ブラッドベリ『太陽の黄金の林檎』読書会(2)

  • 2017.05.16 Tuesday
  • 19:50

第4作目/全21作(「荒野」は除く)「空飛ぶ機械」 P125〜136

残響評価 C+ fee評価 B

(S〜E評価です)

 

 

 

fee「さて、次は……同じ社会風刺系作品ということで『空飛ぶ機械』行きますか。残響さんも低評価をつけているみたいですし」

 

残響「行きましょう。あらすじ(※注1.)をお願いします」


fee「はい、西暦400年、元の国の……元?」

 

残響「そこなんですよ!」

 

fee「あれ、元ってモンゴル帝国とかですよね? 元寇とかの。時代違いません?」

 

残響「そうなんです。ぼくもちょっと調べてみたんですけど……」

 

fee「五胡十六国時代とかでしたよね、確か。その中に元って国はあったんでしょうか? 同名の……国被りというか」

 

残響「いや、ないんです。だからこれ、時代考証が間違ってるんじゃないかなと」

 

fee「時代が間違ってるというよりは、何も考えないで書いてるだけなのでは……とりあえず実在する五胡十六国の国名にすれば良かったのにとは思いますが……P127 l1に『万里の長城に守られ』とあるので……」

 

残響「万里の長城以降の北方民族(例えば匈奴)じゃダメですけど、漢民族の国にすれば良かったんじゃないかなぁ。ていうか、そもそも中国である必要すらない気がしますね。多分、適当な国を思いついて書いただけなんだと思います。厨二病作品で、適当なドイツっぽい名前(※注2)をつけた、みたいな」

 

fee「なんか凧みたいな機械で空を飛んだんでしょ? まぁ中国っぽいイメージはあるのかなぁ。でも確かに、中国にこだわる必要もないですね」

 

残響「アメリカだと時代的にまずいかもしれませんが(アメリカには中世はない)、トルコとかでもいいんじゃないかなぁ。そういえば、あらすじが途中でしたね」

 

fee「はい。えーと、古代中国で発明家みたいな人が、空を飛ぶ機械を作ったんですね。で、空を飛んでたら、皇帝に見つかって殺されてしまった、というお話です」

 

残響「先ほども言いましたが、ぼくはどうも出だしでいきなり萎えてしまいました。『西暦400年のこと、元の国の皇帝は』ここでもうハァ?という感じで……」

 

fee「うん、まぁこれはブラッドベリが悪いです。悪いですけど、そこはスルーしてあげるのがブラッドベリの楽しみ方ですよw」

 

残響「うーん。自分はひょっとして純文学的な読み方をしているのかなぁ」

 

fee「真面目なSF読み的な感じもしますけどね。ブラッドベリは真面目にSFを描く作家じゃないので、その辺は適当に読んだ方が楽しめますよ」

 

残響「feeさんが、ブラッドベリはガチなSFじゃない、と言っていたのはこの辺のことですかw」

 

fee「ですね。まぁ、ここで引っかかってしまったなら仕方ないし、残響さんの読み方が悪いというよりは、ブラッドベリの方が悪いですね。せめて架空の国名なら良かったんですが、実際の国名と被っちゃいましたしね。ところでこの皇帝の判断はどう思いますか?」

 

残響「皇帝はちょっと狂っている感じですね」

 

fee「狂っていますか」

 

残響「いきなり『首をはねよ』ですし……」

 

fee「まぁそれは確かに……ただ、この皇帝の判断自体はどうなのかなと思って。機械と発明家を殺した事についてですけども。皇帝が狂っている、と仰ったということは残響さんは、機械を残した方が良いという事かなと思うんですが。しかし、機械を残すことによって、100年後にはグレードアップした空飛ぶ機械が爆弾を抱えて、この元の国を滅ぼしてしまうかもしれません。この発明家を殺したことによって、100年後も元の国は平和かもしれませんよね」

 

残響「ただそれは一方で、この機械を残しておけば100年後には、進化した空飛ぶ機械で遠隔地に薬を届けて、多くの生命を救えるかもしれないじゃないですか」

 

fee「そう。だからこれに関しては、絶対の正解はないと思うんです」

 

残響「進歩主義か現状維持……保守主義かという違いなんでしょうか」

 

fee「皇帝が狂っているかどうかはわかりませんが、ビビッてはいますよね。P135 2行目『大いなる困惑と恐れ』と言っているように」

 

残響「ビビっている、なるほど、そうか。ビビっている」

 

fee「狂っている、とまで言っちゃうと難しいんですよ。何が正常か、という話になっちゃって。あまり踏み込みたくないので適当に濁しますけど、政治的運動や思想信条の運動って、傍から見ると狂的なものを感じさせたりもするんですが、実際に狂っているかどうかはよくわからないですよ。誰が判断するのか、という話で。これがたとえば後天的な精神病とかならわかりますよ。精神病に罹る前の自分と比べて、『あっ、今の自分はおかしくなってる』って判断できますから。でもこういうのは……」

 

残響「狂っている、という単語の取り扱いは難しいですね。ちょっと気をつけた方がいいのかな。あるいは、狂気、狂っているっていう言葉の定義の違いかもですが」

 

fee「いやまぁ、咎めだてしたいわけじゃないんですけどもw」

 

残響「面白いのは、発明家の方も奥さんに狂人扱いされているんですよ。P131 8行目『わたくしの妻でさえ、わたくしを狂人あつかいしております』」

 

fee「まぁ凧みたいなので空を飛んだら、そりゃ狂人ですね」

 

残響「その辺は、発明家の性でしょうなぁ。新しいものを始める人間は、理解されないという……皇帝が狂っていると言ったのは、このP131 8行目の表現があったからなのかなぁ」

 

fee「でも、ここで狂人扱いされているのは皇帝じゃなくて発明家でしょ?」

 

残響「そうなんですけどね。引きずられたというか。いきなり『首をはねよ』だし。昔の中国の皇帝っぽいっちゃ、っぽいですけども。あと面白かったのはこの科学的な発展を、美に絡めて描いていることかなと」

 

fee「この作品では空から見た風景の美に言及していますけど、この調子で科学が発展すれば、いずれは自然を壊し風景の美も失われてしまう、とか、そういう感じで……」

 

残響「あぁ、そうか。いや、ぼくの想定してたのは、もっとこう、ノスタルジックな美的精神かと……」

 

fee「自然を壊すというのだって、ある意味ではノスタルジーじゃないですか。もちろん、自然を破壊して良いとは言わないけれども、自分たちが住みよい世界を作るため科学技術を発展させて行った結果生まれたのが、今の世界なわけで。そんな住み心地の良い世界から、昔は自然があって良かったなぁ、住み心地が良かったなぁというのはある種のノスタルジーではなかろうか、と」

 

残響「なるほど……」

 

fee「ブラッドベリの考えが単純な、『科学の発展=大正義』ではないというのがこの短編からも解りますね」

 

残響「そうなんですよねぇ。もっとも、最後の行の『鳥どもを見よ、鳥どもを見よ』あたりを読む限り、ブラッドベリが科学発展を忌み嫌っているわけでもない、とは思いますが」

 

fee「そうですね。皇帝を擁護はしてないですね。突き放してはいる。ただ、それはそうなんですが、科学発展万歳!明るい未来万歳!みたいな話は僕が記憶する限り、描いてないんですよ。どっちかと言うと、行き過ぎた科学発展には反対のような……。もちろん、科学発展というのは、基本的に良い事だとみなされていますよね。SFを描いたり読んだりする人の間ではなおの事そうでしょうから、カウンター的に『本当にそれでいいのか?』とブレーキをかけているだけかもしれませんが」

 

残響「疑義を呈す、みたいな」

 

fee「ですです。……って、またもや随分話しましたね。これ9ページの作品なんですけど……」

 

残響「まさかこんなに話すとは思いませんでしたw」

 

fee「次はどの作品に行くかなんですが、さっき『狂っている』という話があったじゃないですか。狂っている繋がりで、『鉢の底の果物』に行きませんか?」

 

残響「ぼく、この作品、意味がわからなかったんですよ。なのでミステリも読まれるfeeさんにお聞きしたかった作品なんです」

 

fee「ちゃんとお答えできるかわかりませんが、やってみましょう」

 

(※残響注1. 残響はあらすじをわかりやすく纏めるのがすごく苦手。なので毎回feeさんに頼んでいる。ごめんなさい)

 

(※残響注2:デア・ヴィッセルクンフト・ヴィーターゼーエンブルグみたいな。2秒で考えた。ドイツ語定冠詞もあやふや。それにしても完全に語感オンリー。「アウフ・ヴィーターゼーエン=じゃあね」って具合だし)

 

 

 

 

第5作目/全21作(「荒野」は除く)「鉢の底の果物」 P81〜102
残響評価B- → B+(読書会を経て上方修正) fee評価 B

 

 

fee「というわけで、鉢の上の果物です」

 

残響「底ですね」

 

fee「あ、鉢の底の果物だった……。あらすじは、アクトンさんというちょっとおかしい人が、ハクスリーさんを殺しまして。証拠隠滅を頑張りすぎて現場に留まり続けた結果、最後は捕まっちゃうんですけど……残響さんはどこがわからなかったのかな?」

 

残響「何を描きたかったのかがさっぱりわからなかったです」

 

fee「これは、強迫神経症の話ですよね」

 

残響「ああっ!?」

 

fee「えっ? 違いました?」

 

残響「いや……そうかも……というかそうですね。そうだったんだ……!!!」

 

fee「アクトンさんはおかしいんですよ。ある程度証拠を隠滅したらさっさと逃げた方がいいのに、ずっと居続けて結局捕まっちゃって」

 

残響「ぼくは単純に犯人側視点のミステリとして読んだんですが、単純に証拠を隠そうとして捕まっただけの話だと思っちゃって。なんでこんなに描写がねちっこく細かいんだろうとは思っていたんですが」

 

fee「P99 13行目『かれはリンネルの布を見つけて、椅子を拭き、テーブルを拭き、ドアのノブを拭き、窓枠を拭き、棚を拭き、カーテンを拭き、床を拭き、台所に入ると、息を切らして、上位を脱ぎすて、手袋をなおして、きらきら光るクロミウムの流しを拭いた』と、こんな感じですからね」

 

残響「普通のミステリってこんなに描写するものなんですか? 倒叙モノ……犯人視点のシーンとかの話ですけど……」

 

fee「うーん。多少はするかもしれませんが、ここまではあまりしないんじゃないかなぁ……」

 

残響「ですよねぇ。それに、たまに時間軸もおかしくなるんですよね。現在のシーンの中に、唐突に生前のハクスリーのセリフが出てきたり」

 

fee「この辺はブラッドベリの巧さだと思います。時間軸がおかしいのは、現在と過去がたまにごっちゃになる、アクトンさんの頭の中のヤバさを表していますし、描写が緊密なのもアクトンさんの強迫的な心理を表現しているんですね。描写が適当だったらこの話は全然面白くないというか、成り立たないですよ」

 

残響「描写の細かさは『空飛ぶ機械』とは大違いですね!w」

 

fee「『空飛ぶ機械』は寓話というかおとぎ話みたいな感じですからね。鉢の上の果物があの描写だったら……あれ、鉢の底だっけ」

 

残響「www」

 

fee「なんで上って言っちゃうんだろw まぁ気にしないで下さいw で、残響さんがわからなかったところというのは……」

 

残響「強迫神経症の話だ、というfeeさんの話を聞いて、パズルのピースがカチッとハマるように理解できました。そういう話だったんですねぇ。ぼくはミステリだと思って読んだので……」

 

fee「これはミステリじゃないですよ……少なくとも、謎解きみたいなそういう話じゃないです」

 

残響「そうだったんですね……今までその観点で全然話を読んでなかったのです……うわー、この得心のいきまくる感じ」

 

fee「これは読書会を開いた意義がありましたね。一人だとよくわからなくても、二人で話せば新たな発見があるような、そういうのがあると面白いですね」

 

残響「ほんとですよ。ぼく、以前実際に、強迫神経症になっていたことがあるんです。不安で不安で、大丈夫だと解っているのに何度も確認せずにはいられなかったりして。アクトンさんの行動も、割と普通なこと※注1.として読んでしまったw」

 

fee「まぁ、何度も確認してしまうというのは、分かります。不安というのはそういうものじゃないですか?」

 

残響「そうなんですけど、ぼくはずっと水道の蛇口を閉め続けたりとかしてたんですね。それは水道の蛇口が開いていたら、来月の水道代が怖いとか、そういう事を考えて延々蛇口を閉めたり……」

 

fee「うーん……。僕も何か不安があった時に、延々ネットで成功例や解決法を調べ続けてしまったりとかしたことがあるので、あまり他人の事は言えないんですが……どこまでがただの心配性で、どこからが強迫神経症なんだかよくわからないですね」

 

残響「強迫神経症の特徴として、儀式化するというのがあるんです。たとえば、不安があった時に解決法を調べるのは、一応『不安を解消する』ことに間接的に繋がるじゃないですか。でも、たとえば『朝起きたら3回南の方に向かって土下座をすれば、うまくいく』みたいな儀式を自分で勝手に作って、それを守らないと落ち着かない、みたいな……。土下座をすることと、うまくいくことには何らの因果関係もないはずなのに、してしまうんですよ※注2.」

 

fee「うーん……それは確かによくわからない話だけど……よほど失敗したくない事に対して、神頼みをして、それも全国の神社を回って歩いたりしたら、これは強迫神経症なのか、とか。近所の神社だけなら違うのか、とか……境目がやっぱりよくわからないですね。ただ、なんだろう。今、僕もあまり元気じゃないせいか、この話にはなるべく深入りしたくないですw 読書会を開いておいてこんな発言しちゃいけないかもしれませんが……」

 

残響「いえ、まぁやめましょうかw 次はどうします?」

 

fee「軽めに『ごみ屋』あたりどうでしょう?」

 

残響「じゃあ『ごみ屋』行きますか。と言っても、ぼく結構この話、語りたい事が多いんですけど」

 

fee「あ、そうなんですかw」
 

(※残響注1.ナチュラルな誤読とはこういうことを言う)

 

(※残響注2.妄想的思考とはこういうことを言う。これが精神病だ!!!!)

 

 

 

 

第6作目/全21作(「荒野」は除く)「ごみ屋」 P343〜352
残響評価A fee評価 B

 

 

fee「辛いながらも楽しく仕事をしていた、ごみ収集業者の主人公。ある日、仕事内容に死体処理も加えられ、心底仕事が嫌になってしまった。というお話です」

 

残響「この話はまず、描写が凄くいいですね。P346 3行目『オレンジの皮や、メロンの種や、コーヒーのだしがらが、一時にどさっと落ちて、からっぽのトラックがだんだん埋まってゆく。ステーキの骨や、魚のあたまや、玉ネギの切れっぱしや、古くなったセロリは、どこの家でもよく捨てる』。ぼくはリアル仕事で、食品加工業に携わっていまして、実は。仕事柄こういうゴミトラックなどで作業をしたことは日常的にあったんですが……コーヒーのだしがら……古くなったセロリ……すんごい臭いんですよ。よくわかるなぁ……リアリティを感じます」

 

fee「なるほど……僕はゴミトラックでの作業経験はないので想像することしかできませんが、そうなんですねぇ……」

 

残響「ほんっと臭いですよ。でもですね、P346 14行目『ひと月に一度か二度、かれは自分がこの仕事を心から愛していることに気がついて、自分でもびっくりする。そしてこんなすばらしい仕事はほかにありゃしないとも思う』、わかりますよ。辛い作業でも、ふっといい仕事をしてるなと感じる時はあるんですよね」

 

fee「僕はゴミトラック経験はないので、本当に大変な仕事だろうなぁと思っています。生ごみにウジ虫とかが這っていたりするのかなぁ、うぇぇ……俺には無理かも……みたいな」

 

残響「夏場、ハエがたかっていることはありますね……ふつうふつう」

 

fee「ハエぐらいなら大丈夫かな。もちろん、相当嫌ですけどw それに、作品内の描写だとウジっぽいのも湧いていますからねぇ。まぁこれはゴミトラックに限らず、僕が就いた事のない仕事全般について大体はそうですね。大変そうだなぁ、よくできるなぁって。
就活なんかだと、覚悟を問われたりするじゃないですか。ネット上でも仕事の楽しみを語る人よりも、愚痴を書く人の方が多いし。だからものすごく、しんどい事をやらされるんだろうなぁ、って思ってしまう。でも、意外となんとかなったり、その仕事に携わった事のない人には分からない、小さな楽しみを見つけられたりするんじゃないかなぁとも思っています。同業者あるあるじゃないですけど、『この仕事は本当につらいよなぁ。でも、こういう事があるからやめられない』みたいな」

 

残響「このごみ屋さんも楽しくやってたんですよ。なのに……これ、ほんとかわいそうな話ですよ。死体処理の仕事を新たに加えられて……」

 

fee「その仕事に縁がない僕から見たら、ウジ虫とかは本当に大変だし、死体処理も……程度が違うとはいえ、やっぱり大変だし……と思っちゃいます。でも違うんですよね」

 

残響「全然違いますね。ゴミの処理と、死体の処理は全然違います。ゴミはどこまでいってもゴミですが、これが人間だと、初期の大江健三郎(※注1.)じゃないっすか……。ぼくもリアルに人間の死体の処理をやらされたら当然かなわないですよ。……でも、食品を扱う仕事に関するぼくの妙な達成感とかもそうなんですけど、自分自身では、仕事……生業(なりわい)に納得してるんですよ。そこに、【人の死体】という明らかにカテゴリ違いのものがぶち込まれる。勝手な仕事を上層部から。その悲劇です」

 

fee「でも外野にはそれがわからない」

 

残響「うん。外野の、想像力の欠如」

 

fee「だから死体処理をごみ屋さんの新たな業務内容に平気で加えちゃう。主人公の奥さんも、政治家と同じ立場ですよね。ごみも、死体も、何が違うの?みたいな。僕もひょっとしたらそういう反応をしちゃうかもしれないです」

 

残響「でも、主人公から見たら全然違う仕事なんですよ。全く違う」

 

fee「ですよね。これ、勝手に転職させられちゃったようなものですよね」

 

残響「なのに、奥さんも子供もいるし辞められない。つらいですよ……」

 

fee「P350 2行目『トムとおれがやってたみたいに、遊び半分のような気軽なやり方でやれば、こんな面白い仕事はないんだ。ゴミにもいろいろあってな。金持ちの家じゃステーキの骨、貧乏人の家じゃレタスやオレンジの皮だ。馬鹿みたいな楽しみだけれども、どうせ仕事をするんなら面白くやるに越したことはないだろう』。僕が良いなぁと思ったのはこの文章ですが、携わった経験のある残響さんから見てもリアリティがあるなら、やはりきちんと取材したんでしょうね」

 

残響「ですね。あるいはブラッドベリも何かの形で経験したのかもしれないですね。アルバイトをしたとか」

 

fee「この、他人から見たら似たように見えるけど、自分的には全然違うというの、僕も解りますよ。たとえば、この対談記事は僕が文字起こしをして、色付けやリンク張りは残響さんにお任せしているんですが、僕、文字起こしするの結構楽しいんです」

 

残響「マジですか!? ぼくはいつも、feeさんには凄い負担をかけてしまっているなぁと思っていました。自分でやってみたら、大変だったので」

 

fee「そりゃ楽とは言いませんが、エロゲー批評空間に長文感想を投稿するのと同じような楽しさがありますね。あるいは、長文ブログ記事を書くような。でも、色付けやリンク張りなんかは、すんごい面倒に感じちゃいますね。しんどくて心が死にます」

 

残響「全然逆ですねw ぼくは色付けやリンク張りなんかは普通にできます。何の問題もない」

 

fee「うまく役割分担ができてますねw しかし、主人公はこの後どうするのかなぁ……」

 

残響「そればかりはわからないですね……」

 

fee「作中に、1951年12月10日付けのロサンゼルス、とやけに具体的な日時が出てきますが、さすがに実際にあったことじゃないですよねw?」

 

残響「さすがにないでしょうw メキシコとかならあるかもですけど……」

 

fee「朝鮮戦争の後、くらいですか。赤狩りとか」

 

残響「ですね」

 

fee「SFを読みたいということで、残響さんはこの本を読まれたとのことですが……この話はSF要素が全然ないですね。さっきの『鉢の底の果物』も全然SFじゃないし、短編集全体を見渡してみてもSF色はあまり強くないような……」

 

残響「そうですね。『ウは宇宙船のウ』とか、そういうタイトルを知っていたので、もっと宇宙とかをたくさん書く作家なのかと思っていました」

 

fee「他の短編集では結構描いてたりもするんですが……この短編集だと宇宙は全然出てこないですね。『荒野』と、最後の『太陽の黄金の林檎』ぐらいでしょうか……違う短編集を薦めれば良かったかなぁ」

 

残響「ははは。楽しんで読めているので大丈夫ですよ」

 

fee「それは良かったです。さて、次はどうしましょうか?」

 

残響「『四月の魔女』あたりどうですか? 百合的に色々熱く語っちゃいますよ?」

 

fee「え、百合要素なんてあったっけ……?」

 

(※残響注1.大江健三郎のデビュー作「死者の奢り」のこと。1957年。死体洗いのアルバイトの話)

 

 

 

第7作目/全21作(「荒野」は除く)「四月の魔女」 P39〜60
残響評価A fee評価 A

 

 

fee「主人公は魔女のセシーです。セシーは人の身体に乗り移る能力があります。ある日、セシーはアン・リアリという少女の肉体に乗り移って、トム少年に恋をします。アンはトムには興味がないんですが、トムはアンが好きで、アンに乗り移ったセシーもトムが好き、という関係性です。アンの身体に乗り移ったセシーとトムは、いい雰囲気になります。最後にセシーは、セシー自身の家をトムに教えて、アンの身体から離脱します。ちょっと長くなりましたが、そんなあらすじになっています」

 

残響「最初の1行目から本当に、情景描写で文章が展開していくのがいいですね。筆がノッてる。『空高く、谷を見おろし、星空の下、河の上、池の上、道路の上を、セシーは飛んだ。春先の風のように姿は見えず、夜明けの野原からたちのぼるクローバーの息吹きのようにかぐわしく、セシーは飛んだ』」

 

fee「いいですねぇ。じっくり味わいたくなるような文章ですね」

 

残響「しかも、セシーとアンの百合ですよ!」

 

fee「いや、そういう話じゃないですけどねw」

 

残響「アンの身体に乗り移ったセシー。アンは最初抵抗するも、段々……」

 

fee「セシーが好きなのはトムですよw」

 

残響「トムなんてどうでもええねん! セシーとアン、二人の世界が展開されているんですから、トムなんてどうでもいいんですよ!」

 

fee「じゃあそれは、残響さんが二次創作ということで書いてくださいw 書くならこのブログからリンク張りますよw」

 

残響「じゃあタイトルは『五月の魔女』で。うわー安直」

 

fee「それで思ったんですけど、『四月の魔女』ってタイトルは良いですね。これが『八月の魔女』だと違う気がする」

 

残響「確かに違いますね」

 

fee「こういう話はやっぱり春か秋が似合うかな。夏や冬じゃ違いますよね。春一択かな」

 

残響「春でしょう」

 

fee「で、ですね。これ、かんっぺきに少女漫画の世界ですよね」

 

残響「わかりますw」

 

fee「ノリノリで書いている感じがします。瑞々しさがとても良い」

 

残響「青春ですね」

 

fee「ブラッドベリは少年主人公、少年の瑞々しい感性を描いた作品は多いんですが、少女は珍しい気もします。でも、『四月の魔女』を読んでいると、女の子主人公も全然いけますね。少女漫画家の萩尾望都さんが、ブラッドベリの短編をいくつか漫画化しているんですが、残念ながら『四月の魔女』は入っていません。この短編集の中だと『霧笛』は漫画化されていて、というのは余談ですが……」

 

残響「『四月の魔女』は大島弓子か、いっそ陸奥A子がいいかな。萩尾望都とか大島弓子とかは『花の24年組』と言われ、少女漫画古典黄金期の…………」

 

fee「少女漫画にも興味があるので、このままお話を伺いたい気もしますが、とりあえず『四月の魔女』の話をしましょうw」

 

残響「わかりましたw」

 

fee「さて、セシーはトムが好きで、トムはアンが好き。でも、アンはトムの事はどうでもいいんですよね」

 

残響「そうですね。眼中にない感じw」

 

fee「アンの身体に乗り移って、セシーはトムにアタックをかけるんですが、アンはもちろん抵抗します。身体を操られて、好きでもない相手と恋愛させられそうになっているんですから、当然っちゃ当然ですね」

 

残響「そもそも、トムにあまり魅力を感じないんですけど。セシーはトムのどこがいいんだろう」

 

fee「普通の男の子ですね。あまり描きこみはされていません。でも重要キャラですよ」

 

残響「重要ですか?」

 

fee「百合を求める残響さんには申し訳ないですが、トムが、というか、トム的な立場のキャラクターは重要ですよ」

 

残響「トム的な立場、か。まぁ、それは確かに……」

 

fee「セシーがトムを好きな気持ちがどこまで真剣かは謎ですけどね。そもそも会ったばかりでしょ?」

 

残響「ですね。恋に恋してる感じがします」

 

fee「そう。だってトムと会う前からP42 2行目「『恋をしたい』と、セシーは言った」と書いてありますし。別にトムじゃなくても良かったんですよ。まぁ、セシー的に一発NGじゃなかったのは確かでしょうけど」

 

残響「アンの方はもっと描き込まれているのに。P44 6行目『すばらしい肉体だった、この少女の肉体は。ほっそりした象牙のような骨に〜』長くなるのであれですが、この後9行もアンの描写があります。セシー視点でアンの肉体をほめたたえているんです。こんなことをされちゃ、百合妄想するなっていう方が無理ですよ!」

 

fee「あぁ、それでですか……」

 

残響「なのに、全然そっちの方に行かなくて残念でしたけど」

 

fee「ご愁傷さまですw しかし、セシーに乗り移られたアンはいい迷惑ですね。好きでもないトムと恋愛ごっこをさせられるしw」

 

残響「ほんとですよw」

 

fee「アンの迷惑も考えないし、勢いで恋にのぼせちゃうし、若いなぁって。自己中というか、なんというか。ただ、その若さが羨ましくもあり、瑞々しい少年少女をブラッドベリは実に巧く描くなぁとも思います

 

残響「P59 13行目『まださっきの紙を持っている、トム? 何年後になっても、いつか、逢いに来てくれる? そのとき、わたしを思い出すかしら。わたしの顔をじっと見つめたら、最後にどこで逢ったか思い出してくれる? わたしが愛しているように、あなたもわたしを愛していたのよ。心の底から、いつまでも、わたしは愛し続けるわ』
ぼく、このセシーのセリフがすごく好きです……」

 

fee「冷静に考えれば明らかにおかしいんですけどね。いやいや会ったばかりで何言ってんだよwみたいな。ただ、そうは言ってもこのセリフは良いですよね。胸に響くというかなんというか」

 

残響「そうですよ。このセリフだけじゃなく、作品全体に漂うポエジーというか、詩情のようなものを感じます。こういうのがfeeさんが好きなブラッドベリ的なものなのかなって」

 

fee「セシーの自己中心的な感じもブラッドベリは狙っているとは思いますが、斜に構えたような読み方だけで終わらせるのは寂しいです。セシーの甘酸っぱい初恋を応援しながら、素直な気持ちで読む方がいいのかな。ところで、セシーの恋は実るんでしょうか? 最後、セシーはトムに自分の住所を渡しますが、トムはセシーのところに行くと思いますか?」

 

残響「これ、わかんないんですよねぇ」

 

fee「最初に読んだ時はセシーの完全な片思いかと思ったんです。トムはアンの事が好きなんだから、アンの身体に乗り移ったセシーが何を言ったって意味がないんじゃないかって。P54 13行目トムの台詞に『それで、ぼくはきみにまたあらためて恋をしちゃったんだ』とありますが、それも、成長したアンに惚れ直した、くらいの意味かと思ってたんです。でも、P54 10行目『そのあと、井戸のそばに立っていたとき、何かが変わったような気がした』というのは、かなり具体的な瞬間……つまり、アンの緩やかな成長ではなく、アンがいきなり変わったと、そうトムが認識しているように読めます」

 

残響「P55 17行目のセシーの台詞『アンがあなたを愛さなくても、わたしは愛してるわ』というのは相当踏み込んでいますよね。そしてですよ。その後の文章。P56 4行目『たったいま、なんだか、どうも――男は目をこすった』これは、かなり怪しい文章ですよ。含みがあるというか。この時、トムの中で何が起こったんでしょう。ひょっとして、アンの顔に重なるように、薄っすらとセシーの姿が見えたのかもしれません」

 

fee「最後、P60 5行目『そのてのひらに小さな紙片があった。ゆっくり、ゆっくりと、何分の一インチかずつ、指が動き、やがて紙片を握りしめた』。これもね。最初は、ぎゅって握りしめた……まぁこの時、トムは寝ているわけですけど、ゴミか何かのように握りしめた。それで紙はしわくちゃになって、セシーの住所は読めなくなってしまった。というふうに読んだんですよ」

 

残響「確かにそう読めるんです。でも、決意を込めて、『よし、行くぞ』と。セシーを離さない、そんな決意を込めて、セシーの住所を握りしめたのかもしれません。ブラッドベリは、敢えてどちらにも読めるように、慎重に慎重に書いているように思えます」

 

fee「そうですね。セシーの恋がどうなったかは読者の想像に委ねると、そういうことですよね」

 

残響「きっとセシーの恋は実りますよ。セシーの家を訪ねるのは、トムじゃなくてアンかもしれませんが……」

 

fee「百合の話はもういいからw」


 

 

第3回に続く……(「黒白対抗戦」など)

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