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- 2018.07.12 Thursday
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★2033年8月『夜の邂逅』 地球人と火星人の時空を超えた邂逅
fee「ある夜、主人公のトマスは火星人と出会います。そこで、まぁちょっとした話をして、お互い帰っていく。と、ストーリーとしてはこんな感じ、でいいのかな?」
残響「そうですね。本当にそんな感じ。特に何が起こるわけでもない話。まさに【邂逅】。地味な作品ではありますが、二人とも評価が高いんですよね」
fee「いいですよね、この作品。まず残響さんの感想からお願いしようかな?」
残響「はい。まず、やっと【対話】が成立したな……って」
fee「対話?」
残響「ええ……今まで、地球人と火星人って全然話が通じていなかったじゃないですか。純然たるディスコミュニケーション。最たるものは、第二探検隊は狂ってる、っていうんで精神病院ですし……」
fee「確かに……最後の火星人たるスペンダーも、サム・パークヒルと対話できませんでしたし……」
残響「そんなわけで、『やっと、か』、と。この作品の二人はお互いがお互いの事を尊重していますよね。話がかみ合わなくても相手を否定しない。『意見一致しないという点で意見一致しましょう』というセリフもとても良いです」
fee「対談企画をやりたいなと思った時に、その『意見一致しないという点で、意見一致できる』というのはとても大切だなと思っていました。もちろんお互いが意見を主張して、間違っていると思えば変えるというのは大事ですが、片方が自説を強硬に主張して、押し流す形で議論を誘導するのは避けたいなぁと。それでいて、何でも相手に合わせちゃうようじゃ、読み物として面白くないですし……と、横道にそれました。地球人と火星人がきちんとコミュニケーションを取れた、という話でしたね」
残響「ネタバレになっちゃいますが、この後の『オフ・シーズン』のサム・パークヒル、伝説のスーパーナイスガイ(白目)なんてひっどいですからねぇ」
fee「サムだからね。しょうがないね」
残響「コップを差し出しても、相手に触れない、そういったシーンがありますよね。時空間が歪んでいるのかな。不思議なお話でした。feeさんの方はいかがですか?」
fee「この作品を読みながら、ずっと『FF10』の事を考えていたんですよね。『FF10』はご存知ですか?」
残響「未プレイです。ただ、*1 『ザナルカンドにて』という曲は聞いたことがありまして。作曲者の植松信夫が好きで、彼のアルバムや、他の人の同人アレンジCDとかで聞いてました。こういう物悲しい曲がテーマソングになるような作品なのかな、とは思いましたが」
fee「短編ごとにイメージソングを当てはめて『火星年代記』を読んでいたんですが、まさに、この『夜の邂逅』のマイ・イメージソングは『ザナルカンドにて』でした。『FF10』についてざっと話しちゃいますが、ティーダという青年とユウナという少女のド直球の恋愛物語です。系統としては『タイタニック』とか『いま、会いにゆきます』とか、あの辺りの雰囲気ですね。ユウナという、真面目で大変な義務を負っている幸薄そうな少女を、側で見守り、支える青年ティーダの物語。……『FF10』について喋っても大丈夫です?」
残響「全然大丈夫です。ネタバレを恐ろしいまでに気にしない人間なので」
fee「『FF10』は、前の世代が果たせなかった事を受け継いでいくという意味で、完成度の高い王道ファンタジーにもなっているわけですが、そこは『夜の邂逅』と関係ないのでおくとして。
ティーダという人間には実体がないんです。千年前に滅びたザナルカンドという街に暮らした、人々の想念。天才スポーツ選手で、イケメンで、ちょっとチャラく見えるけど根は真面目でいい奴。ザナルカンドに住んでいた人々が、ある種の理想とした青年なんです。
実体を失ったティーダとユウナが、*2 お互いに触れられず、すり抜けてしまうシーンもありますし、何より既に滅びた街の住人との出会い、交流という点で『FF10』っぽい物語だなあ、と」
残響「なるほどなぁ……」
fee「ギャルゲやエロゲでもこういう心が洗われるような純愛モノがやりたいなぁ……って今は『FF10』の話をする場ではないんだった! 『夜の邂逅』に戻りましょう。
ところで、一応確認しますけど、このストーリーは【四千年前に滅びた、過去の火星人】と、【現在、西暦2033年の主人公】が出会ったお話、という認識でいいんでしょうか?」
残響「時空がねじれている感じですけど、そんな感じじゃないですか?」
fee「ねじれている、というのがちょっとよくわからないですが……えーと、僕が言いたかったのはですね、この火星人は本当に【過去の存在】 なのか?という事です。この『火星年代記』の最終章である、『百万年ピクニック』の後。数千年後の火星人である可能性はないのか?というのを話してみたいなと」
残響「未来……ですか? それは考えなかったなぁ……」
fee「西暦2033年に【廃墟】があるのに、火星人はその廃墟からやって来た。逆に言うと、物的証拠はそれだけですよね?」
残響「そうだと思います」
fee「だとすると……廃墟は復興させれば良いわけじゃないですか。この後の未来で、再建されたのかもしれないですよね?」
残響「あぁ……なるほど……」
fee「ということを考えました。ちょっとこじつけかもしれませんが、未来から来た可能性もある、と考えると夢が広がるなぁと。
後はそうですね。ひょっとして残響さんが仰った時空がねじれているというのは、あれですか? 【共通の場】がないというか、そういう事かしら? つまり、【2033年のトマスの世界】に、過去や未来から火星人がやってきたわけではない。同様に、【火星人の世界】に、トマスがタイムスリップしたわけでもない。お互いがお互いの時代に留まったまま、ただ相手と交信ができている。まるで時空間に一瞬、小さな穴が開いたみたいに」
残響「そうです。【共通の場】。これは、物理的なフィールドを共有していない、という意味で、パラレル。思念(テレパシー)の交信は出来ているけども、お互いの物理世界が干渉しあっていない。直結してなく、パラレルになっている。物理的相互不干渉。空間位相がねじれてる。
それともう一つ言いたいのが、この作品はトマスと火星人、2人だけだから成立するんですよね。どちらかが2人連れだったりするとダメで」
fee「確かにそうですね。1対1だからこそ、の話ですよね」
残響「P179、17行目
『あなたのお祭りに行ってみたいな』
『わたしも、あなたの新らしい町へ行って、そのロケットとやらを見たり、いろんな人からいろんな話を聞きたいですよ』
『さようなら』と、トマスが言った。『おやすみなさい』
この最後のやりとりも実に爽やかで、ハートウォーミングというかいい話だなぁと」
fee「ロマンがありますよね。時空を超えて、全く違う時代の人と暖かな交流ができる。清涼剤のような、素敵なお話でしたね」
*1 一番上が原曲です。オリジナルです! 真ん中のが残響さんが見つけてきたオーケストラバージョンです!(これに関しては、僕が貼ったんじゃないよ!)
3番目のは、僕が結構気に入っているヴァイオニリスト石川さんの演奏です。というわけで3つも貼っちゃっていいんかな? まぁ「ザナルカンドにて」が名曲なのが悪いな!(意味不明;fee)
*2 問題のシーンね! あ、ここから先はずっと名シーンだから、興味のある人はそのまま見てね!(FF10信者並感;fee)
★2033年10月「岸」 一般市民も火星へ
fee「さて、いろんな人たちがやってきたという話ですが……この作品について語る事ってありますか?」
残響「やってきたのはまーたアメリカ人なんですね」
fee「そうですね。ただ今回は、P181、12行目『ヨーロッパや、アジアや、南アメリカや、オーストラリアや、島の人々たちは、ローマ花火の打ち上げをただ見守っていた』とあります。前回は、アメリカの事しか書かれてなかったけど、今回は他の国にも言及されていますよ」
残響「日本はないんだw」
fee「まぁ、アジアがあるからいいじゃないですかw ……アフリカがないぞ??」
残響「……んんっ?」
fee「中米もない……」
残響「島の人々扱い(オセアニアとか、インドネシアとかそのあたりの住人)なんですかねぇ……」
fee「いや、待って。P182、1行目『ほかの世界は、戦争や、戦争準備に忙しかった』って文章がありますよ。ネタバレになりますが、このあと核で地球が滅亡するんです。……アフリカと中米で起こった戦争で地球が崩壊したんですかね?」
残響「ヨーロッパとかアメリカじゃないんだw あとロシアとかでも。なんか大きな戦争と言えば大体ここらへんだと思うのにw」
fee「あと中国とねw アフリカ……アフリカねぇ。核なんて持ってるのかな。割と原始的な武器を使っていそうなイメージなんだけど……」
残響「死の商人(武器商人)が近代兵器を横流ししているので、そんなこともないと思いますよ」
fee「核も横流しされたんだな、きっと……今話題の北の国が横流ししたとか……?」
残響「1ページの作品なのに、なんだか随分語りましたねw」
★2033年11月「火の玉」 火星に宣教師が到着 第二の火星人(火の玉)との遭遇
fee「さて、『火の玉』です。これは旧版の『火星年代記』には入っていなかった作品なんですが、リメイクにあたって加えられましたけど……」
残響「けど?」
fee「僕、このタイプの作品は基本的に嫌いなんだよなぁ……正直に言ってつまらなかったです。この手の、説教くさいキリスト教的作品、海外の作品を読んでいると結構出くわすんですけど、全然興味が持てません……こないだ読んでた『ロストシンボル』もラスト50ページまでは面白かったのに、最後突然こちらの方向になってあくびが出ましたし、『アルプスの少女ハイジ』の小説版も……(以下2分ほど喋り続ける)」
残響「『説教臭いキリスト教作品』……そんなに嫌いなのかww フルボッコですなぁ……」
fee「あらすじを言いますね。ペレグリン神父たち3人が、火星に宣教をしに行くお話です。そこで、蒼い火の玉みたいな火星人に出会うんですね。神父はその火の玉に宣教しようとするんですが、火の玉は『私たちの事は気にせずに〜』と言っていなくなってしまいます。ストーン神父はその火の玉こそが、神であると悟る……そんなお話……ですよね?」
残響「ですね。火星の世界には火星の世界なりの、新しい罪がある、と意気込んでますが……」
fee「率直に言って、どうだってええやん、という感想しか湧いてきませんでした。なんでよそものが乗り込んできて、自分の道徳観を他人に押し付けようとするんだろ。やだやだ……」
残響「……ところで、ナイーブな質問になるかもしれませんが、feeさんはキリスト教自体が嫌いなんですか?」
fee「それはないです。ただ、宗教にあまり縁がない人間なもので(神社で神頼みしたり、おみくじひいたり、お地蔵さんに手を合わせたりするけど、宗教には入っていないフツーの日本人です)。このペレグリン神父のような狂信的な宣教者は気持ち悪いなと思いますが……」
残響「まぁ宣教師なんてこんなもんですよ。割と一般的な宣教師像じゃないでしょうか」
fee「イスラム過激派だって受け付けないし、特にキリスト教を嫌っているわけではないです。ただ、中世ヨーロッパの宣教師って、侵略とセットじゃないですか。十字軍もしかりですが、それこそコルテスとか……」
残響「『宣教』と『侵略』の歴史を考えると、フロンティア精神溢れる人なんてこんなもんじゃないでしょうか。嫌いですが。自分、【宗教の布教】ってのが大嫌い」
fee「アステカの人はアステカの人で、火星人は火星人でキリスト教なんて知らなくても楽しくやっていたわけだし……。地球からの入植者に対して、地球人向けの教会を作るというのはわかりますが……」
残響「元々はそのために来たんですよね。ペレグリン神父の好奇心というか、お節介心というか……*1アニミズム的な考えを持った人だったんでしょうなぁ」
fee「ところで、この作品に出てくる火星人は、今まで出てきた火星人とは雰囲気が違いますよね。火星人は2種族いたんでしょうか? それとも、今までにも登場していた火星人が、悟りを開いて解脱か何かをすると、*2青い火の玉になるんでしょうか?」
残響「ちょっとその辺はよくわからないですねぇ。まぁ、ぼくも無宗教的なところはかなりありますが、feeさんよりはこのお話を楽しめたかと。神学論争的なものに興味がないわけではないので……それが良いのか悪いのかはわかりませんが。ただ、神学論争と信仰心っていうのもまた別かと思います」
fee「『火星年代記』の収録作品の中では一番つまんなかったです」
残響「そんなにかーいw」
*1 アニミズム……この世にあるいろんなモノに神が宿っている、という原始的宗教性。信仰心。(残響)
*2 青い火の玉、と言われて僕が思い浮かべたのは、ドラゴンクエストシリーズでおなじみの「さまようたましい」だった。残響さんが挙げた「ウィルオーウィスプ」の方が多分、作中イメージにはより近いはず(fee)
★2034年2月「とかくするうちに」 火星にアメリカ風の町が出現
残響「すげえどうでもいいことを言えば、この作品世界、2034年なのに小説家がタイプライターを使ってる……」
fee「リメイクした時にどうして直さなかったんや……ところで、アイオワ州の町、という表現が出てきますが、アイオワ州というのはアメリカのどこにでもありそうな町のイメージなんでしょうか?」
残響「結構田舎だと思います。ニューヨーク……アメリカ北部の都市圏ではない、アメリカの田舎町のイメージでいいんじゃないでしょうか」
★2034年9月「音楽家たち」 火星人の痕跡を焼却
残響「火星人の骨とか死体で遊んでた無邪気(?)な子供が、折檻されるお話ですね。子供だから仕方ないとは思いますが、こういう作品を読むと、やっぱり地球は侵略側なんだなぁと。サム・パークヒルも似たような事をしていましたけど……」
fee「サム・パークヒルは少年の心を忘れないナイスガイですからね」
残響「ナイスガイではないでしょw」
fee「哀れ子供は母親からも父親からも虐待されて……」
残響「母親がやってるのは恐ろしく熱いお湯に少年たちを入れているだけじゃないですか?」
fee「それって虐待みたいなものでしょ?」
残響「そうだけど、ひょっとすると熱湯殺菌かもしれませんよ? ちょっと荒っぽいですけど。なんかそのあたり、昔の開拓時代を描いてる小説世界のような荒っぽさ。それをブラッドベリのノスタルジー作風といってもいいのかもだけど」
fee「あー、死体を触った後だし、そうかもですね」