居合わせたかのような臨場感が伝われば幸いです。
     
    「シナリオゲー好き」のfeeと「イチャラブゲー好き」の残響という立ち位置でスタートした本対談。しかし、そもそも対談を始めるにあたり、「シナリオゲー」とはなんだろうか、「イチャラブゲー」とはなんだろうかというところから考えなければなりません。
    そして、それ以前に大前提として「エロゲ―」とは何か、を語るところから対談はスタートしました。
    ……のです
    が、RPGやSLG、シューティングとノベルゲーの違いなどを巡り、*1議論は進まずw
    ハッキリとした結論が出なかった上に、今回語りたい「シナリオゲー」と「イチャラブゲー」の内容とはズレてしまったため、今回の対談記事ではカットしました。

     

     


    *1 ↓カットした対話の一部
     

    fee「ランスはRPGでしょ?」

    残響「でもRPGとはいっても、ストーリーが進むシーンでは紙芝居(ノベルゲー仕立て)になるじゃないですか」

    fee「そこはそうなんですよねw それにRPGと言っても、読み物としての面白さを期待してプレイする人とかいますからね……僕とか」

    残響「物語を進める際にテキストを主に使うかどうか、とか……」

    fee「その辺で妥協するしかないかなぁ……深入りすると難しい……同人RPGで、RPGツクールで作ってるんですけど、ほとんど戦闘がなくてずっと読み物として進んでいくものとかもあるし……」

    残響「難しいですねw」
     

     

     
    結局議論が進まないため、便宜上「読み物(ノベルゲー)」と「非ノベルゲー(アクション、RPG、SLG、パズルなど)」に強引に分類する事に。

    「読み物(ノベルゲー)」に対する対談が本格的にスタートするところから、ガッツリと記事にいたしました。
    どうぞ皆さま、心ゆくまでご堪能ください。

    それではこれより、本文スタートです!(fee)

     

    ジャンルの定義について


    fee「読み物から次に派生するのが、僕の感覚では【抜きゲー】と、【非抜きゲー】。ただし、またがることはある」

    残響「そっすね。またがることはある」

    fee「ここでひょっとすると僕以外の人は、【抜きゲー】と【シナリオゲー】と【イチャラブゲー】に分けているのかどうかっていう」

    残響「うっ、それはちょっと……難しいところですね」

    fee「僕は分けていないんですよ」

    残響「この段階では【イチャラブゲー】というよりは【萌えゲー】というかも。というかぼくの定義では、【萌えゲー】を先鋭化させたような」

    fee「ちょっと待って……【萌えゲー】と【イチャラブゲー】ってイコールじゃないんだ(笑)」

    残響「あの、ミステリというジャンルの中で、【*1本格】があるじゃないすか。そういう捉え方に似てるというか。先鋭化する上で過激になるというか。過激になる過程で、失われるものもあるじゃないすか」

    fee「その辺も聞きたいんですが、どういう方向で話を持っていこうかな」

    fee「イチャラブゲーというのは、萌えゲーの中の一ジャンルなんですか?」

    残響「たとえるならコース料理があって。順番を追っていくうちに、前菜からデザートまである。そのなかで、デザートだけ食べたい!みたいな。あるいは洋菓子店に通いつめたい!」

    fee「はいはいはい」

    残響「コース料理が普通のエロゲだとしたら……仮にシナリオゲーの起承転結をコース料理にたとえると、どこかにイチャラブが入る。普通イチャラブはデザートとして捉えられますけど。その中で、デザートの部分に注目する事で、イチャラブゲーという形に特化する」


    *1本格……作者が問題(事件)を用意し読者が正解(犯人、トリックなど)を当てる作品群で、海外では1920〜40年代頃に黄金期を迎えた。日本では「本格推理」とも呼ばれ、「ミステリ」=「本格」をイメージする方も多いと思うが、現代の欧米ではどちらかと言うと傍流の印象。(fee)
     

    残響「萌えゲーをやっていて、最終的に少しだけシリアスに振り切れる方向というか、もしくは完全にイチャイチャに終始するゲームと言うか。萌えゲーって【形式】だと思うんですよね」

    fee「残響さんが仰っているのは【イチャラブゲー】の話ですよね? 【萌えゲー】とは違うんですか?」

    fee「【シナリオゲー】と、残響さんの仰る【イチャラブゲー】の違いは解るんですけど、【萌えゲー】と【イチャラブゲー】の区別がついていません。というか、同一視してる感じです。ついでに言うとキャラゲーっていうのも」

    残響「キャラゲーと萌えゲーとは、意味合いは同じだと思うんですけど」

    fee「萌えゲーという単語を聞かなくなったんですよ。僕の中の死語リストに入っていて。<昔は萌えゲーと呼ばれていたものが今はキャラゲーと呼ばれておるのだ>、みたいなイメージを持っています。で、僕が考える萌えゲーというのは、基本的にイチャイチャしているから、じゃあイチャラブゲーっていうのも同じじゃないのか? っていうところなんですけれども。その辺の区別があまりついていないですね」

    残響「ふと思いましたけど、【コメディ】と【ギャグ】って言葉があるじゃないすか。【萌えゲー】と【イチャラブゲー】はこの違いかもしれませんね。喜劇のなかでもいろんなものがあって、*1『Dr.スランプ』とか*2『つるピカハゲ丸』とか。そのなかでも、イチャラブゲーというのはとくにギャグに振り切ったものというか」

    fee「今、見ている*3ニコニコ大百科のページには、【コメディとギャグの違いは、ストーリーラインを重視しているか否か】と書いてありました。コメディはストーリーラインがあって、笑えるもの。ギャグにはストーリーラインがなくて、笑いに特化しているもの。これを先ほどの話に当てはめると、コメディが萌えゲーで、ギャグがイチャラブゲーという感じでいいんでしょうか……?」

    残響「そうですね。イチャラブゲーは物語性を薄くすればするほどいいというわけじゃないけど、そんなにシリアス性には重きを置いていないというか。主に萌えゲーをプレイしながらなんですけど、プレイ途中から【イチャラブゲーだ】って自分の中で認識していって、それなら、よし最後までイチャイチャを見せてくれ、最後まで堪能させてくれ、みたいな」

    fee「ふんふんふん……どうなんだろうなぁ。ここで僕がイチャラブゲーを叩き出すのも空気が悪くなりそうだし。話を少し戻しまして。エロゲは基本的には、最初の段階で【シナリオゲー】と【萌えゲー】と【抜きゲー】に分かれるんでしたっけ?」

    fee「ちなみに残響さんはどう分けているんですか?」

    残響「【シナリオゲー】と【萌えゲー】と【抜きゲー】に分けている。そう分けていいと思う」

    fee「僕の場合はまず最初の段階で、【抜きゲー】と【非抜きゲー】の二つに分けていまして。次に【非抜きゲー】から、【シナリオゲー】と【キャラゲー】の二つに分けます。もちろん重なる部分はあります」

    fee「で、ですね。すんごいざっくりいっちゃう上に、やな感じなんですけど。シナリオがあるゲームと、シナリオがないゲーム――シナリオって言いたくないな。シナリオゲーって連呼しておいてなんだけど、僕個人としてはあまりシナリオゲーって言いたくない。すごく便利なんで使っちゃうんですけども。シナリオってそもそもなんだって話で。イチャラブってなんだよって話にも深めていく予定なんですけど……」

    残響「まあそれをいっちゃえば、恋愛でイチャイチャしてないのが全くないのが珍しいし」

    fee「<シナリオってなんですか?>って言うと、完全に自分定義ですが……。僕が使うシナリオゲーという言葉と他の人が使うシナリオゲーという言葉は、意味が違うと思うんですよ。すんごい乱暴ですが、【僕がシナリオが良いと思ったゲーム】をfee定義ではシナリオゲーと言っておりますw」

    残響「世間一般でシナリオゲーといわれてるものでも、気に入らなければfeeさんにとってはシナリオゲーじゃないw」

    fee「そこなんですよね、難しいのは。自分からはシナリオゲーとは言わないんですけど、他の人から意見を求められたら、世間の意味に合わせてシナリオゲーの駄作と言うかもしれません」

    残響「なるほど」

    fee「僕は簡単に言っちゃえば、*4【エロくてかわいい女の子が出てくる面白い話】が読みたいなぁというのが、エロゲーをプレイする動機なんですね。この面白い話を、シナリオっていうわけなんですけど。もっと分解していくならば、ドラマだと思うんですね」

    残響「【ドラマ性】っていうことですか

    fee「ドラマ性、物語の起伏。刺激的かどうか。*5 刺激と安定。という軸が一つあって」

    fee「人によっては、恋愛ゲーと非恋愛ゲーに分けて、非恋愛ゲーをシナリオゲーと呼んでる人も結構いると思うんですよ。僕はその分け方は間違ってはいないと思うんですが、でもシナリオゲーだってよっぽどガチなやつじゃない限り、恋愛ぐらいはするじゃないですか」

    fee「イチャイチャだってしますよ。少しぐらいは……少しぐらいしますよ!w *6 これも絵空事ですが、本来的には【シナリオゲー】と【キャラゲー】を分ける意味は僕にはあんまりない」

    fee「抜きはまたちょっと違って、違うんだけど……でもそこも単に僕の頭が固いだけで、ひょっとするとここも分けなくてもいいのかもしれない。……そこは分ける必要があるかな?」

    残響「抜きゲーの場合、機能を先にしてるじゃないすか」

    fee「実用性ってことですよね?」

    残響「そっすね」

    fee「でも僕、シナリオゲーでだって抜きますよ」
     
    残響「でもそれは(抜き)機能を十分に満たしてるということであって。なにでたとえれば……」

    fee「極端な例を出せば、*7『Kanon』でも抜きましたよ」

    fee「その辺はゲームのエロシーンじゃなくて妄想で抜くんですけどね。自分で勝手に変なシチュエーションを妄想して抜くんですけど」


    fee「そういうことができるので、そりゃエロシーンの出来が良ければ嬉しいけど、別に出来が悪くてもキャラクターごとの性格がしっかりしていて、人間関係もしっかりしていれば妄想なんていくらでもできるので」


    *1  Drスランプ……1980年から1984年まで、『週刊少年ジャンプ」で連載されたコメディ漫画。鳥山明の初期作にして、初ヒット作。アラレちゃんを筆頭とした、呑気なキャラクター達が、「なんでもあり」のペンギン村、という箱庭世界を舞台にして、アホなことばかりを楽しそうに行う「コメディ」です。その後の「ドラゴンボール」よりも、メカニックマニア・ミリタリーマニア・模型マニアとしての鳥山のディープな趣味成分が出ていて、残響が子供のころ読んでて、ぼくはドラゴンボールよりこっちが好き。(残響)

     

    Drストップあばれちゃんでしたっけ(うろ覚え)(fee)
     
    *2 つるピカハゲ丸……1985年から1995年まで、「月刊コロコロコミック」に連載された、のむらしんぼの代表作。「貧乏!」と「ハゲ!」がメインテーマ。基本四コマ漫画で、その貧乏ぶり・ハゲぶりを拡大解釈し、ギャグに仕立てる作品。おそらく、今やったら、PTAどころか、ネット民から非難されそうな作品の筆頭かもしれない。ちなみに残響が2〜3才で初めて読んだ漫画。(残響)
     
    *3 ニコニコ大百科……たまたまグーグル検索で一番上に来たので(fee)

     

    *4  エロくてかわいい女の子……素敵なお姉さん、とかでも良いです。要は魅力的な女性キャラクターが登場してくる物語が読みたいということです。(fee)

     


    *5 刺激と安定……人間は、「適度な刺激」と「安定」、双方がないと生きていけないと思うんです。
    「刺激」を求めて、たとえば人は旅に出ます。でも、「刺激」に晒されていると、人は「安定」が欲しくなる。だから、人は「家」に帰る。でも、ずっと「家」にいるとまたうずうずしたくなってきて「旅」に出る。その繰り返しで人は生きているのだと思います。勿論、「旅」という形ではなくて、「新しい店」と「馴染みの店」など、ご自由に置き換えてください。
    エロゲで言うなら、「ワクワクしたりドキドキして楽しむパート」と「安心して楽しめるパート」(fee)

     

     

    *6 分ける意味はあんまりない……本文でも書いたように、僕は「エロくて魅力的な女性が出てくる、面白い話が読みたい」と思ってエロゲをプレイしています。これを少々乱暴に噛み砕いて言うならば、「シナリオが良くて、キャラも良いエロゲがやりたい」と言ってしまっても構いません。「シナリオだけ」「キャラだけ」のゲームではなく、「シナリオもキャラも良い(ついでにいっぱい抜ければなお良い)」『シナリオキャラゲー』こそ、僕がやりたいゲームなのです。

    さて、基本的に「シナリオが良い」ノベルゲームは、一部例外もありますが「たいていはキャラも良い」です。魅力的なキャラクターが出てくるからこそ、物語に引き込まれて面白みを感じる。物語が面白いからこそ、そこに登場するキャラクターにも魅力を感じる。「シナリオ」と「キャラ」は対立する要素ではなく、むしろお互いを高め合う車輪の両輪だと思っています。逆にシナリオが面白くなければ、そこに登場するキャラクターにも愛着は生まれにくいし、キャラクターが全然ダメならば、仮に衝撃的な事件などが起こっていたとしても、物語を面白く感じられない。

    「シナリオ」と「キャラ」は対立する要素ではないのだから、エロゲには「シナリオゲー」も「キャラゲー」もなく、「読みものとして面白い(しかもキャラが魅力的)ゲーム」か「読みものとしてつまらない(キャラの魅力も薄い)ゲーム」かしかないのではないか。僕に関する限りはそういうことになります。

     

    まぁ現実には「シナリオが目立つゲーム」「シナリオが目立たないゲーム」という違いは厳然としてありますので、結局プレイ前の段階で「これは多分シナリオが目立つゲームだな」「目立たないゲームだな」というふうに、分けることにはなるんですけれども……。

    「シリアス(しかダメ)ゲー」や「キャラ(しかダメ)ゲー」もありますしね……。

     

    また、「シリアスゲー」と「日常(あるいはコメディ)ゲー」という分け方もあります。

    「シナリオゲー」とか「キャラゲー」とかいう言葉を使うよりは、こちらの方が実相に近いような気はします。

    ただ、「シリアス重視ゲーにしたって、よほど硬派な作品を除けば、多少のコメディ、もしくは日常シーン」は入ります(Fateや君が望む永遠、Airにだってコメディシーン、日常シーンは普通にある)。

    バランスの配分はあるでしょうが、『シリアス』と『コメディ』もまた対立する要素ではなく、共存できる要素ですし、だとするなら「シリアスゲー」と「コメディゲー」に分ける必要もあまりないのではないか、と。

    これも現実には「シリアス成分9でコメディ成分1」のゲームと「コメディ成分9でシリアス成分1」のゲームでは、プレイ感覚は異なりますし、「シリアスシーンしかないゲーム」「コメディシーンしかないゲーム」というのもあるにはあるので、結局は分けることにはなるんですけれども。

     

    ……なんだかすんごく長い注になっちゃったゾ……いいのかな(fee)

     

    feeさんの論を逆の方向から考えてみれば、「優れたキャラ、優れたイチャラブは【最低限の良いシナリオ】が必要とされる」といえるかもしれません。この【最低限の良いシナリオ】とは、以降の対談で残響が提示する「プレイヤー感情に水を差さないシリアス」とほぼ同義ですので、以降の対談も参照していただきたく存じます。

    このあたりは、第三夜あたりでより深く対談していきますので、ご期待ください。

     

    また、feeさんの「シリアスゲー」と「コメディゲー」に分ける必要があるのか、ということですが、これは「あらかじめ決める」というよりは、プレイ感覚の現実に即して、「遡って(遡及的に)決めるもの」と言ったほうが、より穏当かもしれません。どういうことかというと、feeさんの言葉を引き写しますが、ゲーム・物語をプレイしていて、「プレイ感覚は異なる」わけです。このプレイ感覚とはどこから来るか、は、結局のところ、そのゲーム・物語の「質」ではなくて、「量」といえると思います。もし我々の前に「このライターのギャグ、スベりまくってるな……」と思うようなギャグばっかりのゲームがあったら(いっぱいありますね)、やはりそれは「ギャグゲー、コメディゲー」と認識するのではないでしょうか。ギャグが成功/失敗しているか、よりも、ギャグが大量にあるか。いかにストーリーの本筋から離れて、本筋を侵食する勢いでギャグの「量」があるか。さらに言えば、ギャグの質的問題は、主観によって決められますが、量的問題は、質的問題に比べれば、まだ客観的に計数・計測が出来る。こういうところから、遡って「シリアスゲー」か「コメディゲー」か、というふうに決定はなされるのではないか、というのがぼくの考えです。

     

    ……まあ、「シリアスが目立つゲーム」「シリアスが目立たないゲーム」の判別は……「やればわかるさ! Just do it!」と言う他ないんでしょうなぁ……ひどいオチ。(残響)


    *7 Kanon……1999年にKeyが発表した「泣きゲー」の金字塔。Leafの「To Heart」とともに、多くの人間を「オタク」の冥府魔道に引きずり込んだ作品。痛いほど透明な世界観に、「死」を多分に持ち込んだ感動的なストーリー展開。キャラメイキングも相当のものがあり、また、音楽も最高。ゼロ年代初頭当時、鍵ゲー、とくにKanonの二次創作同人誌というのは、隆盛を極めておってな……(老人口調)。『AIR』が逆に二次創作に向いていない作品だったゆえに、Kanonが同人のネタになったということじゃ。(残響)


    *1『こみっくパーティー』はシナリオゲー!?


    fee「ノベルゲーは主に起伏のあるものとないもの……ないって言っちゃっていいのかな。どうなんでしょうか?」

    残響「起伏があればいい、というわけでもないですが……」


    fee「シナリオゲーというものを考える上において、一つにはシナリオを主でキャラを従にするか、シナリオを従でキャラを主にするかという考え方もできるんですけれども、それは一般的に使われているシナリオゲーとキャラゲーの関係ではないです。どっちが主でどっちが従かわからないゲームもいくらでもありますし」

    残響「主従については、実地でプレイしてれば感覚的にはわかるんじゃないですか。定義論でいうから境界線上の例が出てくるんであって」

    fee「どうかなぁ……『こみっくパーティー』はどうでしょう? 僕の定義では萌えゲー、キャラゲーなんですけれども。ただし、このゲームはキャラが主じゃなくて、シナリオが主だと思います」

    残響「ぼくはキャラゲーだと認識してますね。キャラが主でシナリオが従だと思っています」

    fee「多分ですけど、『こみっくパーティー』という作品は瑞樹ちゃんとか千紗ちゃんとか、そういうキャラを活き活きさせたくて作られたゲームじゃなくて、コミケというものが書きたいというのが先にあって、コミケで映えるキャラを配置しているんだと思います」

    残響「あーそういうことかー」

    fee「だからこれはシナリオが主ですよ。シナリオが良いかどうかは別として」

    fee「僕は『こみっくパーティー』はキャラゲーだと思っているけれども、シナリオが主かキャラが主かという考えで定義し直すなら、一般で使われているシナリオゲーやキャラゲーの感覚からはズレる。ズレることの例です。だって『こみっくパーティー』がシナリオゲーだって主張しても、たぶん多いのは<ハァ?>みたいな反応でしょう」

    残響「あーそうっすねーー」

    fee「*2 一般で使われているシナリオゲーやキャラゲーという言葉も、シナリオが主かキャラが主かで厳密に分けられたものではなくて、単にシナリオが目立つか目立たないか。そういうぼやっとした単語だと思うんですよね」


    *1 こみっくパーティー……1999年にLeaf東京開発室が発表した、「オタク」「同人誌」「即売会」を堂々とテーマに掲げた意欲作。当時人気絶頂だったF&Cから、みつみ美里、甘露樹、なかむらたけし、を引き抜き、ビジュアル面で当時もっともモダンで破壊力のあった原画を有し、その上で成り立つキャラメイキングは、どのキャラも強烈な個性を放つものであった。本文中で「キャラゲー?シナリオゲー?」の論争が起こっているのは、このあたりに由来する。なお、ビジュアルノベルでは「なく」、「同人誌作成ゲーム」を行いながら、女の子を攻略していくシステム。そして、残響の殿堂入りヒロイン、長谷部彩さん。無口で独特の感性を持った、黒髪のオリジナル創作作家(売れない)。この娘こそが、我が殿堂入りヒロインであり、わたし(残響)は学生時代、5年間毎日この子で妄想していた。脳内イチャラブしていた。マジで。(残響)

     

    一回原稿落としたぐらいでバッドエンドって……同人作家の道はかくも険しい(fee)

     

     

    *2 だから真面目に「シナリオゲーとはなにか」「キャラゲーとはなにか」なんてガチガチに考えても意味ないんだって。そもそも正解なんてないんだから。もっと気楽に「俺がシナリオが良いと思ったゲームがシナリオゲー」ぐらいの感じで良いんだよ! あ、こみパはシナリオは良くない(主観)から、シナリオゲーとは言いたくない。だからキャラゲーな!(fee)

     

    そんな身も蓋もない……w(残響)

     


    こんなにも違う*1『さくらむすび』の捉え方


    残響「シナリオが目立つか目立たないか、ですか……『さくらむすび』はどうなんでしょうかね」

    残響「『さくらむすび』からみる、シナリオゲーの定義というか、イチャラブゲーの定義というか」

    fee「『さくらむすび』はシナリオゲーでしょ。僕定義でもシナリオゲーです。『さくらむすび』は、Twitterで何度か書いたんですけど、ホラーだと思っています。萌えゲーではないです。*2 紅葉ルートが、唯一萌えゲーっぽいルートなんですが……なんだけども、多分『さくらむすび』は紅葉ルートが書きたくて作られたゲームではないと思います」

    fee「『さくらむすび』で描かれているのは世間の怖さ。世間では主人公と紅葉がくっつく事が望まれていて、その通りに仲良くなれば幸せな生活が送れるけれども……」

    fee「桜とか、可憐とか、世間でダメと言われている人を選んでしまうと、もう駆け落ちするとか、あるいは最悪*3桜BADルートのようにお亡くなりになっちゃう。しかもそれは、【主人公がダメな相手を選んだから悪い】、という話なんですよね。【紅葉ちゃんにしておけば良かったのに】、【紅葉ちゃんなら祝福したのに】。そういう*4 世間の怖さが凄く伝わる話だと僕は思っていて。紅葉ルートの、それこそイチャラブですか? 別にそれは否定はしないんですけど、『さくらむすび』を語る時に、紅葉ルートの話しかしなかったら<「違うだろう>と」

    残響「実をいうと、世の中には『*5「いちゃラブ」大全』というイチャラブのことだけ書いている本が、7〜8年前にありまして、そこでは紅葉ルートの話しかしてませんw

    fee「それは、まぁイチャラブの本なので……というのは解るんですが、僕としては<わかってねーな>と」

    fee「*6『魔法少女まどか☆マギカ』の1話と2話を見て、<すごく雰囲気の良い学園モノですね>って言ってるようなもんです」

    fee「確かにそこだけ見ればそうかもしれないし、そこが好きな人を否定はしませんが、そういう話じゃないだろうと。桜ルートや可憐ルートの怖さを浮き彫りにするため、落差を出すために用意されたのが紅葉ルートだと思うので」

    残響「すごい違いだ」

    fee「僕は*7トノイケさんではないので本当のところはわからないけれども、個人的にはかなり自信があります。一見雰囲気が良いけど、*8【桜の樹の下には屍体が埋まっている】というフレーズで考えるなら、紅葉ルートが【桜】で桜ルートや可憐ルートが【死体】で」

    fee「ちなみに残響さんから見て『さくらむすび』はイチャラブゲーなんですか?」

    残響「もちろんですよw

    fee「マジっすか、ごめんなさいもう(笑)

    残響「ぼくは逆に『さくらむすび』のおかげで、エロゲにはイチャラブゲーってものがあるんだ、こっちにいっていいんだ、と思えたほどでw 紅葉ルートの瞬間風速でイチャラブ点を稼いでる面はありますな」

    fee「マジっすか。僕は紅葉ルートは眠かったなぁ。この辺が好みの違いなんですけれども」

    残響「いやぁ凄い違いだw まぁ眠いというのは否定できない。そっすね」

    fee「というか僕は『さくらむすび』は全体的に眠かった。でもこの眠さには意図があるので、いいんですけどね。もちろん眠いとは思わず、喜ぶ方もいるわけですし」


    残響「まあそうですね、イチャラブゲーとしてのよさを強調するのがぼくだとしても、他のルートの怖さっていうのはわかります。可憐ルートのアフターを妄想したんですけど、他の町にいって、可憐が大学検定試験を受けるために細々とつつましい生活を送る、みたいな。出来なくもないんですけど、長くは続きませんでしたね」


    *1 さくらむすび……CUFFSより2005年8月に発売。ピアノを基調にした落ち着いたBGM、ゆったりとした空気が流れる癒しゲーと見せかけて実は……(fee)

    *2 紅葉ルート……幼馴染・紅葉との穏やかな生活のなかで、少しずつ、それでも確かに日々と想いは流れていって、積み重なっていって、そしてあの伝説の「散髪」シーン。紅葉が主人公の髪を切るときに、極めて何気ない、静かな告白の言葉が、ひとつ、またひとつと、葉が降りつむようにして、想いが重なっていき、そして二人は恋人となるこのシーンは全ナジミスト(幼馴染信者)必見である。さあてそこからのイチャラブがすごいよ。とにかく限界なんてないよ! ラストに至ったら、もう「バカップル」だよ! あー、もう、ごちそうさまでしたっ!サイコウッ!(残響)

     

    紅葉って幼馴染なの? 僕的には従姉妹キャラだと思うんですけど(幼馴染と親戚キャラは分けたい人)(fee)



    *3 桜BADルート……精神年齢が低く、兄の圭吾に病的に依存する桜と、桜を守りたい圭吾。遂に一線を越えてしまった二人を待っていたのは、今まで暖かく接してくれた周囲の人々の拒絶だった。寒空の下、居場所を求めあてもなくさまよう二人だったが、手を繋ぐ桜の身体からは温もりが失われ……。というお話。個人的には、これが「さくらむすび」のTRUEルートだと思っています(fee)

    *4 世間の怖さが凄く伝わる話……この観点から紅葉ルートをプレイしてみると、穏やかな雰囲気で塗り込められた下に、周囲の人々の恐るべき思惑が見え隠れして、とても薄ら寒い気持ちになれます(fee)

    *5 「いちゃラブ」大全……2008年、インフォレスト刊。この当時、ジャンルもののムックとして「○○大全」が出ていたが、その中の一環として、この本がある。さすがに2008年だけあって、情報が古いところがあるし、現在のイチャラブ濃度の議論からしたら、「薄い」ものもあるだろうが、それでも、例えばシリウス(ライター:保住圭)「こいびとどうしですることぜんぶ」を巻頭特集で持ってきたり、というように、「なかなかわかってるねぇアンタ!」な、イチャラブ好きによる、イチャラブ好きのための、イチャラブの本である。エロゲの取り扱いが大目かな。次に、ラブコメ・エロコメ漫画。(残響)


    *6 魔法少女まどか☆マギカ……2011年1月から4月まで放送されたアニメーション。魔法少女候補のほんわかした生活を描いた1、2話と打って変わって、第3話からは……(fee)
     
    *7 トノイケダイスケ……もともとはF&Cのライターで、『Canvas〜セピア色のモチーフ』(2000年作)で、「百合奈」シナリオなどにおける、どこか影のあるシナリオ展開と、キャラクター造形でもって、「F&Cのいちライター」としてまずは知られるようになったが、次作、☆画野朗(原画)と組んで発表した『水月』(2002年作)は、幻想的かつ深い読解を要するシナリオ、極めて魅力的なキャラでもって、「え? F&C?萌えゲーメーカでしょ?」の通念におもっきし風穴を開けた、意欲作にして大作。そしてこの☆画野朗とトノイケのコンビは、おしっこ(おもらし)に対するこだわりもさることながら……いやそれは余談だ(しかし識者には余談どころではない)。その後、このコンビはF&Cを離れ、CUFFSを立ち上げる。良作『さくらむすび』、『ワンコとリリー』を送り出し、次の大作『Garden』に向かって、業界、オタの注目は増していった。……が、『Garden』、いざ発売してみたら、これが未完成品であった。その後、トノイケは迷走する。未完成ということに納得がいっていなかったトノイケは、いくつかのルートを執筆、そのクオリティの高さに、「やはりトノイケここにあり!」と「創作者」としては評価はされたが、その後、沈黙。ここ数年、公の場でコメントがひとつもない、という状態(2016年6月現在)(残響)

     

    トノイケダイスケなら今はスカパーの社員やってるみたいですよ? 参照URLはここ (fee)


    *8 桜の樹の下には屍体が埋まっている……梶井基次郎の短編小説「桜の樹の下には」より。有名な一文だが、小説自体を読んだ人は意外と少なそうな印象。僕は読んでいません(fee)
     

     

    2記事目に続きます(近日更新)
     

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