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    ブラッドベリ『火星年代記』読書会(6)

    • 2018.01.03 Wednesday
    • 16:54

    ★2057年4月 長の年月 第4探検隊の生き残り、ハザウェイ氏のその後

     

     

    fee「主人公は第四探検隊の生き残りのハザウェイ氏。ハザウェイ氏とワイルダー隊長が登場するので、第四探検隊の最終章みたいな趣きですね。サム・パークヒルは出てこないんですか?」

     

    残響「本人は出て来ませんが、伝聞で出てきます。ホットドッグのスタンドを開いて、一週間もしないうちに地球に帰った、と」

     

    fee「何がしたいんだ?っていうw ハザウェイって、第四探検隊で目立ってたっけ?」

     

    残響「いや、全然目立っていなかったですよ」

     

    fee「目立ってなかったよね。ワイルダー隊長とビグズは目立ってたけど……ハザウェイって何をした人?」

     

    残響「誰かに殴られていませんでした?」

     

    fee「誰かに殴られたんですかwww」

     

    残響「あれれ? 違ったかな。殴られてたか、誰かをなだめてたかどっちかだったような(ぼんやりした記憶)」

     

    fee「誰だよハザウェイ殴ったやつ……ひどいなぁ……とにかく、第四探検隊で影の薄いハザウェイ君が今回の主人公です」

     

    残響「あ、いました。水疱瘡を診断した医者ですね」

     

    fee「あぁ、お医者さんか。最初の方に出てきたんですね。ハザウェイの思想的な背景は書かれてないのかな? 『長の年月』だと、ハザウェイは隊長寄りの人になっていますけど」

     

    残響「元から隊長寄りの人だったとは思うんですけどね」

     

    fee「そうだとは思うんですが、隊長寄りだという描写はなかった気がする」

     

    残響「歯向かってはいないじゃないですか」

     

    fee「そりゃ歯向かってはいないですけど……」

     

    残響「サム・パークヒルとかビグズ派ではなかったという」

     

    fee「あらすじに戻ります。第四探検隊の生き残りのハザウェイさんが、火星で細々と家族と共に生きていました。最初の方の、P357、2行目で
     

    『わたしのしたことを、ゆるしてくれるかね』

    と、ハザウェイは四つの十字架に向かって訊ねた


    『わたしはひどく孤独だったんだ、わかってくれるね』


    というのが伏線ですよね」

     

    残響「そうなんですよ」

     

    fee「この伏線がねぇ。後になって、『そういう意味か!』って。そんなハザウェイの姿を、細君と、二人の娘と一人の息子が眺めていると。良い家庭の光景です」

     

    残響「ただ、ハザウェイはあまり体調が良くなさそうですね」

     

    fee「『苦痛に烈しく悸つ心臓を抱えて』とありますね。で、戦争があってから二十年経っています。ハザウェイも地球に帰りたかったけど、既にみんなが行ってしまった後で、取り残されてしまったと。それが良かったのか、悪かったのかはわかりませんけど……ただ、ハザウェイは火星で暖かい家庭を持って、生きられましたから」

     

    残響「そうですそうです。何であれ、暖かさと共に生きられた」

     

    fee「悪い人生ではなかったかもしれません。家族がいなかったらちょっと寂しかったかもしれませんけど。で、ここにワイルダー隊長が到着します。

    『ワイルダー隊長!』『ハザウェイじゃないか!』『お久しぶりです、隊長!』『嬉しいなぁ』

     

    残響「嬉しいなぁ。こんなに嬉しいことはない」

     

    fee「ワイルダー隊長が出てきたのは読んでる僕も嬉しかったです。二十年間、木星や土星や海王星を回ってきたと」

     

    残響「隊長、結構頑張ってますね」

     

    fee「火星の植民政策に口を出したとかで左遷されたんですけども、宇宙飛行士としては相当なキャリアを積んできました。で、ハザウェイのほかに、ここから一万マイルほど離れたところに、あの出会い系でひどい目に遭った……」

     

    残響「ふふふww」

     

    fee「ウォルター・グリップ君がいたと。それはいいんですけど、ジェヌヴィエーヴがいないんですよ。ジェヌヴィエーヴはとうとう死んだ?」

     

    残響「死ww」

     

    fee「ウォルター・グリップ君、ハザウェイのところに行けば良かったのに」

     

    残響「もう嫌になっちゃったのかな。『ハザウェイもロクでもない人間だったらどうしよう』みたいな。超悲観主義になってもうたウォルター君」

     

    fee「まぁ、ジェヌヴィエーヴほどひどいってことはないと思いますけどねw ウォルター・グリップのところには火星人は来てくれなかったんですかねぇ」

     

    残響「うーん……まあそれも運命ってことで」

     

    fee「やっぱ出会い厨はダメですか。僕はいいと思いますけどねw 出会い厨で、ブスが来たら逃げ出してしまったウォルター・グリップ君……」

     

    残響「あの女、身だしなみも衛生関連もダメ、性格もダメで……」

     

    fee「ジェヌヴィエーヴの話で盛り上がりそうだけど、心を鬼にして『長の年月』に戻ります。ウィリアムソンという副官が、ハザウェイの息子と一緒の学校に通っていたので、年齢がおかしいと言いだすんですよね。ウィリアムソンが探偵ごっこを始めて、ハザウェイの隠された秘密を暴いてしまう」

     

    残響「そうそう、実は……」

     

    fee「「実はハザウェイの優しい家族たちは、ハザウェイの本当の家族ではない、ということで、ちょっとホラーじみた話ではあるんですけど。ここでホラー路線に行くか感動路線に行くかは、作家次第というか、作品次第ですね。この後、ワイルダー隊長は奥さんと話をして、奥さんの正体を知る、と。奥さんたちは火星人なんですが、ずっとハザウェイを支えてきました」

     

    残響「そうなんですよ」

     

    fee「この話は、登場人物のみんなが優しいですね。最後、ハザウェイが死んじゃって、既に亡くなっている奥さんたちのところにハザウェイの遺体を一緒にいれると。
    そして、隊長はそのまま去っていきます。残されたアリス(妻)と、息子と娘。ハザウェイはいなくなったけど、火星人の一家が、今日も幸せな日々を続けるという物語ですね」

     

    残響「そうか、今気づきましたが、考えてみればホラーにも見えるんですね」

     

    fee「設定だけを見ればホラーでも行けると思いますよ。ただ、ホラーとして書いてはいないですよね。ホラーに寄ってるのが『第三探検隊』とか、次に出てくる『優しく雨ぞ降りしきる』とか」

     

    残響「ある意味対照的というか。『長の年月』はホラーの設定で優しさを描いていて、『優しく雨ぞ降りしきる』は優しい牧歌的な世界を描きながら、書かれている内容はホラーという」

     

    fee「そうですね。この『長の年月』は、『火星の人』の変形でもあります。『火星の人』はおじいさんとおばあさんのところに、息子のトムが来てくれる話でした」

     

    残響「姿を変えることができるっていう」

     

    fee「そうそう、相手が望むものに変わる能力を持っているという。『火星の人』も『長の年月』も基本的には同じ話ですよ。僕は『火星の人』も好きだし、『長の年月』も好きです」

     

    残響「いい話ですよ」

     

    fee「こういう話はやっぱり、ブラッドベリは巧いよなぁって思いますね」

     

    残響「下手に小細工せずにね」

     

    fee「こういう優しい話って、ありそうであんまりなくないですか?」

     

    残響「寂しいんだけど、なんだか優しいみたいな」

     

    fee「そうそう。そういう感じの作風で。ブラッドベリはそういうところがいいですね」

     

    残響「これは個人的仮説ですが、ラストの『百万年ピクニック』に至るまで、『火星年代記』全体を通して、最終的に地球人が【火星人】になっていくという、連作としてのゆるやかな一つの線があると思うんです。地球人が火星にやってきた最初の頃……『イラ』とか『第三探検隊』あたりでは全然意思疎通が図れていない。色々な事件・物語を経過して、やっと『長の年月』に至って、地球人が火星的なモノと和解したというか。ハザウェイさんは火星人の妻と息子さんたちと一緒に、優しい生活を営むに至ったという」

     

    fee「そうですね」

     

    残響「だからようやく、地球人は【火星人】になれたのかな、と」

     

    fee「『火星の人』では途中まではうまくいったけど、取り合いになっちゃいましたからね。一番最初に交流があったのが『夜の邂逅』で。『夜の邂逅』あたりからちょっとした交流が始まって、やっと完全に交流できたのが『長の年月』か。あまり考えていませんでしたが、そういう流れはありそうですねぇ。ハザウェイさんは奥さんのところにちゃんとお墓参りに行っていますけど、楽しい人生は送れましたよね」

     

    残響「こういう幸せの形があってもいいと思うんです」

     

    fee「それこそSFだからこそ読める暖かい話ですね」

     

    残響「そうですね。うまく言えませんが、【SFだからこそ】という感じがすごいする」

     

    fee「僕、こういうのが読みたいんですよ。あんまりないんですけどね……」

     

    残響「今のSFだと、もうちょっと科学的な装飾……科学用語とか、先端技術とか、科学設定の論陣とか、辻褄合わせが付け加えられる気がして」

     

    fee「まぁ、それが好きな人はいいかもしれないけど、僕的にはそういうのは要らないんだよね……」

     

    残響「火星という大雑把な舞台があって、ちょっと不思議で優しい話があって。ぼくもそれでいいですね」

     

    fee「まぁここまで牧歌的な話は、現代ではなかなか書きづらくなっているんでしょう。ただ、ガチなSF愛好者はいいとして、『風の谷のナウシカ』とか『ドラえもん』くらいのSF好きには、これぐらいで十分楽しめるというか、これぐらいじゃないとついていくのが大変というか」

     

    残響「確かに、そういう作品は少なくなっているのかもしれませんね。ざっくりとした印象論ですが、それほど的を外した印象でもないはず」

     

    fee「最新のSFをバンバン読んでいるわけじゃないので、見当違いな事を言っているかもしれませんが、最新の話題作だけで言うならこの手のお話は少なくなっていると思います。話題作だけで語るのは良くないと思うんですが、話題作くらいしか読めていないので……。まぁ僕が知らないところに、良い作品がたくさんあるのかもしれません」

     


    ★2057年8月 優しく雨ぞ降りしきる 廃墟となった地球

     

    fee「世界崩壊後の地球を舞台にしたお話です。僕、最初は火星の話かと思って読んでいました。誤読してたというw しかしですね。『トーストを8枚と、目玉焼きを8つと、ベーコンを16枚と、コーヒーを2杯と、冷たいミルクを2杯』って……食べすぎじゃないですか!? デブなんですか?」

     

    残響「アメリカの南部地域っぽいんですよね。聞いた話ですが、南部地域って、割と男の人も女の人もでっぷりとしているというか。食べ物がおいしいというのもありますが、凄い量を食べるんです」

     

    fee「カリフォルニア州が舞台なので、南部と言っていいのかはちょっと微妙なところだけど……」

     

    残響「カリフォルニアかぁ……そうですね、だとしたらどうなんだろう」

     

    fee「ナチス・ドイツの平均的な家族像に、両親と男の子、女の子で4人家族というのがある、と以前仰っていましたね。この作品の一家もそうなんじゃないかっていう。しかし÷4にしても一人でトーストを2枚食べて、目玉焼きを2個で、コーヒーは……あぁ、大人にコーヒー1杯、子供にミルク1杯ですね? このミルクはコーヒーに入れるミルクではないですね?」

     

    残響「はいw」

     

    fee「『学校へ、勤めへ、出かけましょ、走って、走って、8時1分』だから、学校に行く人が1人は、いる。ということですね」

     

    残響「そういえば、ぼくはこれを読んで、手塚治虫の『火の鳥』を連想しました」

     

    fee「すみません、『火の鳥』を読んでいないので何とも言えないんですよね……」

     

    残響「『火の鳥』も年代記なんですが、その中で【未来編】というのがありまして。絶望的な状況だけど、淡々と日常生活が行なわれていくという話があります。ほとんど人が居なくなった世界で、ロボットを中心にして、日常生活が淡々と描かれているという」

     

    fee「ほとんど同じじゃないですか。オマージュだったりするのかな」

     

    残響「それはわかりません」

     

    fee「話を戻します。世界崩壊後のカリフォルニアが舞台の物語なんですが、最終戦争中に水爆が落ちているんですね。P378、8行目。
     

    『その西面は、ただ五か所を残して、あとは一面真っ黒だった。ひとつは、ペンキにくっきりと残された、芝生を刈る男のシルエット。ひとつは、写真で見るような、花を摘もうと身をかがめた女の影。さらに、もっとはなれたところに、あの恐ろしい瞬間に壁板に灼きつけられた三つの影があった。両手を高く空に突き出している小さな男の子。そのもっと上方に、ほう(漢字が出ない)りあげられたボール。男の子と向き合って、永久に落ちてはこないボールを受けとめようと、両手をかかげている女の子』

    あぁ、さっきの4人家族説であってますね」

     

    残響「ですね」

     

    fee「この、壁に影が残る描写は『はだしのゲン』とかでもおなじみの」

     

    残響「そこにいる人が焼きつけられちゃって」

     

    fee「核爆弾こえーー、みたいなエピソードですよね。いい描写だと思います」

     

    残響「ところで、ここ矛盾があるんですよね。何でこんなに平和なんだ?っていう。核爆弾レベルでドンパチやっておきながら、なんでこんなにここは生活レベルが平和なのか?っていう……普通なら段々生活レベルが落ちていくものだと思うんですが……」

     

    fee「多分ですけど、いきなり爆弾が落ちてきてそれで終わりなんじゃないですか? 一瞬で戦争は終わったのでは?」

     

    残響「あ、これはいきなりなんですか?」

     

    fee「だって、そんな核爆弾なんてボンボン撃ち合えないでしょ。いや、国レベル、世界レベルでは撃ち合った可能性はあるんですけど、カリフォルニアという街単体はこれで全滅でしょ。で、ロボットが生活を管理しているので、特に矛盾はないんじゃないですか?」

     

    残響「そっかそっか……なるほど」

     

    fee「この作品では、家がキャラクター性を持っていると言いますか、家が擬人化されていますよね。『家は物音がするたびにおののいた』という描写があったり、火事と戦ったりする描写もありまして。人間はいないのに、雀が……」

     

    残響「そうそうそう。居たりして」

     

    fee「あと、犬も出てくるんですよね?」

     

    残響「ヨロヨロの犬が」

     

    fee「そう、ヨロヨロの犬が。で、ですね。僕たち、ネットで調べました。放射線に晒された生物が、どの程度の期間、生きられるのか。犬はダメでしたよねw」

     

    残響「ダメでしたねw」

     

    fee「哺乳類はダメですね。昆虫は比較的放射線に強くて。ゴキブリはかなり強い、と。あと、甲虫も結構強いと。蠅はあまり強くないけど、人間よりは強いという結論でした。よく調べましたw」

     

    残響「ふふふw 頑張りましたfeeさん*1」

     

    fee「というわけで、この作品にゴキブリが出てきてもいいですが、雀や犬が出てくるのはおかしい。P379、13行目

    『一匹の犬が、ぶるぶる震えながら、哀れななき(漢字が出ない)声をあげた。(略)かつては大きくて肉づきがよかったのに、いまは骨と皮ばかりになり、からだ中焼けただれてしまったその犬は』

    という謎の文章があります」

     

    残響「ああ、はい。ありますね」

     

    fee「ここに矛盾があるんです。核が落ちたのはいつなのかっていう。犬の寿命は13年くらいですよね? この作品の舞台は2057年。ということは、2045年よりも後に核が落ちたんじゃなければおかしいですよね。だって『かつては大きくて肉づきが良かった』んですから。犬が元気だった頃に、核が落ちてきたと。で、核を食らったのに長い間生きていたという」

     

    残響「……そうなりますね」

     

    fee「最終戦争が始まったのって、2036年ですよね。となると、9年間カリフォルニアは無事だったことになります。つまり、カリフォルニアが9年間無事だったか、犬の寿命がおかしいかの二択ですよね」

     

    残響「元からおかしい犬だったのかもしれませんw」

     

    fee「ゾンビ犬みたいなやつですかw 犬もロボットなんじゃないか、という仮説も立てられたんですが……」

     

    残響「ぶくぶく泡を吹いていますからロボットじゃないと」

     

    fee「かわいそうに、死んじゃいましたからね。最終戦争が到来して9年間が過ぎてるのに、『学校へ、勤めへ、さぁさぁ出かけましょ』っていう……ってこれがさっき残響さんが指摘してた矛盾か(今気づいた)」

     

    残響「そうですw」

     

    fee「すみませんでした。まぁ……ミスが気にならないくらい面白ければいいとは思いますが……ちょっとブラッドベリはSFを書くには、ミスが多すぎないですか?」

     

    残響「はははw 2017年の今じゃフルボッコかもしれませんw ただ、ブラッドベリがここで書きたかった事は伝わってきますよね」

     

    fee「伝わりますねww」

     

    残響「伝わるんですけど、このミスはちょっといただけないっていうw 残響は結構こういうのは詰めて考えない大雑把な人間ですが、それでもちょっと【雑だなぁ】というか」

     

    fee「時間設定を少し前倒しするだけで、矛盾は小さくなったんじゃないですか?」

     

    残響「新版で機械的に31年プラスするよりも、こっちの設定を考え直してくれっていうw」

     

    fee「2、3年でいいと思うんですよね。主がいなくなった家で、ロボットがひたすら頑張っている日常が2〜3年あって、ついに犬がやってきて火事になった、みたいな。こうすれば犬が生きていてもギリギリ矛盾はないかもしれないし、人がいなくなった後、ロボットが日常生活を営んでいる怖さも描けるし」

     

    残響「『火星年代記』というタイトルなんですけど、年代記(クロニクル)を書くなら普通、作中世界の年表を作りますよね」

     

    fee「うんうん」

     

    残響「でもブラッドベリは年表を作らずに、何となく火星にまつわる物語をたくさん作っているだけのように思えてきたんですけど」

     

    fee「まぁ、あまり歴史は考えていないですよね。ブラッドベリはガチなSFの人ではないので……」

     

    残響「そうですね……しかし一般的にはブラッドベリは【ちゃんとしたSF作家】という認識だと思うんですけど……竹本泉じゃないんだから……」

     

    fee「サブタイトルにもなった『優しく雨ぞ降りしきる』というのは、昔の詩人、サラ・ティーズデイルさんの作品から取られているんですけども……。Wikipediaによればですね、サラさんは恋人を捨てて、金目当てに違う男と結婚したんでしたっけ?」

     

    残響「ですね(Wikipediaを見ながら)」

     

    fee「もうねぇ、サラねぇ。二人の崇拝者から求婚される……この崇拝者っていうのもいいですけどね。詩人のヴェーチェルとサラは毎日長い恋文を送りあって、ヴェーチェルが意を決して求婚したのに、サラは裕福なフィルシンガーと結婚しちゃってねぇ……」

     

    残響「ワーオ」

     

    fee「求婚して振られちゃった貧乏詩人のヴェーチェルとサラは、終生愛情あるプラトニックな友人だった、と。一方で『詩に表現した情熱を人生で経験することは決してできず、その結婚は幸福ではなく……』

     

    残響「離婚して、自殺してしまった(Wikipediaを見ながら)」

     

    fee「しかもヴェーチェルの方も、サラの自殺の2年前に自殺している。サラが、金目当ての結婚なんてしないで、貧乏詩人のヴェーチェルと一緒になっていれば自殺しないでもすんだかもしれないし、仮に自殺したとしてもですね、少なくとも詩の世界のような恋愛ができたのではないでしょうか。だから、サラのせいだなって」

     

    残響「悪女めw」

     

    fee「詩で表現した世界を人生でも経験すれば良かったのに。サラのせいでヴェーチェルまで自殺しちゃって……いや、サラのせいじゃないかもしれないけど。やっぱり金目当てじゃなくてですねぇ。好きな人がいるんならさぁ……いないなら金目当てでもいいですけど。あんまりカネ、カネ言ってると、一番いいものを失うかもしれない」

     

    残響「詩人なのにねぇ」

     

    fee「そう、詩人でしょ? 現実主義のつまらない事しちゃってねぇ。詩人じゃ儲からないのかもしれないから、パトロンが欲しかったのかもしれませんが……」

     

    残響「ゼニですか」

     

    fee「まぁサラはいいや。ちょっと言い残した事がありまして、貯蔵の話なんですけど。家が火事になった時に、『120個の卵と、6本のトーストと、240枚のベーコン』が火に食われてしまった。15日分、ですか? 僕、こういう描写を見るとすぐ計算したくなっちゃうw」

     

    残響「ぼくは計算は全くできないので……(投げた)」

     

    fee「かくして、平和だった2057年8月4日も終わり、この家は息絶えました。しかし、声は何事もなかったかのように『2057年8月5日でございます』と。8月4日はフェザーストン氏の誕生日で、ティリタの結婚記念日で、保険料と水道、ガス、電気代の支払日だったんですが……何十年同じ事を言い続けるのかな。
    というわけで、核戦争後の荒廃した世界で、機械が平和な日常を装っているのが、シュールで、不気味、かつちょっと悲しい感じの作品です」

     

    残響「……ある意味、美しくもあるけれど」

     

    fee「そうそう。そういう、何かを感じる作品ですよね。この情景を思い浮かべて、特に何も思わないと、ただ家が暴れているだけの話になりますね」

     

    残響「何も思わないっていう人が居たら、それもそれで凄いなw」

     

    fee「この作品が、というよりブラッドベリ全体がそうですけど、詩ですね。感性のアンテナが合えば猛烈にハマるけど、アンテナが合わないと多分良さが解らない作家だと思います……」

     

    残響「この作品は人間の心理描写とかはなく、全部情景描写でやっていますけど……」

     

    fee「そうですね。アクション描写はありますけど」

     

    残響「人間がいないんですよね。人間の不在」

     

    fee「家が擬人化されていて、家が人間というか、主人公というか……」

     

    残響「システムというか……。こういう作品に名前をつけるとすれば『優しく雨ぞ降りしきる』みたいなタイトルになるんでしょうね。上手いわ」

     


    *1……この対談をしていて、feeさんが「核の後でも生きていられる生物とは?」というところが気になられたらしく、対談そっちのけでかなりwebで調べた。(残響)



    ★2057年10月「百万年ピクニック」 新世代の火星人

     

    fee「地球の一家が火星に来ました。ドライブして、住みたい街を物色します。ピクニック気分で無邪気にはしゃぐ子供たちでしたが、住みたい街を決めた後で、パパが真実を話します」

     

    残響「最後、子供たちが『ぼく、とても火星人が見たかったんだ』って言うんですけど、それに対してパパが、水面を指さして『ほら、ここに映っているのが火星人だ』って。元地球人だったけれど、これからは火星に生きる火星人なんだ、というエンドです。上手い!流石や」

     

    fee「子供は3人で、ティモシーとマイケルとロバート。年長のティモシーだけは、もう地球に帰る事はないと解っていて、演技しています。マイケルとロバートは解っていない。ティモシーが実に巧く、弟2人の面倒を見ているんですよね。かなり健気で頑張っているなあと思いました」

     

    残響「うんうん」

     

    fee「火星にはもう一家族、女の子ばかりの一家が火星にやってくるんですよね? これはもうハッピーエンドですね、エロゲ的にはね」

     

    残響「だははははww そこでそう言いますか、あんさん!」

     

    fee「だって、この一家と娘さんたちしかいなかったら、そりゃブサでもダメ主人公でも子供できるでしょ? 楽しい感じですよ」

     

    残響「ジェヌヴィエーヴはもういないけど……」

     

    fee「ウォルター・グリップ君はどっかにいるかもしれませんが。ウォルターはレイプ魔みたいな感じですか? ウォルターを追い払え!みたいな」

     

    残響「なんだか凄い話になってきたなww ダイジョブかおい……」

     

    fee「ウォルターも仲良くしましょう。ウォルターもこちらに来ますよ。とにかく、この二家族が最後の地球人なんです。で、先ほど残響さんが仰ったラスト。

     

    『ぼく、とても火星人が見たかったんだ』と、マイケルが言った。『どこにいるの、パパ? 見せてくれるって約束したじゃないか』。
    『そうら、そこにいるよ』パパは、マイケルを肩の上に移して、真下の水面を指さした。
    火星人がそこにいた。ティモシーは震えはじめた。
    火星人はそこに――運河の中に――水面に映っていた。ティモシーと、マイケルと、ロバートと、ママと、パパと。火星人たちは、ひたひたと漣波の立つ水のおもてから、いつまでもいつまでも、黙ったまま、じっとみんなを見上げていた』

     

    と、こうなるわけですね」

     

    残響「そう……ここでティモシーは震えてますよ」

     

    fee「やっぱり最後の7、8行は素晴らしいですね」

     

    残響「凄いですね。さすがです。『火星年代記、ここから始まる−−』みたいな」

     

    fee「火星の旧勢力とは共存していけますかね」

     

    残響「もうこうなったら行くしかないんですよね」

     

    fee「ハザウェイと旧勢力は仲良くできましたが」

     

    残響「ティモシーは大丈夫そうですけど、マイケルとロバートのどちらかがサム・パークヒルみたいになっちゃう可能性はあります」

     

    fee「……パパとママがうまくやっていくしかないですね。教育をきちっとやりましょう」

     

    残響「教育大事」

     

    fee「グランドエンドで良かったなぁ、と思うんですけど、この作品単体での感想は特にないんですがw」

     

    残響「それにしてもタイトルが凄く良いと思いませんか? 百万年ピクニックって」

     

    fee「いいですよねぇ。これから百万年、ピクニックするんですよね?」

     

    残響「そういう意味ですよね。未来に向かっての百万年ピクニックですか。希望に満ち溢れてはいないけど、茫漠とした感じがしますね」

     

    fee「ピクニックに来たっていう」

     

    残響「この軽い感じがね」

     

    fee「まぁ、軽い気持ちにならざるを得ないよね……」

     

    残響「そうですねぇ……【ならざるを得ない】っていうのは言いえて妙です」

     

    fee「子供たちは本当に軽い気持ちで来てるしね」

     

    残響「パパとママはすこぶる重い気持ちで来ていますけど」

     

    fee「そりゃそうですよ。そうなんですけど、ティモシーもまた両親の気持ちを解っちゃっているのが、かわいそうというか。ティモシーって何歳なんだろ。小学校高学年くらいに思えるけど」

     

    残響「パパがティモシーを肩に乗せるシーンがありますよ。中学生よりは下でしょうね」

     

    fee「じゃあやっぱり、小学生……だとするとティモシー健気ですね。高校生ぐらいなら……いや、高校生でも辛いは辛いですが。一人で泣いているシーンもありますし、パパとママの前でも演技をしてるんでしょ? 無邪気な子供の振りをして……実にティモシーが健気ですよ」

     

    残響「ぼくはこの話、パパが、自分の代で全部【地球的なるもの】を葬り去ろうとしている。ティモシーたちにはまっさらな形で生きてほしい……と、そう読んだんです。でも、ティモシーは今までの地球的なものを背負っているから、引き裂かれているというか。上手く言えませんが、これでいいのか?的なぼんやりとした悩みから抜け出せないといいますか」

     

    fee「うん」

     

    残響「でもこれでやっていくしかないんだよな、みたいな」

     

    fee「パパは

    『たとえ、戦争がなかったとしても、わたしたちは、わたしたちの新らしい生き方の基準を作って生きるために、火星にやって来ただろう。火星がいずれは、地球の文明に『汚される』にしても、それまでまだ百年はかかっただろうからね。もちろん、いまは――』

    汚されるって言っていますね。地球的なものではなく、新しい生き方の基準で生きて行こう、というのがパパの思想です。その象徴がロケットの破壊かなと」

     

    残響「そうですね。ただ、パパはそう思っているけど、ティモシーはやっぱり【地球的なるもの】への愛着があって、そう簡単に割り切れないと言いますか。パパの理想を子供に解れ、って言っても難しいでしょうね」

     

    fee「ティモシーは、地球を探しているシーンがありますけど……ティモシーはそんなに地球に愛着があるんですか?」

     

    残響「うーん、どう言えばいいのかなぁ……うまく言えないんですけど……」

     

    fee「あぁ、でも地球の地図をパパが焼こうとしている時に、ティモシーは視線を逸らしたりしていますね。そうかぁ……言われて気づいたけど、残響さんの仰るとおりですね」

     

    残響「地球の具体的なアレコレに対する愛着、というよりは、もっとぼんやりとした火星に対する不安感……パパに対して論陣を張って、『違うんだ!』みたいな事は言いませんが、これでいいのかな?というか」

     

    fee「『ティモシーは、パパが火に投げ込んだ最後の一つを、眺めた。それは、地球世界の地図だった(略)。ティモシーは視線をそらした』」

     

    残響「ティモシー自身には、〇〇をしたい、という意思が今はないんですよね。考えているのは、これからどうしたらいいんだ?という。不安に脅えているようなシーンばかりで、これからどうしたい、というものが見えてこない」

     

    fee「ピクニックに来たばかりですからね。そんな適応能力はなかなかないと思います」

     

    残響「まぁ確かに……」

     

    fee「パパは、『女の人には気をつけろ』とか、わけのわからない事を言っていますけどね」

     

    残響「ははははw」

     

    fee「もうそんな時代じゃないのに、そんな事を言われても……」

     

    残響「全然地球的な考え方を捨てられてないですね、パパw」

     

    fee「10歳と8歳の弟たち、って文章があるので、ティモシーは11歳以上ではあるんですね」

     

    残響「そっかそっか。そうですね。さて、ティモシー少年がこれから【火星人】として、この火星で生きていくのですが、その先にあるのは果たして栄光か滅亡か。安らぎか絶望か。この茫漠とした火星の大地は、今日も静かに在る……、みたいな余韻を個人的には感じています。【登場人物個人の意志】というよりは、【火星の意志】というか、ね」

     

     

    次回へ続く……(『火星年代記』読書会 総まとめ&お疲れ様会)

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    • 2018.07.12 Thursday
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